微笑み17
森から出てくると村人達が入口で待っていた。
「村長さん!それに村の人達もどうしたんですか!?」
「森が燃えていると言われて心配で待っていました」
ああ!けっこう燃えたからねー!煙も上がっていたのが見えたみたいね。
「すみません。心配をお掛けしました。ワイバーンの討伐完了しました」
グレイは背負っていたワイバーンの首を村人達に見せた。
「それはワイバーンの首ですか!?」
「やったぞ!?」
「これで狩りが出来る!」
「森へ入って薬草や木の実なども採れるわ!」
村人達から歓声が上がった。
「皆様、お疲れ様でした。皆様が持ってきた小麦で村独自のパンを焼きました。ささやかながら食べていって下さい」
「ありがとうございます」
シオンは村長のご好意に微笑むのでした。
ワイワイと村の中へ戻って行くと、ちょうど王国騎士団が到着したようで騒がしかった。急いで村の入口へいくと騎士団の方々が挨拶に来た。
「あなたが村長でしょうか?」
「はい!そうですが…………」
騎士団の代表の方は信じられない事に、村長に深く頭を下げた。
「この度は救援が遅れて申し訳ありませんでした!すぐにワイバーンを討伐し、村の平穏を取り戻す所存です!」
へぇ~、なかなか出来た人物ではないですか。シオンはフルフェイスで顔の見えない王国騎士に好感を覚えた。
「騎士様!頭を上げて下さい!救援に来て頂いただけでも大変感謝しております!ただ………申し上げ難いのですが、ちょうどSランク冒険者の方々がワイバーンを倒して下さったのです」
「おお!なんと!?」
騎士団の代表は驚いている様だ。ここは私も挨拶しなければならないかな?元はといえば王都冒険者ギルドのせいでお城に情報が行って無かったのが問題だからね。
「王国の騎士様、村の救援お疲れ様です。少しの差でワイバーンは私達が倒しました。しかし、村には森へ入れなかったため酷く困窮しています。誠に勝手ながら、騎士様には村の援助と復興をお願い出来ないでしょうか?私達はワイバーンの素材を全て村へ寄付致しますので」
「ワイバーンの素材を全て寄付ですと!?」
今回のワイバーンはキレイに討伐出来て素材も丸々手に入りました。しかもワイバーンの亜種だったので討伐ランクAからSとなり値段は跳ね上がる事でしょう。
その事を騎士団の方々に言うと驚きをあらわにした。
「隊長。もしかしてあの方は微笑みの令嬢様では?」
別の騎士が代表の騎士に耳打ちする。
「……ああ、すぐにわかったよ」
『せっかく狩ったワイバーンを全て寄付とは………本当にお優しい方だ。だから私は………』
「村の救援物資を持って来ました。食糧、衣類、薬品などです。また後日、村の要望を聞いて今まで通りの生活に戻るまで支援していきます」
「おお、なんという……感謝にたえません」
村長さんも深く頭を下げて、騎士団の方々も交えて簡単な宴会が催しされた。村の独自のパンは焼きたてだったが、少し硬いパンではあったがその分、もちもちした食感で美味しかった。騎士団の方々はいちを森の調査と、荒れた畑や村の防壁の増強など村の復興に尽力した。村で一泊した後、早朝に帰宅するシオン達であった。
「あなた方がワイバーンを倒して頂いたおかげで、騎士団にも被害がありませんでした。我々の一部は報告も兼ねて城へ戻ります。道中ご一緒してもよろしいでしょうか?」
騎士団の隊長さんの言葉に同意し、一緒に王都へ戻りました。私は馬車でしたが、道中に騎士団の方々に微笑み令嬢とばれて色々とお話されました。隊長さんは流石で、無言で馬車の横を馬で移動していた。
こうして王都に着いた私達は騎士団と別れる事になりました。
騎士団はお城へ、私達は冒険者ギルドに向かいます。
別れ際に、村の救援と道中の護衛のお礼を言いました。
「道中、ありがとうございました」
「いいえ、本来の仕事をしただけですので」
「隊長さんが村長さんに頭を下げた所はカッコいいと思いました。騎士団は民の為にあるとはいえ、プライドもあります。おいそれと頭を平民に下げれる貴方を私は尊敬致します」
「なっ………それは……ゴホン、それでは報告がありますので失礼致します!」
隊長さんはビシッと騎士の礼をして去っていった。
「あんなお方も居るのであれば、王国の未来は明るいわね」
「あらあら♪シオンお嬢様はああいう御方が好みなのですか~?」
アルカが意地悪そうに聞いてきた。
「う~ん、フルフェイスでお顔が分からなかったけど、騎士としての誇りと、村の人に頭を下げれる誠実さなど好感が持てました。ああいうお方ならちょっと良いかも知れないですね」
シオンは少し顔を赤くして答えた。
「グレイさんも、うかうかしているとシオンお嬢様が誰かに取られちゃいますよ?」
ナイカはグレイにちゃかすように言ったが……
「私とお嬢様は歳が離れ過ぎていますよ。それに、お嬢様は命を掛けて護る主人であり、恋愛感情はありません。そもそも、私は結婚して子供がいるんですよ?」
「「えっ!?グレイさん結婚してたの!!!?」」
アルカとイルカがびっくりして同時に声を上げた。
「なんで一緒に働いているお前達が知らないんだよ……」
グレイは、はぁ~と深いため息を付くのだった。
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一方、お城では……
「お兄様!ワイバーンの討伐はうまくいきましたの?」
騎士のフルフェイスの兜を脱ぐと、そこにはレオン王子の姿があった。王族として経験を積むために騎士団員として活動しているのだ。
「あら?お兄様……?お顔が赤いようですがどうなさったの?」
「ワイバーンはシオン嬢が倒した後だったよ」
!?
「シオン様が!?」
「ああ、冒険者として緊急クエストを受けたらしい。そこでお前も知っている王都の冒険者ギルドの不正を正した後、村を救う為に向かったらしい」
「なんてこと!?わたくしも一緒に行けば良かったですわ!」
セーラ王女は悔しそうに言った。
「でも、なんでお顔が赤いのですか?」
「………シオン嬢に素敵だと尊敬すると言われたからな」
『なんですって!?』
セーラ王女の目が鋭くなった。
「お・に・い・さ・ま・!」
ちょっと裏に行こうか?場合によっては眠ってもらいますよ?永遠に・・ね?
しかし、セーラ王女の暗い心の声はレオン王子の説明で四散した。
つまりフルフェイスの兜で、シオンはレオン王子と分からず、レオンも正体を明かす事が出来ず、ほとんど無言だったらしい。それがシオンの高評価になってはいたのだが。
「せっかくのシオン様と二人っきりで兜をずっとして側にいるだけで満足するなんて…………ホロリッ」
「い、いや!でも!?」
「黙りなさい!この【キング・オブ・ヘタレ】の称号を持つものよ!」
キング・オブ・ヘタレ!?
「仕方がないですわ。シオン様を義姉にするには協力もやぶさかではありません。このままでは、どこぞの野良犬に浚われてしまいますので力を貸しましょう!」
「………ヘタレは認めるが、どうしてお前はそんなに上から目線なんだよ」
余りの兄のヘタレぶりに、妹のセーラ王女の方がシオンとレオンをくっ付けようとやる気を出すのであった。
愚者の声
「ようやく、ちょこっと恋愛要素を入れる事ができました」
シオン
「相手の正体も知られていないのですが?」
愚者の声
「ウグッ!恋愛とはこうして燃え上がるのです!」
シオン
「無理やり、まとめましたわ!?」
愚者の声
「恋愛って難しい…………どうしよう!」
シオン
「まったくの見切り発車ですわね……」
愚者の声
「反論出来ないデスデス……」
今後は恋愛要素を増やしていきますよ~
(´・ω・`)がんばる!