表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兵法とは平和の法なり  作者: MIROKU
寛永編
6/40

第六回

「しかしだ。何のために生きる? 何のために死す? 自由人には進むべき道がない。朝に道を聞かば夕べに死すも可なりというではないか」

 あるいは七郎は生きる答えを求めているのかもしれぬ。他者の願いを聞き入れてでの行動ではなく、自身の魂が死を賭して欲する答えを。

 縛られる者は縛られる故に道を得ているのではないか。七郎の父又右衛門は兵法家として将軍家剣術指南役という大任を背負う道を進んでいる。それこそ七郎は羨望の眼差しで見つめている。

「まあ、いいじゃねえですか。難しい話は禅師の説法にお任せしやしょう」

 源は酒と肴の準備を始めた。水で薄めた酒に残り物の天ぷらや竹輪など。誰も客のいない店内に明かりを灯して飲み食いする。それがたまらなく美味かった。

「ところで店員は」

 七郎は気難しげに問う。源は客寄せのために十代後半の娘を数人店員に雇っていた。女日照りの男が多い江戸では、看板娘目当てにやってくる客は少なくない。

「みんな亭主持ちですぜ」

「……うむ」

 七郎は厳粛な顔で酒を飲んだ。下心は霧散した。



 夜半、七郎は目を覚ました。暗い店内には机に突っ伏した源のイビキが響いている。酒を飲みつつ、いつの間にか寝入ってしまったらしい。

「うむ……」

 七郎は寝ぼけながら店の外に出た。尿意を覚えたからだ。

 だが店の外に出て夜空を見上げれば、真円を描く満月の輝きに七郎は息を呑んだ。夜は人を魅了する。月明かりの下には、昼にはない世界が広がっているからだ。

「なんだこれは……」

 七郎の左の隻眼が見開かれた。彼は夜空に驚くべきものを見たのだ。

 満月が浮かぶ夜空には、巨大な蜘蛛の巣が広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ