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兵法とは平和の法なり  作者: MIROKU
寛永編
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第五回

「女遊びか……」

「まあまあ、若。呆れる気持ちもわかりますが、お侍さんもイライラしてるみたいですぜ」

「わからなくもないがね」

 七郎は苦笑した。参勤交代で多くの大名が江戸に住むようになった。江戸には大小様々な大名が集まっている。

 いわば江戸は全国の縮小図である。江戸で名が売れる事は全国に名声を轟かせる事でもある。

 だからこそ大名達は上屋敷の建築には気を遣った。門構えには大名の格式が現れている。数十万石の大大名が貧相な門構えになど、決してできぬのだ。

「そう簡単に名が売れるものかね、正雪や丸橋でもあるまいし」

 七郎は由井正雪の張孔堂に通っている。三十を過ぎて門下生だ。七郎が見る限りでは、正雪は文武に優れた人物だ。人徳もあり、槍の達人として知られる丸橋忠弥は、臣下のごとく接している。

 そして両人ともに只者ではなかった。側で見ている七郎には、それがわかる。

「生涯は学びの園だな、うむ」

「……あのですな若。世の中は若みたいな自由人ばかりじゃないんですぜ」

「何が自由人なものか」

 七郎は源の発言にムスッとした。彼は自分をそのように思った事はない。

 幼い頃の兵法修行で右目を失った。視力に不安のある七郎は将軍家剣術指南役の嫡男でありながら、剣に秀でなかった。

 それを恥じている七郎は弟に家督を譲り、自身は十年以上も幕府隠密として全国を行脚していた。

 将軍家剣術指南役という大任から降ろされた七郎は、自身を恥ずべき者として認識しているが、日々を気楽に生きられる。

「だからこそ自由人じゃありやせんか。あっしはそれがうらやましいですぜ」

「……まあ、そうかもしれんな」

 七郎は幕府では御書院番の役に就いている。これは将軍家光の身辺警護を担う、いわば親衛隊だ。

 それでいて七郎は御庭番衆の源と共に大名の監視をしている。

 誰もが様々なしがらみに縛られる中で、七郎は縛られる事なく生きている。

 生と死は隣り合わせであるが、だからこそか七郎は魂の輝きを失わずに済んでいる……

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