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したたかに謳って♪  作者: 凪沙 一人
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ep.61 主~ヌシ~

 妖海の天幕を破られ還る巣を失った大海竜は陸地へと進んでいた。

「……多分、頭じゃないよね弱点ってさ。」

 ヘロンが13本の頭を一遍に斬り落とすと一遍に生えてくる。

「やっぱり、そうだよねえ。」

 想定通りの結果にヘロンもやや落胆した。

「さてと、ここからだよね。」

 ヘロンが地面を擦るような低さから一気に右手を振り上げると大海竜の頭が胸を守るように覆った。何本もの頭が吹っ飛んでは生えてくる。

「て事は、そっちが弱点なのかな?」

 大海竜の胸を目掛けて再びヘロンが一撃を放つと今度は無数の海竜たちが盾となって立ち塞がった。

「これで胸がフェイクって事はないよね!」

 今度はヘロンが乱れ撃った。乱れ撃ったと言っても、誰もヘロンが何を放っているのか見えていなかった。ただヘロンと大海竜の間に居る海竜や自らを守ろうとする大海竜の首が斬り裂かれ散ってゆく。そしてヘロンは徐々に加速してゆき、もはや誰もヘロンの動きすら見えなくなった時、海竜、大海竜の再生速度を上回り本命の大海竜胸部を斬り裂いた。だが、その瞬間、傷口は妖気を吹き出すどころか周囲の散った海竜の妖気を吸収し始めた。

「あれれ? ちょっと予想外かも……でも、想定内!ホーリー・プリフィケーション!」

 ヘロンが左右の掌を大海竜に向けて重ね合わせると放たれた閃光が妖気を浄化していく。不用意に一ヵ所に集約した妖海の妖気を包むようにして、やがて光が消えると妖気は残っていなかった。その頃には陸に上がってきていた蟹や蛸、烏賊、亀などの姿となっていた妖気もフレアやエクレアによって片付いていた。

「くっ……今度こそ役に立てると思ったのに……」

 ブラスカは肩を落としていた。

「仕方ないよね。私らみたいな風属性の剣技じゃ悪戯に妖気を拡散させちゃうんだから。うぅん、今度は竜巻みたいな妖気とか纏められるような技、考えよっと!」

 愚痴るブラスカと前向きなシルフィを見比べて少し頭の痛いエクレアだった。誰もが、これで終わったと思っていた。六刃将も元六禍戦もが引き揚げていった。そして海岸線には二人だけが残っていた。

「あれ、ドリュフォロスは戻らないの?」

 ヘロンが自嘲気味に問い掛けた。

「ヘロンの旦那が帰らない……って事は、そういう事なんじゃないんですかい?」

 ドリュフォロスの返事にヘロンは軽く頷いた。

「さすが、マリアンヌが送り込んできただけの事はあるね。でも、オレオンから学んだ事はいいのかな?」

「なぁに、旦那と一緒なら逃げる必要は無いっしょ。寧ろ、そんな事したら後でマリアンヌの方が怖いっすからね。」

 いかに魔槍遣いのドリュフォロスとはいえどもマリアンヌは怖いらしい。

「どうやら警戒したのか海上に出て来ないみたいだね。」

 ヘロンは未だに海中から妖気が漂っているのを感じていた。

「どうする? もう一回、向こうから出て来て貰うかい?」

 するとヘロンはドリュフォロスからの問に首を振った。

「向こうも妖気の塊だから脳ミソがあるようには思えないけど、それでも同じ手は食わない気がするんだよね。」

 ヘロンは妖気といえども海竜など、何らかの形状を模って陸地へ侵攻してくるというのは、意思というか思念めいたものを感じていた。だからと言って何者かが操っているという気配も感じられない。どんなに強大な相手でも正体が見えていれば対処方法も思いつくが現状ではヘロンもお手上げに思われた。

「ドリュフォロス、ちょっと行ってくるから後は頼んだよ。」

 ドリュフォロスには一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。だが、その直後ヘロンは極寒の海に飛び込むとアッと言う間に姿が見えなくなってしまった。後を追おうにも心臓麻痺を起こすのが目に見えている。そしてこの事実は王国のヘロン嫁たちにも凍国のヘロンの嫁たちにも話す事は躊躇われた。どう足掻いても責められるのが目に見えている。ドリュフォロスは暖を取りながらヘロンを待つ事にした。

「まったく、ヘロンの旦那ってのは……。能力も無いくせにランクが高いってのは掃いて捨てるほど見てきたが旦那の場合、逆だもんな。」

「ヘロン様は地位にも名誉にも金銭にも欲の無いお方です。理解されぬ事も多い。」

 独り言のつもりで呟いたドリュフォロスは、返事をされて驚いて振り向いた。

「マ、マリアモ……じゃない、マリアンヌ!?」

「さすがに妖海まで乗り込むとなると他の嫁たちには無理な相談ですからね。もし、妖気の獣が上がって来た時には討ち漏らすことの無いように。」

 そう言い残すとマリアンヌもまた、ヘロンの後を追って深海へと消えていった。

「まったく二人して人智を超えてやがる。まあ、マリアンヌは魔王の娘だし、ヘロンはその魔王を追い払ってマリアンヌを一度は封印したってんだから俺の理解出来るもんじゃねえよなあ……」

 凍国の海は、あまりにも極寒の為に海洋生物は少ない。ヘロンは水温と水圧だけを気にしながら妖海へと辿り着いた。一度、ヘロンが天幕を破ったのでかなり縮小している筈だが、それでもレクシスの法廷がスッポリ収まりそうな巨大な空間を擁していた。

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