1 転生
HEART SWORD
そのゲームはあまりにもひどい内容だった。
「フルプライスでこの完成度。私のお金と時間返せ!」
発売前は毎日公開されたトレーラーを見て心を踊らせていた。なのにこのゲームは私の期待を裏切ったのだ。
「あぁーこのために有給取ったってのに」
よし、売りに行こう。こんなクソゲーは早く手放すに限る。記憶から抹消しよう。
軽く身支度を済ませ家を出てゲームショップに向かう。
徹夜でやってたから眠い。すっごく眠い。早く行こう。
睡眠不足、裏切られた期待、いろいろな要因が重なって私は青と赤を見間違え赤になった信号を渡っていた。
最後に私が聞いたのはトラックのクラクションの音だった。
何もない部屋。とても大きな、大きいだけの部屋で私は目覚めた。
ここはどこだろう?見たことない様なあるようなはっきりしない。私どうしたんだっけ?確かHEART SWORDをクリアしてあまりの酷さに売りに行こうとしてそれでトラックにひかれた気がする。思い出したら気分悪くなってきた。このことは忘れよう。さらば、HEART SWORD二度と私の記憶に入ってくるなよ。
「目を覚まされましたか。魔王様」
すぐ側から誰かの声がした。微妙に聞き覚えのある声が。私は声のする方を向き固まった。動けずにいた私の前には、HEART SWORDに登場する魔王の右腕、シャルロワと同じ声と顔をした女性が立っていた。