吸血鬼事件調査一日目(その1)
店を出た後、マンションやら一軒家やらが立ち並ぶ閑静な住宅街を道なりに歩いて進んだ先に、とある五階建てのマンションの前へとたどり着いて神鬼さんは足を止めた。横に広く大体、一つの階に八室くらいありそうな極一般的で何の変哲もない建物だ。ここが事件現場というところだろうか。名前は『アンゼンスカイホーム』、如何にも事件なんて起こらなそうだけどな。
「ここで事件が起きたんですか?」
「ああ、最初の被害者は三階、306号室に住んでいたサラリーマンの男性らしいぞ。さあ、入ろうか」
「そのまま入れるんですか?」
「ああ。オートロックみたいなシステムもなければ、監視カメラも設置されていない。セキュリティがガバガバのマンションだからな。部屋の鍵は平から預かっている。遺体を除いて、部屋の中はほとんどが事件当時のままらしいからな。まずは、部屋に行ってみるか」
どうやらマンションの構造は管理人室の前にエレベーターと非常階段が設置されており、一階の部屋も一度は管理人室前を通過してから外に出ないといけないらしく、建物を出入りするには必ず管理人室前を通る仕組みになっているようだ。
神鬼さんと一緒に三階へと上がり、右奥から六つ目の扉の前にやってきた。彼女は上着の左ポケットからチャリンと鍵を取り出すと、鍵穴に挿して上下二つのロックを解錠した。
彼女は扉を開けるとずんずんと中に入っていくので、俺も慌てて彼女の後についていくように入っていく。
「あの、神鬼さん」
「あ?」
「靴、脱がないんですか? 家主が居たらどうするんです?」
彼女は土足のまま玄関先から奥へと入ろうとしていた。既に部屋の中に両足が上がり込んでいるが、まだ今なら靴裏に着いた汚れで部屋が汚部屋にならずに済むレベルのはずだ。
「いねえよ、家主は」
「え?」
「お前、まさか誰かが住んでいるはずの家の鍵を警察から私が受け取ると思うのか? 殺害されたんだよ、とある犯人に」
「とある、犯人?」
彼女は満を持して、というかまるで狙っていたみたいに口角を上げて言った。
「平田啓介、三十四歳。都内の大手企業に勤めていたサラリーマンで一人暮らしの男性。遺体が発見されたのは一週間前の五月三十一日の水曜日、リビングルーム、つまりこの奥の部屋のドアの近くで仰向けになって倒れていたらしい。こいつは亡くなったのを発見された当時、死後一週間は経過していて遺体の腐敗がかなり進んでいたわけだが、こいつは不思議なことに体の水分が全部抜かれたみたいに干乾びていたんだ。しかも、この左首筋辺りに二つの細い注射器のような物で刺された痕が残されていた。つまりだな」
神鬼さんはわざわざ、大事な部分の手前で言葉を切った。
「こいつは『吸血鬼』に殺られたっていうのが警察の見解なんだよ」
なるほど、確かに勿体ぶりたくなる気持ちも分かるかもしれない。この世に存在しないはずの怪異が犯人だと知れば、それなりに驚くだろうと思うからだ。しかしならが、俺はあまり驚きを感じず、むしろどこか他人事のような気さえしている。
「吸血鬼……。そんなものが、実在するんですか?」
「そう思うだろ? だが、さっきも言ったが信じられないと決めつけてたら真実にはたどり着けない。その存在が実在するか否か、この事件の犯人は誰なのかを突き止め、犯人を捕まえるまでが私の仕事だ。分かったか?」
「まあ、内容は分かりましたよ」
他人事とは言ったけれど、俺の体質を考えると彼女、あるいは彼に血を抜かれて殺された上、誰にも気づいてもらえない自信すらある。自分の人生の終わりが干乾びたパリパリの、まるで抜け絡みたいな感じで発見されてゴミ箱に捨てられるのは御免だ。
「内容は、ね。何か、気になることでもあるのか?」
「いいえ。ただ、いきなり非現実的な話題を持ち出されて少しばかり混乱しているんですよ」
大して混乱もしていないくせに、一般人ぶりたい俺は頭に浮かんだワードを速攻で組み立てて少しばかり流暢に言ってのける。
「ただでさえ、学生食堂にバイクごと突っ込んできた女性がまさかの美人な上に警察庁長官にも顔が利く特殊現象捜査官で、更には『I7』出身っていう時点で現実感は既に薄まっているのに」
彼女は「何だ、そんなことか」とでも言いたげに笑う。混乱しているのは嘘でも、割とそんなことで済ませられる内容ではないのも事実なんだけどな。
「まあまあ、事実は小説より奇なりなんて言うくらいだ。人生、一度くらいはそういう面白いことがあったって良いと思わないか? せっかくだから、楽しんで行こうぜ」
物騒なことの渦中にあるのに、神鬼さんはかなりノリノリだ。
「一応これ、殺人事件なんですよね? 調査をする俺たちって今、一番危険な立ち位置にいる気がするんですが」
「今更、怯えてるのか? まあ、でも誰だって自分の命が狙われてると思えば怖いもんだよな。悪い、ちょっと配慮が足りなかったかもしれん。そういう感覚、とうに壊れてるからな私は。今まで、ちょっとばかりスリル満点な人生を送り過ぎた」
「そうですか。俺は嫌ですよ、殺人事件なんかに関わりを持つのは。今回限りにしてほしいと願うばかりです」
「危ない事には関わりたくない、普通だよな。巻き込んだ私が言うのも何だが、私だって巻き込まれるのは御免だ。首を突っ込みたくはなるけどな」
やっぱり奇特な人だ。巻き込まれるのは嫌だけど、積極的に関わりたいなんて。
「こんな非日常に、もう足を突っ込みたくはないんですよ。本当はね」
「非日常? それはちょっと違うぜ、ヒトちゃん」
「殺人事件が非日常ではないと言うんですか?」
「当たり前だ、だって今この瞬間にも世界のどこかで人が人の手によって殺されてるんだ。まさかとは思うが、殺人事件が他人事だと思ってるわけじゃないよな? だって、人なんだから人を殺すことだってあると思うぜ。少なくとも生物だからな。当然、ヒトちゃんだって当事者になり得る可能性は十分ある。殺す側にも、殺される側にもな。とはいえ、ご法度であることには変わらねえけどな」
「いや、少なくとも俺にとってはかなり他人事なんですけど……。というか、そんなのが身近にある世の中になんて安心して生きていけないじゃないですか。それは嫌ですよ」
「嫌と言っても起っちまうもんは仕方ねえだろ? 私だって巷じゃ『超越者』なんて大層な名で通っているし、かつては神様に改造されかけたこともあったがな。私は少なくとも人間で、全員の命を一人残らず救うことは不可能だ。老いれば死ぬし、病にかかれば死ぬし、刺されれば死ぬし、高い所から落ちれば死ぬし、溺れても死ぬし、空気がなくなっても死ぬ。人は脆弱な生き物なんだよ、体もそうだが心もな」
「心も、ですか」
「そう、心もだ。人は感情を持ち、心を持つ。そして、その心が人を脆弱たらしめ、人を殺人という甘言へと誘い込んでしまうんだ。生物は基本的に本能で動くが、明確に心を持つのが分かるのは人間だけ。心が弱いのも人間だけ。自殺を選べるのも人間だけ。しかしながら、殺人を犯さないように法律を作り、強い理性でもって他者が死ぬこと、殺されることを止められるのも人間だけ。それだけの手段を持っていて、実行しているにも関わらず、人は愚かにも他者の命を奪い、自分の命を粗末にする。全く、嫌になるよな」
「はあ……。結局、何が言いたいんですか?」
「そうだな。結局、命は大事にしろってことだ。そんでもって、お前も人間である以上は殺人事件も他人事じゃない。それを他人事と捉えている人間は自分の命をどうでもいいと思っている節があるからな。肝に銘じておけ。命は大事に、だ」
「……分かりました。命大事、ですね」
「そうだ、ヒトちゃん。素直な奴は嫌いじゃない」
俺はしかと心に刻んでおく。もしかしたら数日後には治っている傷かもしれないけれど、今だけは心に留めておこう。
「そして、今回の事件を起こした犯人には必ず罪を償わせる。そのための闘いだ、気を抜くなよ?」
「抜きませんよ。さっきも言いましたが、いくら殺人事件が他人事じゃないと分かっても、怖いことには変わりないんですから。神鬼さん自身、仰られていたじゃないですか。俺も当事者になる可能性があるって。殺されるのは御免です」
「殺されるのは、ね。まるで殺すのはいいみたいに聞こえたがそれは置いておくとして、だ。安心してろ。私と一緒にいる限りは、私がちゃんと守ってやるよ。巻き込んだ責任もあるし、元々は私が抱えていた案件だからな。相棒に死なれちゃ依頼を達成しても達成感が無くなっちまうってもんだ。だが、ずっと一緒に居てやることはできねえ。残念ながらな。だから、夜とかに一人で帰るときとかは精々道に気を付けるんだな。なるべく人通りを多いところに行くとか、ホテルに泊まるとかな」
「言われなくても、そうさせてもらいますよ」
「よし。じゃあ、早速家の中を調べてみるぞ。何か、気になる物とかあったら教えてくれ」
俺は頷いて、律義にちゃんと靴を脱いでから家の中に上がった。
いくら亡くなった人の部屋で既に誰も住んでないとしても、ここは日本であって欧州じゃないなんだ。郷に入っては郷に従えって言うし、俺はちゃんと国の慣習に従っておくよ。
部屋の造りは非常に単純、手前の左側に脱衣所、トイレ、浴室がある。トイレとバスタブは別々、というかこれが今の日本では普通なのかもしれない。
その反対側には寝室があって、奥はリビングルームとダイニングキッチンがセットになった大きな部屋がある。
取り敢えずだけど、俺は浴室の方から調べることにした。
神鬼さんはリビングの方を調べてくれているみたいだし、そこはここの住人の……平田さん、だっけ。が亡くなった現場にもなっている。そちらを調べてみたい気持ちもあるけれど。
案外、彼がどういう生活をしていたのかとかいうのは洗濯物とか寝室での過ごし方から分かったりするものなのだ。たぶん。
入ってすぐの左の壁にあったスイッチに手を添えて押すと電気が点いた。一応、まだ電気は来ているようだ。
俺の説明でイメージがつくかは分からないけど、取り敢えず間取りを説明してみよう。
部屋に入って正面に洗面台と自分の腰くらいまで映る縦長の鏡がある。そこに備え付けの小さな小物入れみたいなスペースがあって、そこに歯ブラシやら髭剃りやら、洗顔クリームとかが置いてある。洗面台の下にはタオルをかけるフックがあって、彼はシンプルな黒色で無地のタオルを使用していたようだ。
その左側は扉を挟んでトイレになっている。
家主は綺麗好きだったのか、あるいは警察が入ったおかげで一度清掃されたのか。いや、神鬼さんはそのままって言っていたから、きっとここに住んでいた平田何某さんが綺麗好きだったのだろう。
床や便器はピカピカに磨かれていて、まるで新居にいるみたいな錯覚を覚えてしまった。トイレットペーパーはきちんと三角に折り畳んであるし、かなり几帳面な性格だったのかもしれない。
洗面台の隣にはドラム式の洗濯機が一台、中にはまだ洗濯物が残っているようだ。物色するのは少しばかり気が引けたが、何か重要なものが入っているかもしれないと思って軽くまさぐってみる。
男物の下着とパジャマ、パジャマに下着、パジャマ、ジャージ……。洗濯物の量は多いが、その実、どうやらずっと家に引き籠っているような男の生活様式な気がする。
この人、サラリーマンをしていたっていうのに仕事に着ていく服らしきものが一切洗濯機に入っていない。
コインランドリーでも使って部屋着とわざわざ洗濯物を分けていたのだろうか?
最後に浴槽の方を調べようとお風呂を覗いたわけだが、こっちは人が一人入れる浴槽と床にはシャンプー、リンス、ボディソープ、洗面器が整えられて置かれているだけで特に収穫とかはなかった。
強いて言えば、彼の使っていたシャンプー、リンス、ボディーソープともに有名な製薬会社の『リオラ製薬』が出している最新のモデルで統一されていたくらいだろうか。製品の出所は容器の背面を見て分かったが、別にシャンプーとかを作っている会社に詳しいわけではなかったので普通にスマホで調べて分かったことだけど。
この会社の製品が好きなのか、あるいは単純に商品の制作会社を揃えたかっただけなのかは分からない。
試しに、洗面台に置いてあった髭剃り用のジェルとかハンドソープも調べてみたけれど、どれも『リオラ製薬』のものだった。どうやら、本当にこの製品が好きだったみたいだ。同じ製薬会社の製品を使いたがるなんて、変わった愛好家もいたものだ。
洗面所を出て、次は反対側の部屋になっている寝室を調べさせてもらうことにする。
電気を点けて中を観察すると、向こうの壁際にシングルベッドが青い掛布団とセットで設置されており、左側の壁には自分の腹くらいの位置の高さまでの本棚が三つほど設置されていた。こちら側の壁の右側にはクローゼットらしき棚がある。
さて、どれから調べようかな。
まずは一番近くにあったクローゼットから調べてみることにした。観音開きになっているうそれをガチャっと開いてみると、そこにはピンピンに伸びたスーツやワイシャツ、ブラウン色のコート、ウィンドブレーカーがハンガーにかけられて綺麗に収納されていた。
私服らしきものはあまりないな。洗濯物の中にジャージが入っていたし、普段から運動が好きだったのだろうか?
ワイシャツ、スーツはピンピン、流石は几帳面な平井何某さん。あれ、平野だっけ? 何でもいいけど。
……あれ? このワイシャツもスーツも、襟のところに付箋みたいなのが付いてるな。
ハンガーごとワイシャツを取ってよく調べてみると、そこにはクリーニングと英単語で書かれたものだった。クリーニングに出したばかりなのか?
そこに返却日も書かれていたので調べてみると、五月二日となっていて、明らかにずっと着ていないものであることが分かる。
他のワイシャツやスーツを調べてみたが、仕事に行く時に使う服は軒並みクリーニングにかけられていて、札はそのまま手を付けられていないらしかった。
彼はサラリーマンだと神鬼さんは言っていたが、これはどういうことだろうか。
次に調べようと思ったのは、何となく目についたベッド。しかし、捲っても何も出てこなかったし、調べた意味は特に皆無だった。
最後に本棚を調べてみる。棚はそれぞれが三段式になっており、中には推理小説やホラー小説、純文学など、有名どころをしっかりと抑えている読書家らしかった。
他にも営業に関する本や交渉術、人との会話の仕方を記した本など、仕事に対してもかなりの努力家だったように見受けられる。
本棚の本はジャンル順、作者の名前順になっており、ちゃんと整えられている……。
あれ、ここだけどうしてか本の順序がバラバラだな。真ん中の本棚の左から二冊目から五冊目の間だけ順序が違う。
ここはホラーの分野が揃えられているわけだが、作者名が阿野から始まって二冊目が西野、三冊目が瀬尾、四冊目が名取、五冊目が金城、六冊目が原田だ。以降はちゃんと順番になっているのに、ここだけ変なのは不自然だろう。
「ここに何かあるのか?」
順序の違う四冊を取り出して、本棚の奥を覗いてみると奥に何か封筒のようなものが挟まっているのが見えた。人の物を勝手に見る趣味は元々ないのだが、神鬼さんにも気になる物があったら教えるように言われているし、元に戻せば全くもって問題はないはずだ。
本棚に入れられた本の順序が崩れないようにして取り出し、奥に挟んであった封筒を取り出してみる。封筒は茶色のものであり、そこには『親展』と赤い判が押されていた。
かなり重要な書類の差出人は不動産会社みたいだな。既に封は開けられているようなので、そこから書類を出してみると、家賃滞納を勧告する内容が書かれている。
値段は八万一千円か、そこそこ良いマンションに住んでいるな。
要は、早く家賃払えよってことだろうが、そんなに生活が困窮するほど給料が低いとも思えない。勉強家であり、私服もろくに持たず、しかも独身。明らかに仕事一筋みたいな生き方をしている人柄だと俺は印象付けられた。
そんな人が、こんなマンションの一室を借りるのに家賃滞納なんてあり得るのだろうか?
既に何となく予想は立っているのだが、もう少しこれといった証拠がほしいものだ。
最後に、彼女が調べているだろうリビングへと向かった。部屋の中に入ると、中央にひざ丈くらいのガラステーブルとソファが一つ、テーブルの上にはPCが置かれていた。
その更に向こう側には高級そうなテレビ、コンポ、ブルーレイ再生レコーダーか。
ソファの後ろ側には白色の天井に届く高さの棚が設置されており、その前に神鬼さんが立って何かを考えているようだった。
「神鬼さん」
「おっ、ヒトちゃんか。そっちの守備はどうだ?」
「色々と面白い物が見つかりましたよ。サラリーマンにも関わらずワイシャツやスーツを一度も着ず、家賃滞納の書類が本棚の奥に押し込まれ……。彼は本当にサラリーマンだったんですか? それとも、超ブラック過ぎて安月給だったとか?」
「いや、平田は大手企業の幹部役員に近い立場を担っていたそうだ。月給は手取りでも四十万ほどはあったと聞いている。あり得ない話だ。だが、これを見ればお前もピンと来るはずだ」
神鬼さんが差し出してきたのは、とある白い袋だ。袋の表には『リオラ製薬』という表記に加えて、精神安定剤という商品名で大きくシールが貼られていた。
「精神安定剤……。まさか、既に失業しているんですか?」
「いや、正確には休職だな。これと一緒に医師の診断書も見つかっている。重度の鬱病にかかっていて、ここ二カ月は出社していないとのことだ。ヒトちゃんに色々と調べてもらっている間に、私も被害者の会社に連絡を入れてみたんだよ」
「なるほど……。彼は会社に行けないくらい酷い鬱病になっていて、暫くはずっと引き籠り生活をしていたってことですかね」
「その解釈で合っていると思う。台所の方、奥にゴミ箱らしきものがあったんだが、中身はこの近くのコンビニに売っている弁当やカップ麺ばかりだった」
「ですが、それだけなら家賃滞納することはないと思うんですけど」
「いや、そうでもないようだ。さっき、平の奴から新しい情報が入った。どうやら、平田はネットギャンブルに嵌っていたらしく、ここ半年ほどでかなりの額を使い込んでいたことが発覚した。休職の理由は恐らくだが、ギャンブルに負け続けたことによる鬱病の発症であり、金がなくなっているのもギャンブルのせい。結果、闇金とかに手を付ける一歩手前まで来ちまっていたみたいだな」
「そういうことでしたか……。ですが、そんな人間が誰に殺されると言うのでしょうか? 相手はただの引き籠りじゃないんですか?」
「それなんだがな。ここの家賃管理をしている不動産会社に所属している人間が、このマンションの管理人を兼任しているらしいんだ。私はそいつが怪しいと睨んでいるが、別に殺す程のものでもないと思うしどうもな……。それに、そいつが犯人じゃないとしても、このマンションを出入りする人間を少なからず目撃しているはずだし、管理人センターに行ってみるか」
「分かりました。では、そうしましょうか」