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ゲヘナ・ハーモナイズ  作者: 織坂一
2. 運命の反逆者は善に討ち、悪との邂逅で“未来”を得る
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執行人と化した自分に判らないこと



おかげで、私の交友関係と言うのはこの2年でだいぶ整理されている。

地位と金のある者だけの手を取り、そうでない者は切り捨てる。

しかし、例え地位や金があったとしても、私が不要と判断した際も同然、最初に切り捨てられた彼らと同様に捨てる。


この合理的主義と、選民思考は正にここ2年で磨かれたと言ってもいい。

元々、私自身あの村にいたときから、あの村にいる人間が大嫌いであった。

どいつもこいつも低俗で、自身のプライドや立場を守るがために、大勢で1人を潰す――そんな卑怯なやり方など余裕のある人間からすれば邪悪そのもの。


まぁ例え余裕がある人間でも、あの村の人間(奴ら)と同じことを言わないという保証はない。

特に爵位を持ちながらも、常に余裕に無い者ほど精神的に余裕がないから性質が悪い。彼らもまた同じくあの村の人間(奴ら)と同類としか思えなかった。

ゆえに、私は自身より爵位が下の人間の面倒を見るのは苦手だった。


向こうも向こうでこんな若造に助けを乞うのも屈辱だと言って私から距離を置くが、そう言った愚か者たちは悉くその地位から転げ落ちた。

()()()()()()()()1()()()()()()


本音を言っていいのなら、自身より上の階級にいる人間さえも選り好みをしてもいいだろうと思っているし、現に今の私が求めているのは利益だけだ。

まだ私が負債の返済に追われた際、幾人かの伯爵家にはお世話になったが、その借りも十分すぎるほど返している。


だからこそ、利益だけを求め冷酷に罪人の首を斬り落とす私は、他の爵位を持つ人間からすれば恐怖の対象でしかない。

そんな畏怖も優越感となって、それこそ私は自身が生まれながらに持っていた自己嫌悪が理解出来なくなっていった。


私が何者にも成れない――なんて運命(のろい)は既に過去と化した。


なにせ今私はこの神国・『ファフニル』における処刑執行人。

必ず悪は断罪し、罪を犯した者の姿を白日の下に晒している時点で、私は凡夫から脱している。

地位も、名誉も、富もある。

あれだけ幼き頃に疎んでいたこの容姿に対するコンプレックスも、疎む原因(比較対象)となった肉親が焼けて肉塊と化した時点で一瞬にして消えた。

透き通った白い肌も、真っすぐ伸びた銀髪も、蒼玉のようなこの瞳も、今となれば私1人唯一のものでしかない。


しかし、全てを手にした私に唯一手の届かない存在があった。

それは嘗て私の大義の元となった少女——マナである。

確かに、私は肉親たちや使用人への恨みはあったが、大元の理由はマナを救うには富と地位が必要だったからだけのこと。


だから借金を粗方返済し、今一度先代が行っていた家業の見直しと立て直しが終わった直後に私はマナへと手紙を送った。


送った手紙の中で私は、万が一のことを考えてぜひとも『ファフニル』へと来て欲しいと綴った。

当面の生活の保証はもちろん、他に私に出来ることがあればそれも叶えてみせると言ったが、彼女から来た返答はこうだった。


ソフィアの気持ちは嬉しいんだけれど、私がそこまでお世話になる義理はないわ――と。

この文面を見た瞬間、私は気が狂いそうになった。ゆえに私は意固地になって、懲りずに何度もマナを救いたいという純粋な気持ちを書き綴ってはまた送る。


その度に私の厚意は跳ねのけられ、最終的に彼女はこう言ったのだ。

―—私は、この村でリアムが帰って来るのを待ってるから。


この一文は、私の男してのプライドを一瞬にして砕いた。

あんな男が戦場から帰還することはまずない。それはマナ本人も理解しているが、それでも彼女は(リアム)の帰りを待つと頑固としてその意思を揺らぎやしない。

私は奥歯を噛みしめては不吉な音を鳴らして、日々屈辱に耐えていた。


確かに昔の私はマナに守られていてばかりだった。しかし、今では彼女1人くらい守ることなど造作もない。


例え、私の持つ全てを注いだとしてもそれで構わない。私が彼女から受けた恩恵は、私の持つ財産全てを売ったとしても釣り合うことなどない程に。


結局、私はこんな失意の底に落とされて以降、ひたすら正義を掲げ、大義に対しては誠実に生きてきた。


数多の罪人の首を斬り落とし、屍の山を築いていく。

大義に酔うこと(せいぎ)で屈辱を拭い、罪人どもの許しを乞う声で内に秘めた加虐心を満たしていく。


正直、この頃の私は正義も大儀もどうでもいいと思っていた。

なにせどんな正義や綺麗ごとを並べたとして、人を殺すと言うのは人にとっては重罪なのだ。如何に罪を犯す理由を綺麗に取り繕っても、その罪はきっと地獄に堕ちたときに裁かれるのが世の道理。


それについては、私自身驕ることも吐き違えることもなく正確に悪と言うものの本質を理解していた。


一方で、悪を暴き罪人を処罰する私を神格化する者も一定数はいて、彼らは私を正義の使者と呼び、善人だと囃し立てた。


ただ、この『()()』と言う肩書きだけは私自身受け入れることが出来なかったのである。

なぜか? ——その理由については未だ分からない。

結局殺しは悪行だから? いいや、そうじゃない。


そう言えば、と私は侯爵から頼まれた処断の手がかりを掴むのに試行錯誤してた中、こんな記憶を思い返す。

確か昔、まだあの村にいた頃も善意を気持ち悪がっていたような……と。



まぁ、ソフィアの選民思考は前回で語られていたからまぁ分かりますが……にしても、マナが酷い……。

いや、酷いというのは違うか……。彼女としてはソフィアよりリアム君の方が大事なわけですし。


とにかくここ数年男としてのプライドを折られているソフィアですが、当然ここでリアム君への恨みは募っています。そしてあの屋敷での邂逅に繋がります。


正直作者としては、もう諦めろとしかいえないのですがね……。君の恋は一生叶わないよ。それが全てだ。


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