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六話

空腹を満たして、改めてヒント探しを再開しようとした時、ソファに座っていたソラがあのETCカードを手にしながら口を開いた。


「…キワさん、さっきはこのカードをちゃんと見てなかったけど、よく見てみたら裏面の署名欄に"②"って書いてあったよ。」


「?!」


灯台もと暗しとはこういうことだろうか。

何はともあれ、これで①~③まで揃ったということは、何かの順番に関係するということだろう。


①がQRコード。

②がETCカード。

③がSDカード。


「…やっぱり、テーブルの上にあったこの"3つ"のアイテムから①~③までの数字が出てきているなら、パソコンの画面にある"3つ"の□にも関係があるんだと思うけど…。」


「僕もそう思う。()()()()()()()()()()()だから、まずは各々の頭文字を取ってみると、"QES。"だけど…。」


「"QES"と"。"かぁ…。何のことだろう?パソコン画面に映っている"□"には入力出来ないんだよね?」


ソラがパソコンが置いてある机の前に座り、マウスで画面の"□"にカーソルを合わせて、キーボードで"QES"を打ってみるが、画面に変化は見られない。


「駄目だね。」


ポチポチとキーボードを叩いてソラが何度か試している所を後ろから覗きこんだ私は、その()()に気付いて思わずソラの背中を叩いてしまった。


「痛っ!!痛いよ、キワさん!どうしたの?」


「ソラ!私分かった!このパソコンの"□□□。"の意味、分かったわよ!」


「えっ!ほんと?」


私は頷いて、キーボードを指差しながら話を続けた。


「私達の推理は合ってると思うわ。"□□□。"は"QES。"のことで、それを打ち込もうとキーボードのキーをよく見てみると…。」


「!!」


…そう、キーボードにはアルファベット以外にも文字が記載されており、"QES。"の各々の"キー"に印刷されている()()()()を読んでみると、


 Q E S 。

 ∥ ∥ ∥ ∥

 た い と る


つまり、"タイトル"と読めるのだ。


「なるほど!…でも、この答えを入力することは出来ないみたいだから、次は"タイトル"に関連したものを探せってことだよね?…この部屋で探すとしたら…」


「…やっぱり、"本"よね。」


「…本といえば、さっきいろいろ探してた時に思ったんだけど、この沢山ある本の中で日本語の本はあそこのディスプレイの棚に飾ってある3冊と、その横の棚に無造作に置かれていた辞典だけなんだ。他は英語とかアラビア語みたいな外国語の本ばっかりだから、なんか違和感感じて…。」


本に注目することにした私達は、あとで元に戻せるように本の並びなどをスマートフォンのカメラで写真を撮っておき、その気になる3冊+辞典をソファのあるテーブルへと持ってきた。


上から1段目には飾られていたのは、

『午後3時の秘め事』

2段目には

『聞こえてきたのは辰の刻の正刻の鐘でした』

3段目は

『ミッドナイトの訪問者』


それと、そのディスプレイの棚の横に置かれていた

『漢字辞典』。


「恋愛小説に、SF小説に、ホラー小説と辞典…。何か共通点とかあるのかしら…?」


二人でそれらをペラペラと捲ってみるが、中身には特に印が着いていたりすることもなく、ごくごく普通のハードカバーの小説と、漢字辞典である。


「…中身に変わったところはないってことは、やっぱりさっきの()()のとおり“タイトル”に注目した方が良いのよね…?」


「そうだね。…あと、漢字辞典も切り分けて考えた方が良い気がする…。」


たしかに漢字辞典だけジャンルも違えば、置いてあった場所も異なるのだからソラの言うことも一理ある。


切り分ける使うとしたら、次のヒントのような役割だろうか…?


漢字辞典を膝の上に置き、ソファの背もたれにもたれ掛かりながら天を仰いでうーんと唸る私を見て、ソラがフフッと軽く笑った。


「…なに?何か可笑しい?」


私は背もたれから起き上がり、座り直して正面に座るソラの顔を不思議がってまじまじと眺めていると、ソラは少しだけ頬を赤く染め、目線を外した。


「いや、ごめん。キワさんが可笑しいわけじゃなくて。…何だか楽しくて。今までこんな風に誰かと一緒に何かに取り組んだことが無くて…。一人の方が楽だと思っていたけど、人と関わるのも悪くないね…。今更かもしれないけど…。」


「…やっと前を向き出したんだから今更ってことはないよ。それにこんな機会滅多に無いし、賞金獲得目指しながら一緒に楽しもうか!」


初めて出会ったのはたった数時間前だが、目の前にいる少年の印象がまるで別人のように変わってきたのは一目瞭然で、この子の未来を消してはいけないと思えば思うほど、私の中では不安も同時に大きくなっていることは悟られまいと笑顔で隠し、もう一度ソファの背もたれに自分の体重を預け、天を仰ぐ私の目は笑ってはいなかった。

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