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2001 意外な家系

奇愛(きあ)の出身って、趙氏(ちょうし)財団だろ?」


「それだけじゃない。趙氏財団の後ろに、とある暗黒家族がある」


「それは初耳だな」


初耳だけど、イズルにとって、趙氏財団の後ろに暗黒家族があるのは驚くことではない。


現に、神農(しんのう)グループも暗黒組織の万代家と繋がっているから。


「私も完全に忘れていたわ。今日軌跡から『戦の神様、蚩尤(しゆう)の血を受け継げた女子』と聞くまで」


「!」


イズルは一瞬で目を張った。


でも、すぐに困りそうに自分の額を抑えた。


「嘘だろ……」


「信じないの?」


「そういう問題じゃない」


イズルは長い息を吐いた。


「奇愛が小さい頃からああだった。自分は神様の末裔だとか、よくオレに威張っていた。小さいオレは全然信じられなくて、『お前が神様の末裔だったら、オレは女装でミュージカルの生配信をやってやる』とまで言い出したんだ……結局、奇愛はそれを証明できなかったけど……」


「……」


リカはイズルを見る目に、憐憫という感情が含まれた。


「私も証明しない……信じなくていいから」


「それはさておいて……趙氏財団の後ろの暗黒家族のことを話そう」


イズルはやばそうな話題を逸らした。


「その暗黒家族は新世界とはどういう関係?」


「新世界の上層部の何人が、その家族からの出身のようだ。それ以外、両者の関係は良くも悪くもない。少なくても、表では新世界はその家族を特別視していない。奇愛を優遇する理由も、加害する理由も見つからない。


 でも仮に、ウィングアイランドとガイアリングは同じ、異能力をどうにかする機能を持っている場合。奇愛は良い実験体になる」


「その……神の血を引いた末裔だから?」


「そう。奇愛は異能力がないように見えるけど、潜在能力が一番高い人間として、被験者に選ばれるのもおかしくないでしょ」


「しかし、異能力をどうにかするなら、新世界にはもっと便利な方法があるんじゃない。島を作って、全世界で人を募集するような手間をかけるかな……」


イズルはやったばかりのことを思うと、リカの分析に納得できなかった。


「それで、あなたはそのもっと便利な方法で、異能力をどうにかしたの?」


「そうだな、それは……!!」


リカがさりげなく聞いたら、思考に集中するイズルは思わず口を滑らせた。


「やっぱり」


リカの視線は厳しくなる。


いたずらが親に掴まれた子供のように、イズルは慌てて弁解する。


「確かに、試してみたけど、でも、ほら、こうして、何もないんだ。平気だ。それに……オレは、新世界と約束があるんだ。奴らはオレの復讐に手伝い、オレに危害を加えない……」


久しぶりにリカの氷点下目線に注目されて、イズルは降参した。怪しい承諾書のところを除いて、異能力を高める経過を白状した。




「……そんな装置、聞いたことはない。でも確かに、そのような便利な方法があったら、異能力を高めるために島を作らないでしょう。あるいは、その装置に何か制限があって、やはり規模の大きな島が必要だとか……それとも、あの島は、別の目的で作られたのか」


リカは考えれば考えるほど表情が詰まっていく。


「あなたと奇愛は共通性があるけど、状況が違いすぎ、もっと情報を集めないと……」


奇愛との共通性、イズルはなんとなくさげられたような気分になった。


そもそも、自分の家はなんで趙氏財団とあんな親密な関係になったんだ……!


ふいと、イズルはヒントを思いついた。


「そういえば……うちのグループの名前、『神農』って、あの戦神『蚩尤』と同じ、中国の神話の中のキャラだよな」


「キャラって言わないでほしい……」


知っているのはいいけど、その言い方だと、どうせどこかのゲームで知ったのだろうとリカは思った。


「三皇五帝、中国の伝説によると、それらは不思議な力を持つ上古時代の帝王たち。神農氏は三皇の一人だと伝わっている。五帝の一人という説もある。戦神蚩尤は五帝に倒された暴君のような存在、由来が繋がっている。ということは……あなたと奇愛の家系も繋がっている可能性が高い」


「信じたくないけど……その線はありな」


奇愛が自分に対する態度は、先祖時代からの敵対関係からのもかもしれない……と思うと、イズルはなんとなく納得した。


「さっき言ってた趙氏財団の後ろの暗黒家族は、戦神蚩尤の末裔と自称している。でも、ほかの三皇五帝の家族はすでに解体したと聞いた」


「だよな、うちは神様の末裔だなんて、オレもそんなのを聞いたことはない……いいえ、教えられていないだけかも」


イズルの目の中の光が沈んだ。


小さい頃から反逆的な彼に、大人たちはそんなあやふやな伝説を教えるわけがない。


彼が家の歴史を背負う覚悟ができる前に、家族はいなくなった。


「イズ……」


リカはイズルの情緒に気づいて、話をかけようとしたら、イズルのほうから先に提案した。


「情報が少なすぎるなら、人を呼び寄せて聞けばいいだろ?」


「呼び寄せる?」


「もうすぐオレの誕生日だ。博司さんや英子さんたちはお祝いの宴会を用意してる。宴会を言い訳に、趙氏財団の後ろの奴らを誘うと思う」


「なるほど……11月22日なの?」


「知っている?」


誕生日が覚えられて、イズルの気持ちは躍起した。


「この間、入族資料で見たばかりよ」


「……それか」


がっかりするほどのことじゃないけど、期待したパターンと違うのがやはり気が沈む。


「とにかく、オレは誕生日で暗黒組織の人を招待すると思う。でも、オレはそちらの人間のことについて詳しくない。呼んだほうがいいと思う人がいれば、教えてほしい。あと、リカも一緒に来てくれれば、話が早くなると思う」


「後で人選のリストを作る。でも、私は行かない」


「!どうして?」


イズルは驚いた。


「その日、私の両親が帰国する日でもある。祖父は別の宴会を用意したの」


「……」


なぜその日……


それは偶然なのか、それとも誰の仕組みなのか……


どのみち、イズルはよい気持ちにならない。


それでも、リカの家の行事を止められない。


ちょっと待って、この間、リカから聞いた覚えがある。


――あのマサルはリカの家の宴に招待されたそうだ。


やばいじゃないか。


自分はマサルの代替品になるはずなのに、現に、自分が排除され、あいつがリカの家族と食事をする……


リカはイズルの考慮が知らなくて、話を続ける。


青野翼(あおのつばさ)がついているから、私がいなくても大丈夫でしょう。あと、前の宴会みたいに、エンジェのような敵意を持つものが入り込むかもしれない、用心深く気を付けてね」


ダメもとで、イズルはわざと心細い表情を作った。


「一人じゃ怖くて何もできないと言ったら、こっちに来てくれる?」


「……その様子だと、大丈夫そうね」


リカは塩表情で言葉を返した。




こっちはプライドを捨てて甘えるのに、その反応か……


イズルは心の中で苦笑した。


でも、リカのそういうところがいい。


偽りや心の込めていない言動に動揺しない。


本当に彼女を必要とする時に、きっとくる。


こうして、ウィングアイランドのことをいろいろ考えてくれているのも、万代家と新世界の争いのためだけではなく、自分を心配しているからだろう。




けど、それだけじゃ足りない。


こんな状況に落ちたのは自分じゃなく、別の仲間の場合も、リカはその人のためにいろいろをするだろう。


リカにとって、自分は一体どれだけ特別なのか、知りたい。



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