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1906 待ち伏せ

イズルのサインをもらったら、青野翼はイズルをさらに深い地下の階層に案内した。


エレベーターに階層数が表示されていないので、どこまで深く降りたのかイズルは知らない。


エレベーターから降りてから、青野翼について、いくつの扉を潜って、ある薄暗いライトが灯っているホールに到着した。


ホールは約100人を収容できる。おそらく楕円型。


ホールの壁を沿って、たくさんの不揃いな形の巨石は何かのルールに従って並んでいる。


薄暗い光はその石たちから放ったものだ。


ただの石型ライトなのか、それとも発光鉱石なのか、この明るさで判断しづらい。


床に何か妙な模様が刻まれていてる。


よく見れば、その模様は部屋の真ん中にある睡眠ポッドのような機械を中心に描かれているようだ。




青野翼の指示で、イズルはその睡眠ポッドで30分くらい寝た。


寝ている間に何をされたのか、イズルは全く分からなかった。ただ、微かな金属が砕けたような小さな音と、火花が飛ばした音を聞いたような気がした。


目が覚めたら、イズルは妙な熱さが体の奥から湧いてくるのを感じた。


試して能力を使ってみたら、全身の血が一気い躍起するような高揚感があった。今までせいぜい二人を包めるバリアが、部屋全体まだ拡大した。


それから、彼の体は部屋中の石のように光り始めて、心臓も血液も焼けるような痛みを感じた。




「いきなり制限が解除されて、肉体はまだついていけないようです。でも、CEOの容量はもともと高いから、このくらいで問題ないと思います。もう少し我慢していただければ、そのうち、正常に戻るでしょう」


青野翼はパソコンで何かデータを見ながら、イズルに説明した。


「なんの容量?」


「霊力、エネルギー、異能力を持てるキャパシティーのことです」


そう言いながら、青野翼はもう一枚の紙をイズルに渡した。


「制限が解除したので、これにもサインしてください」


「今度はなんだ……?」


イズルは体の痛みを耐えるのに精いっぱいで、文書を読む気がない。ざっとみらたら、先ほどの文書の内容とほぼ変わらない。


「制限の解除はCEO本人の意思で、こちらは一切干渉していないこと証明する書類です」


「さっきのやつとどこが違うんだ?」


「さっきのはうち内部に提出するもので、今のは外部に提出するものです。強い異能力を解放することは、組織間のトラブルになりやすいです」


「意味が分からない……」


「もっと詳しく説明してもいいですが、もう一枚の秘密保持契約書にサインする必要があります。ちょっと待ってください……」


「説明しなくていい……」


青野翼は明らかにもったいぶっている。


イズルはその終わりそうもないサインパレードを切った。




***


深夜二時半。


イズルの体の光と熱はやっと収まった。


お腹の部分だけ少し痛みが残っている。


異能力と関係ないかもしれない。帰ってから何も食べていない。


何か食べ物を探そうとイズルは部屋から出た。


「!!」


リービングに入ったとたんに、イズルは呆気にとられた。


リカはソファに座っている。


ドリンクを飲みながら、パソコンで作業をしている。


「ど、どうしてまだここに?」


戻っても遅いので、イズル不自然な笑顔を作った。


「仕事を処理している。それに、あなたの様子が気になるので…」


リカはソファーから腰を上げて、イズルに近寄る。


「オ、オレの様子が、どうした?」


イズルは無意識にお腹に手を置いた。


「具合が悪そうに見える」


「機嫌が悪いだけだ、部下がやらかしたから……」


イズルの言い訳がまだ終わっていないうちに、リカは一歩前に出て、彼のセーターを掴んだ。


「!!」


そして、容赦なく、上に捲った。


「——」


「——」


なんの異様もないお腹に、リカは困惑した。


確かに、イズルはここを庇おうとした。


まさか、本当になんのこともないの?


それとも、外見ではなく、中身に問題が……


「……」


「……」


二人はこの妙な姿勢でしばらく対峙していた。


「八つ、多くも少なくもない。普通の腹筋だろ?」


「!」


無礼なことをしたと気づいて、リカはさっそくセーターを下した。


「ごめんなさい、変なつもりはないの。あなたの様子がちょっとおかしいから、怪我はないかと確かめたくて……何もなかったらそれでいい」


珍しくリカの困った表情を見て、イズルはいたずらしたくなった。


「『心』の怪我なら少しあるけど」


「心臓なの?!」


リカは思わず手をイズルの心臓位置に触った。


イズルはその勢いで自分の手をリカの手に重ねる。


「心臓と言っても間違いないだろう。ずっとあなたのことが心配でね」


「私を心配?どうして?」


「幼馴染だかなんだか知らないけど、あのマサルは信用できない人だ。協力とかを言い訳にして、あなたに不利なことを企んでいないかと、ずっと心配している」


「心配する必要はない。彼にはもう警告をした」


「警告?やはり、何かをされたのか?!」


イズルはギュッとリカの手を握った。


「いいえ、何も」


やはりどこかおかしいと思って、リカはイズルに問い詰めた。


「それより、あなたはされなかった?」


「なんでオレは奴に何かされなければならないんだ……?」


「マサルじゃない。新世界よ」


「!」


(感づかれたのか……)


片手でスマホを操作したら不便を感じて、リカはイズルの心臓に置いてある手を取り戻そうとした。


でもイズルは手を放さなかった。


その「異常」な行動に、リカの疑いが一層深まったが、とりあえずスマホの履歴をイズル見せて、話を進める。


「新世界の訓練施設、今晩も行ったでしょ?非人道的なことをされなかった?」


今晩のことより、イズルは青野翼の地獄訓練を思い出した。


非人道的と言えば、地獄訓練のほうが合っているかもしれないけど……


リカが聞きたいこととは違うだろう。


だけど、体の調子が完全に落ち着く前に、今晩のことをリカに教えたくない。


訓練で誤魔化すことにした。


「非人道的の定義は?例えばどんなこと?逆さま腹筋トレー一万回とか?」


「そのくらいなら問題ないと思う」


リカは平然と答えた。


「だったら、何もなかった」


イズルは心の中で嘆いた。


闇世界の「非人道の基準」はどんなもの?


「あいつのところで、いつも戦闘訓練を付けてもらっている。今晩は少しやり過ぎただけだ」


「そうなの……」


リカはまだ少し信じきれないが、引こうとするように表情を解いた。


イズルが油断した瞬間、いきなり握られている手を横に移し、前に突き出して、耳をイズルの心臓のところに当てた。


「!!」


さすがイズルもその不意打ちを予想しなかったので、すぐ反応できなかった。


「心臓の鼓動が不規則。無理やりの異能力強化によってよく出る副作用の一つよ。本当に何かされたら、もっと大変なことになる前に、白状したほうがいい」


「……」


心臓の鼓動の異常は、イズルも分かっている。


さっきまで、確かに異能力強化のせいかもしれないが、今はそうとは言えない。


白状しないと、これ以上何をされるのか、いたずらみたいな期待もあるが、リカのことだから、きっと本気で自分を心配している。


とにかく、この話題を逸らそう。


イズルは一度深呼吸をして、リカの肩に手をかけた。


「あなたじゃなかったら、セクハラで訴えた」


「セクハラ……?されたの?それとも、したの?」


リカはほんのちょっと呆れた表情になった。


「違う」


プライドに関する問題だから、イズルはさっそく弁解した。


「さっきからあなたがオレにしたあれこれだ」


「私が……?」


「普通に、他人の許可なしで服をめぐって腹を見る?胸に触る?心臓に耳を当てる?」


「しないと思う……すみません。セクハラのつもりはなかった」


リカは正直に自分失礼を認めた。


顔が熱い。


イズルを心配してるとは言え、もっと冷静に話しを聞き出すべきだ……


「あなたならいいと言っただろ」


うまくリカの問い詰めから逃げたようで、イズルは肩を下した。


「いいえ、私でもだめだわ」


「はぁ…?」


リカはきりっとした目でイズルを見返す。


「あなたは、新世界と万代家両方に狙われている身だから。周りの人に油断してはいけないの。闇世界の人は常に身分を隠している。どんな形で接触しに来るのか分からない。ただのセクハラやナンパに見せかけて、ほかの企みがあるかもしれない」


「ただのセクハラってなんだ……」


「弱みが掴まれたり、脅かされたり、体に異能力の副作用が出たようなことでもあったら、すぐ私に相談して。お酒と夜の店は禁物。エンジェたちはよく夜の店で人をたぶらかすから。知らない人からの飴も食べちゃだめよ……」


「オレを何歳だと思う?」


リカは人を心配するとこうなるのか。


母にもこういう変な説教をされたことがなかったのに……


でも、必死に自分を心配しているリカの不器用の姿がかわいい。


ちょっと微笑ましい気分になったら、イズルはまた別のことに気になった。


ちょっと待って。


それは、自分を心配する時だけの反応なのか?


それとも、誰にでもすることなのか?


遠回ししてもっと聞こうと思ったら、リカは別の話題に移した。


「そういえば、奇愛ちゃんの出身を知っているの?」


「奇愛の出身?」



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