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1905 異能力の近道

マサルは電話で村田に大丈夫と伝えてから、車で別の場所に向かった。


港の高級住宅区にあるエンジェとの「家」だ。


当初、リカを潰す計画を承諾した後、エンジェから家をプレゼントされた。


エンジェ個人が買った不動産だけど、マサルとの共有名義で登録された。


マサルはエンジェの情熱と好意を断られず、半分の金額を出して、その共有名義を承認した。


二人が「ハニームーン」だった時は、よくそこで一緒に過ごしていた。


先ほど、エンジェからメッセージがあった。


一緒に美しい夜を過ごしたいから、家に帰ってきて、と。




海の美しい夜景を見える部屋に入って、マサルはエンジェが用意したキャンドルディナーを無視し、単刀直入に本題に入った。


「新港駅デパートのテロ事件は、お前が仕組んだのか?」


エンジェは目じりを吊り上げて、隠しもしなく素直に認めた。


「そうよ。あのイズルを巻き込んで、殺すために。マサルちゃんと結婚できるなら、あたし、鬼でも何でもなれるわ」


「わざとその時間と場所を選んだな。俺とリカはそこにいるのを知っただろ」


エンジェの甘い告白は、反ってマサルの不快を刺激した。


「知らないわよ、そんなの。あたし、貴人から任務を受けただけだよ。貴人の担当分野は分かっているでしょ」


もちろん、マサルは知っている。エンジェに貴人と呼ばれている落合のメインの仕事の一つは、敵組織を波乱することだ。


敵組織を装うために、たくさんの情報が必要だ。


マサルはコミュニケーションに長けている故に、よく情報収集の任務を担当していた。


情報の受け渡しをしている間に、落合との対面が多くなった。


天童大宇が病気に倒れたあと、落合はエンジェに通じに、マサルを自分の陣に誘った。




だが、落合の命令だとしても、それを受け取ったエンジェの目的は不純に違いない。


マサルはトーンを下げて、警告にも似たような口調で言葉を置いた。


「なんなら、お前も知っているはずだ。貴人は俺にやってほしいこと。もう邪魔するな」


エンジェの反応を待たず、マサルは寝室のほうに向かった。


まもなく、スーツケースを持ち出して、エンジェの前で一つの封筒をテーブルに置いた。


「俺はこの不動産を放棄する書類だ。金は返さなくていい。何があったら俺の弁護士に聞いてくれ」


「マサル、あんた――!?」


エンジェははっと息を飲んだ。


これは関係を切る宣言じゃないか!


薄情な男!と叫びたいくらいだが、やはり女王様でいたいので、なんとか勝気な笑顔を絞り出した。


「あたしを傷付くことでリカにアピールするつもりなの?あら、当初リカを捨てた時、あたしにも同じようなことをしてくれたわね。マサルちゃんは本当にこういう手が好きなのね。けれども、リカはあんたのことを二度と信用するのかしら。ああ、けれども、マサルちゃんはMだから、リカお姉さまに見下ろされたら、きっといい気持でしょうね」


マサルは一度深呼吸して、怒りを抑えた。


「リカは俺を見下ろしていたかどうか、お前は俺よりよく知っているだろ」


「!?」


その話の意味をエンジェは秒で悟った。


(もう、気付かれたのか!?)


マサルは扉を出た瞬間、エンジェはテーブルクロスを強く引き出した。


贅沢なディナーと優雅な食器は床でただのゴミとなった。




防音のいい部屋から漏らした微かな叫びがマサルの耳に届いた。


エンジェは、彼女の名前と真っ逆な中身を持っているようだ。


愛情を語りながら、うまい手で他人を自分の欲望を満たすための駒にする。


出合った時からそれを知っていたはずなのに、なぜ、自分はこんなにも軽々しく操られたのか……


エンジェはこれで手を引くとは思えない。悔しさでまた邪魔しに来るだろう。


しかし、もっと緊急なのはリカのほうだ。


マサルは七龍頭たちにも一目を置かれた異能力者。


なのに、梅子はリカをエネルギーの容器に選んで、リカに妙な情報を伝えた――


「リカは、やはり、普通の人間じゃない。あのイズルに譲るわけにはいかない…!」




リカはイズルに何度も電話をかけたが、向こうがずっと電波のないところにいるようだ。青野翼に連絡しても同じだった。


GPSで確認したら、イズルが最後に入ったのは、新世界所属のビルだ。


何か危険なことをしなかったらいいけど……


焦っている気持ちでイズルのマンションに戻ったのはもう夜11時頃。イズルの部屋に明かりが点いているのを見て、リカは足をさらに速めた。


でもマンションの玄関に入ったら、携帯が鳴った。


メロディーは『ドナウ川のさざなみ』、イズルにつけた着信メロディーだ。


「おかえり、電話に出られなくてごめんね」


イズルの声は元気がないというか、緊張しているというか、いつもの余裕がない。


「ごめん。会社のほうにちょっと状況があって、急いで対応中だ。しばらく終わらない。お茶は14階のリービングに置いてある。持って行って」


「会社……?分かった。ありがとう」


リカは疑っていても、そのまま電話を切った。


どのみち14階に上がる。目で確かめたほうが早い。




14階に上がったら、やはり妙だと思った。


二人分のお茶は開封もせずにリービングのデーブルに置いてある。


イズルの部屋の扉が閉まっている。


お茶を飲む暇もなく、部屋に引きこもっていて、一体どんな仕事?


脳内で現れたあの画面、本当にただの幻なのか?




心配の気持ちに促されて、リカはイズルの部屋のドアをノックした。


「悪い、今部下に怒っているところだ。鬼の形相になっているから、誰にも会いたくない!」


「……」


とんでもない下手な嘘だね。


リカは一応エレベーターに向かった。




部屋でエレベーターの音を聞いて、イズルはほっとした。


リカが扉をノックしてくると思わなかった。


今の姿をリカに見られてはいけない。


先ほど、リカがマンションの下で見たイズルの部屋の光は、照明からのものではなく、イズル本人の体から発されたものだ。


今のイズルは、全身がライトのように光を放っている。


血が燃えるように熱く、脈が耳で聞こえるほど強く打っている。




***


デパートの前でリカと別れたら、なんとなくムカつく。


マサルのやつ、異能力が大した役に立たないのにもかかわらず、職務と地位を利用して、リカと二人のチャンスを作った。


イズルは一秒も浪費したくない、マサルを完全に凌駕する能力、万代(よろずよ)家で昇進できる能力が欲しい。


訓練場に行って、異能力を高める方法について青野翼の返事を催促したら、青野翼は「上から許可を取れました」と答えた。


「ただ、不良反応がでるリスクがあります。やきもちのために使うのはお勧めしません」


「誰がやきもちのためだと言った?万代家にはオレの入族に不快を感じる人がいる。ちょっとでもオレの弱さを掴めたら、きっとそれを言い訳にオレに手を出す。一時も早く、オレの能力の価値を見せなくてはならない。今日のテロ事件も、オレを狙っている可能性がある。オレは何か決定的な力を持たなきゃならない」


イズルは真剣だと分かって、青野翼は仕方なさそうにため息をつきながら、タブレットで何かを操作した。


「分かりました。CEOは堅実な訓練方がお嫌いで、どうしても近道で力を手に入れるのなら――」


青野翼はタブレットをイズルに渡す。


「これにサインしてください」


「これは……責任免除承諾書?」


その意味不明なファイルに、イズルは眉をひそめた。


「言ったでしょ。この方法はリスクがあります。僕はCEOの身の安全をちゃんと考えているのに、CEOは僕の一従業員としての立場を全く考えていないなんて、悲しいです。いきなり予定のない行動を入れて、しかも、協力者CEO本人を危険に晒すような行動……万が一のことがあったら、僕は上の人になんと申し上げたらいいでしょう」


「やめろ。いますぐサインする……」


青野翼の気持ち悪い話を阻止するためにも……


イズルはサインを決意した。



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