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1902 茶番テロ

「どうしてここに?」


イズルがデパートにいるもの、空を飛んでいるのもリカの予想外だった。


イズルは自慢な笑顔でテラスに飛び降りた。


「妖怪から聞いた、お前はテロ事件に巻き込まれたって」


「妖怪?エンジェなの?」


「そう」


「エンジェはここの事件を知っている?」


「とっても詳しい」


「どうしてそれをあなたに教えたの?」


「何か良からぬことを企んでいるだろう。とにかく、今晩中の予定は……」


「取り消さないわ」


「……そう言おうと思ったから」


イズルは一度ため息をして、さりげなくリカの手を握る。


「オレはついていけるところまでついてあげる」


テラスの入り口に立っているマサルを一目したら、イズルはリカの手を引いたままデパートの中に入った。


「軌跡たちのところに案内してくれ」




「軌跡兄ちゃん!死んじゃだめ!あたしはまだお嫁さんになってあげていないの!二人でアマゾンの無人雨林でキャンプする約束はまだ果たしていないの!!」


新港(しんみなと)駅付近の病院は少なくない。救援はすでに到着した。


奇愛(きあ)は軌跡の担架の隣で、看護婦の困った視線の中で傍若無人に号泣している。


それを聞いたイズルは一瞬心配したけど、近くまで来てみたら、騙された気分になった。


軌跡は思ったよりずっと元気、奇愛に倒されたテロリストのほうがよほど重傷だ。


「お前を嫁にもらうことと、アマゾンの無人雨林でキャンプすること、どれもテロリストと戦うことより危険だと思う……その音量で叫び続けたら、軌跡の耳が持たないぞ」


イズルは後ろから奇愛の大袈裟な反応にツッコミした。


「イズっ……!?全部あんたのせいよ!」


イズルを見ると、奇愛の怒りが更に燃え上がった。


「あんたがイルミネーションなんか提案しなかったら、あたしたちはここに来なかったのよ!軌跡兄ちゃんはあんたのためにリカ姉ちゃんを尾行したのよ!」


「奇愛、いいんだ……俺は平気だ。隊長のせいじゃない……」


軌跡はさっそく奇愛を止める。


「さっき、俺のために……ごめんな。相手はテロリスト、危険すぎるんだ 。もう二度と、あんなことをしちゃダメだ……」


「軌跡兄ちゃんを傷付けるものを許さない!テロリストだってなんだって潰してみせる!彼らは変に降参しなかったら、その場で焼肉にするつもりだったの!」


奇愛に刺されたテロリストは救急車でその発言を聞いたら、全身が震えて、気絶を装った。




「どっちがテロリストだ……」


イズルはもう一度ツッコミした。


軌跡もやれやれと笑った。


「さすが、戦の神様、蚩尤(しゆう)の血を受け継げた女子だ。テロリストくらいじゃ相手にならないか」


「戦の神様、蚩尤?」


リカはその言葉に気づいて、何か問い詰めようとしたが、医師は乗車を催促しにきた。


仕方がなく、リカはその質問をしばらく伏せた。




「茶番だったな」


イズルは肩をすくめた。


「奇愛にやられるテロリストはどこにる」


「やはりそうだったのね、さっきマサルは……」


「事件はもう解決した。お土産は次のデパートで買おう」


リカはもっと説明しようとしたら、後ろまで来たマサルに話を遮られた。


「どこのデパート?車で送ってあげる」


イズルは笑顔でリカの手を自分のほうに引いた。


「結構だ。俺たちは俺の車でいく」


マサルは眉をひそめて、二人の行く手を阻んだ。


イズルはズルそうに笑って、広場の入り口のほうに指す。


「奥さんが待っているぞ、家まだ送ってあげたら?」


「奥さん?なんのことだ?」


イズルの指さす方向を見ていても誰もいなかった。その話を挑発だと受け取って、マサルはさらに不快になった。


「お前の奥さんか、オレの従兄の奥さんか分からないけど、どうしてもお前の今晩の行動を止めてほしいってオレに頼んんで来た。オレはまだ何も止めていないけ・れ・ど・も、彼女のこと、あまり責めないでね。すべては、お前を愛しているから――だそうだ」


「……」


その「奥さん」がエンジェのことだと分かって、マサルの顔色が更に暗くなった。


「もういいでしょ」


リカは目線で火花でも飛ばしそうな二人の間に入った。


「約束の時間は8時。道路の渋滞状況が分からない、出発しないと間に合わないかも。私とマサルは一緒に行くのだから、お土産が一つだけでいい」


「……」


「一緒に行く」。「一つだけ」。


イズルはリカの言い方を気に入らない。


自分の存在感を増やす方法を考えたら、リカはマフラーをしていないことに気づいた。


イズルはさっそく自分のマフラーを外して、リカの頸にかけた。


「コートの襟は低すぎる。今晩北風が吹くから、これを付けて行こう。家で暖かい夜食を用意して、あなたの帰りを待つから、早く帰ってきてね」


「……?」


その親切さに、リカは少し戸惑った。


イズルの今までの「お気遣い」は大体おべっかを使っているしか思えないほど下手なものだった。


でも、今の表情も動きもとても自然で、本物のお気遣いに見える。


「さあ、早く行って」


マフラーを断られる前に、イズルはリカを押し出した。




マサルについて駐車場まで来たリカは、あるピカピカの黒い新車の前に案内された。


「車を変えた。そういえば、お前を乗せるのは初めてだよな」


「ええ、私が異世界に行く前に、あなたはまだバイクを乗っていた」


「……」


もともと車を自慢したいマサルは話題選びに失敗したと気づいた。


リカはその名車に興味がなさそうだし、リカが離れた後の自分の出世に触れるのもやばかった。


マサルはまずい気持ちを隠すために、急いで車を出して、話題を変えた。


「あのイズルは、俺たちがやろうとすることを知っているのか?」


「彼が知っているか知らないか、この用件と関係ないでしょ」


「さっそく庇うのね。リカのために言わせてくれ、いくらお前の部下でも、このような極秘事項を教えるのはどうにかと思う……」


「庇っていない。あなたに彼のことを教える必要がないと判断しただけよ」


リカはマサルの話を断ち切って、スマホで何かを書き始めた。


マサルは心の中で自分の不運を嘆いた。


エンジェもイズルも、なぜ邪魔の人がこんなにも多いんだ。


彼たちがいなければ、リカはまだ自分の「婚約者」かも知れない。




リカとマサルが訪問する梅子(うめこ)さんは、万代家の長老級の人物だ。


年はまだ50代だが、リカの祖父天童大宇と同じ、万代家五代目に所属する。


噂によると、強い異能力を持っているだけではなく、七龍頭の座を継げる資格のある功労者だ。


でもなぜか、ある日突然に、家の高層部から退席して、隠居の生活に移した。


彼女の引退理由を知っているのは極一部の人だけ。


梅子は高層部のほかの人と意見が衝突し、万代家から脱退すると言い出したから、家に軟禁された。


万代家は出入り自由と訴えているが、梅子ほどの高い異能力を持つものを手放すようなことは到底許さない。


下手にしたら、ライバル家族や組織に取られる可能性もある。


その上に、一度「裏切った」人を二度と信用されない。生涯、家の高層部から追放される。



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