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1701 モニターの基準

【復讐劇篇】


イズルを万代(よろずよ)家に入族させる任務に成功し、祖父が復活した以上、リカは家から追放されることがなくなった。


本来なら、自分の家に帰るべきだが、イズルの後ろにある「新世界」という組織の企みをどうしても気になって、しばらくイズルの家に残ることにした。


イズルの高層マンション、11階。


「これからこの階を使ってくれ」


家庭教師の嘘も、付き添いの縛りも意味がなくなったので、イズルはリカの生活を配慮し、マンション11階の鍵を渡した。


「母はここを使っていた。キッチンまわりが一番整備されている階層だ」


「……お母さんの?私が使っていいの?」


リカはためらった。


「いいさ。母はものを大切にする人だった。せっかくいろいろ調達してきたのに、使う人がいないと寂しいだろ」


「そうなの……」


リカはまだ過去のことに気にしているが、イズルは一歩近づいて、ヒマワリのような笑顔を見せた。


「その代わりに、たまにここのものを使って、御馳走してくれよ」


その言葉がイズルなりの配慮だと知って、リカは提案を受け入れた。


思わなかったのは、その「御馳走」の話はイズルの本気だった。




あれから、イズルは度々ご飯を食べにくる。


時々食材も持て来て注文をする。


もともとふざけた給料をもらっているし、ガイアリングのことにも感謝しているから、リカは気にせずにイズルの要求に答えた。


それに、リカが言ったように、彼女は誰かに手料理を食べさせるのが好きだ。


彼女の両親はいつも仕事であちこち走り回っていて、自分自身も小さい頃から勉強や任務でドタバタしていた。「家」で誰かと一緒に手料理を食べるのは貴重な経験だ。




今日の午後、夕飯にはまだ早過ぎる時間、イズルから呼び出しの電話があった。


相談したいことがあるから、14階に来てと。


エレベーターが14階に到着し、扉が開いたら、イズルの笑顔が待っていた。


数か月前の作り笑顔ではないのが分かるけど、なぜか、ちょっと小馬鹿感があるとリカは思った。


それでもツッコミせず、笑いを我慢した。




イズルはリカを書斎に案内して、パソコン前の椅子に座らせた。


パソコンに表示された画面は「ウィングアイランド・アドベンチャー」という戸外イベントのホームページ。


「これ、新世界主催のイベントだろ?青野翼の奴、口がきつくて、何も教えてもらえない。万代家のほうに何か情報があるのか?」


リカはゲームの施設紹介を満載するホームページを一通りチェックしたら、少し困惑な表情をした。


「私が異世界にいる間にできたものだから、詳しい情報を知らない。これって、青野翼が言った――あなたが参加に強いられた『サバイバルゲーム』ってやつなの?」


「おそらくそれだろう」


「あれは、私に家庭教師を承諾させるための嘘じゃなかったの?」


「説明する前に聞きたいけど、奴はお前にどんな情報を伝えた?奴の性格なら、嘘と真実を混ぜて人を混乱させるような話をすると思う」


「そうね」


リカはまず青野翼の話をそのままイズルに教えた。


「世界のとある大事な資源を独占するプロジェクト? ……あいつらしいデタラメだな。そんな話、オレも奇愛も一ミリも聞いていない。まあ、念のため、あとで奇愛にもう一度確認してみる」


「新世界はこんな目立つ施設を作るのが珍しい。世界からモニターを募集したのもきっと何か裏がある。あなたと奇愛以外に、どんな人が選ばれたの?」


「地道に調べてみたが、オレたち以外のβ版モニターを見つけなかった。選ばれたものは秘密保持契約書にサインしなければならないから。去年のα版テストの頃、ネットで『選ばれた』と歓声を上げる人はたくさんいた。α版の募集人数は1000人、選定ルールがランダム抽選だと公開されていたけど、β版の募集人数も選定ルールも開示されていない」


「新世界絡みだから、万代家に何か情報があるはずよ。あなたはもう万代家の人だから、身の安全を守るためという理由で情報調査申請を出せる」


「その申請とやら、どうやって出せるのか、教えてくれる? リカ先生」


イズルはわざと身を屈めて、ぎりぎりリカの肩と頬に触れる距離まで顎を下げる。


「……」


リカは頬の温度が上昇するのを感じて、さっそくこの話題を切る。


「後で資料を送る。読めない字があったらいつでも聞いて」


「……」


イズルは少々憂鬱な気分になって、体を元の位置に戻した。


「今はすでに知っている情報から手掛かりを探してみよう。あなたと奇愛ちゃんの共通点といえば――お金持ちのドラ息子・娘、勉強嫌い、暴れん坊、危険物や武器の違法所持、闇商売を営んでいる……」


「オレの悪口を言いたければはっきり言えばいい……」


イズルはリカのニュアンスを疑うと、リカの話が別方向へ転じた。


「それに、若くて健康、頭の回転が速い、仲間思い、強い家族背景を持っている……」


「!」


(まさか、褒めているのか?)


イズルはピンッと耳を立てて、その「褒め言葉」をしっかり胸に刻み込んだ。


「なにより、オレたちの家は暗黒組織に繋がっている。『暗黒組織と関係のある家からサバイバルゲーム好きな若者をピックアップする』のが選定基準だったら、対象はそんなに多くないと思う」


「とにかく、万代家のほうの情報を調べてみましょう。私のパソコンを取ってくる……」


リカは起き上がろうとしたら、イズルのパソコンで表示されているホームページの背景画像は新しいものに切り替わった。


画像の色が薄いが、島の形と大きな内部構造がはっきり判別できる。


卵形の島に、丸い型の建物、それに、黒い石碑と緑豊かな戸外環境。


ガイアリングの全体地図を見たことのあるリカはすぐに妙なところに気づいた。


「この形……ガイアリングと同じよ!」




リカは自分のパソコンを持ってきて、万代家の「個人実績システム」に入って、マサルの最近2年間の仕事記録を調べた。


「島のα版テストはいつ?どのくらい時間がかかったの?」


「去年1月1日から、一か月間だそうだ」


「一昨年12月の下旬、マサルは一つの『極秘任務』を受けてから、長期休暇を取った。復帰したのは去年の2月……α版テストの時間と合致している。その後、任務成功だと判断され、彼の継承順位でのスコアが大幅上がった」


万代家では、族人たちのやる気を刺激するために、極秘任務ではない限り、個人の任務の内容が常に開示されている。


謎の任務でいきなりスコアが伸びるのは何か不正が働いたじゃないかと疑う人もいるけど、そのような「極秘任務」を受けられる人は、みんな能力が認められている人だったので、大体の族人はその仕組みに納得している。


「そして、去年の3月から、マサルはもう一つの『極秘任務』を受けた。これは、おそらくガイアリングの建設でしょう。マサルは七龍頭たちのお気に入りだけど、まだ経験不足の若手。彼の後ろ盾になっている私の祖父も、当時まだ入院中だった。祖父と対立する反対派は彼に家の未来に関わる任務をやらせないと思う。よほどな理由がない限り……」


リカの言っている「理由」は何か、イズルはすぐ理解した。


「ということは、ガイアリングの建設を任されたのは、彼が長期休暇という名目でウィングアイランドのα版テストに参加したから?ガイアリングはウィングアイランドにそっくりな構造になったのもそれが原因ってこと?」


「そのほうは一番自然でしょう」


理屈が通じているけど、イズルは違和感を覚えた。


(新世界と万代家は敵同士、相手組織の人が自分の施設に潜り込むのも知らなかったのか?)


(それとも、知っている上でわざと潜り込ませたのか……)


イズルの疑問がまだ口から出ていないのに、リカのは話の後半を補完した。


「それともう一つ――私の祖父以外に、彼は新しい後ろ盾をみつけたのでしょう」



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