表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/142

1405 悪役の布陣

リカはマサルに電話をしたが、案の定、繋がらなかった。


 電話の代わりに、リカは何通のメッセージを送った。


 ガイアリング周辺の道路状況、バスやタクシーはどこまで近づけられる、周りに住宅区の有無、テストに持ち込み不可なもの……などガイアリングの周りの環境やテストのルールについていろいろ質問した。


 しばらく待っていたら、全部既読になった。


 一方、マサルとエンジェはガイアリングのコントロールセンターに座っている。




 ガイアリングは戸外と室内、二つの部分に分かれている。


 室内部分は「コア」と呼ばれる二階立ての建物。上空から見れば、完璧な円形になっている。


 「コア」を囲む戸外部分は「シー」と呼ばれて、森公園のような景色になっている。周りに合金の壁に厳重に保護されていて、上空から見る形は、まるで巨大な玉子。


 コントロールセンターは「コア」の一階にある強大な丸い部屋。一面の壁は「シー」に面しているが、ガラスは特別加工されたもので、外から中が全く見えない。




 ガラスの前に、ヨーロッパ宮廷風の白いテーブル椅子セットが置かれている。


 マサルとエンジェは対面に座って、外の地形変化の演習を見ながら、甘いお茶時間を過ごしている。


 エンジェはウェディングドレスの特集を広げて、選んでてとマサルに唆した。


 ちょうどその時、リカからのメッセージが相次ぎに到着する。


 マサルはスマホの発信先を一目見たら、不愉快そうにスマホを締めようとした。


 エンジェはその表情に気づき、やきもちのよな甘い声をあげた。


「うるさいわね。誰なの?重要な仕事時間を邪魔するなんて。あたしたちの知り合いのなかで、こんな殺風景なことをする人は、三人しか知らないわ」


「……」


 マサルはエンジェの意味が分かる。


 スマホエンジェに見せて、リカのアカウントと電話番号を「非通知」にして、更に「ブロック」した。


 その時、一人のスタッフがマサルを呼びに来た。


「マサルさん、ガイアの彫像に何がついているみたい。ちょっと見てくれないか」


 マサルはスマホを置いたままスタッフについて外に出た。




 エンジェはスマホを取って、リカのアカウントを復活させ、メッセージを読んだ。


 「道路の状況?住宅区?持ち込み?何なのよ。無理やりに話題を作ってるのね。マサルちゃんが話に乗ったら、ここの情報を強請るつもりでしょうね」


「残念だったわ、マサルちゃんはもうあなたに一ミリの情もないのよ」


 突然に、外に繋がるアナウンサーから変な叫び声があった。


 エンジェはガラス窓を越して外を眺める。


 いつの間にか、一匹の長毛の野良猫が「シー」に入り込んだ。


 ゴロゴロ動いている地形の中でパニックになって、叫びながらあちこち逃げ回っている。


 取り乱した野良猫を見て、エンジェはなぜかいい気分になった。


「捨て猫かしら。優良血統とはいえ、飼い主がいなかったら、ただのゴミよ。早く諦めて、楽になればいいの」


 エンジェの目の中で、野良猫はリカの姿になり、障害物の間で必死に足掻いて、最後に深い溝に落ちて、姿が消えた。


 エンジェは猫好きだ。特に有名種で、値段の高い猫が好き。家でも二匹を飼っている。


 なのに、今はあの野良猫の遭難を楽しんでいて仕方ない。


 リカに対してもそうだった。


 エンジェはリカが好きと自覚している。なぜなら、リカは彼女が望んでいるすべてを持っている。


 権力者の祖父、有能な両親、勉強のできる頭、複雑な仕事を処理する能力、与えられたイケメンの婚約者、誰かに媚びを売らなくても生きていける自信——


 リカの任務もいつもレベルの高いものだった。


 手伝いに行けば、リカはいつも高い評価をつけてもらう。だから、エンジェはほかの人より早いスピードで継承人ランキングを上っていた。


 そのままリカに掴んでいけば、自分もリカと同じようなところに上れると思っていた。


 だが、それは間違っていた。


 リカのと同じようなハイレベルの任務は、彼女に振り込まれない……


 万代(よろずよ)家は、下っ端から上ってきた彼女に大道路を用意していないようだ。


 リカよりも優れた異能力を手に入れても、家の核心部に受け入れられなかった。


 エンジェは不公平と思った。リカの存在もだんだん目障りになった。


 その上に、リカの愚かさは耐えられないものだ。


 あんなに資源を持っているのに、全く活用していない。


 馬鹿みたいにコツコツ任務をやっていて、普段は「仲良し」活動もしない。


 必死にみんなと「仲良し」になる自分を舐めているみたい!


 七龍頭首席の継承人という肩書を持つだけで、そんな傲慢でいられるのか!




 エンジェは悔しかったが、効率よくランキングを上るために、その悔しさを隠し、大人しくリカの傍で務めることを選んだ。


 天は自ら助くる者を助く。その悔しさを我慢する時間は無駄じゃなかった。リカの「親友」として家から注目を受けはじめて、リカほどではないが、わりとおいしい仕事を受けるようになった。そして、「貴人」と出会った。


 「貴人」の助言で勇気を出して、異世界の件を利用し、一撃必殺でリカをやっつけた。


 リカから聖地を守る仕事を奪って、リカに与えられた男――マサルを自分の騎士にした。


 長女継承制度も廃止され、ついに、リカと同じ……


 いいえ、リカに勝ったんだ!




 リカの祖父はお茶会に向かう途中に、何者かによって襲撃された噂を聞いた。


 どうやら、運も自分の味方だと、エンジェは密かに笑った。


 あの爺の命もきっと長くない。これで、リカを家から追い出す審議は再提起できる。


 リカはあの野良猫のように必死に足掻こうとするだろう。


 でも、自分は天使のように優しい。


 この「実験」で、リカを楽にさせる。


 リスクを心配する必要はない。


 マサルはリカとお茶会でトラブルした。


 マサルはリカの祖父を裏切った。


 マサルはこのガイアリングの責任者だ。


 リカに何かあったら、責任を問われるのはマサルだ。


 本当に、盾になってくれるいい騎士だわ~


 エンジェはリカのいない美しい未来を想像しながら、マサルのスマホでリカのアカウントと番号をブロックし、完全に削除した。


 これもまた、マサルがリカに敵意を持つ証拠になるだろう。




 考えれば考えるほど盾騎士・マサルの状況を見たく、エンジェは入り口まで来た。


 そこで、身を屈めて、ガイアの巨大彫像の下部を確認するマサルの姿がいった。


 エンジェは速やかにスマホでそのシーンを撮った。


 更に、写真に自己流の勝利宣言をつけて、「クラブ」にアップロードした。


 「Goodless and her Royal Knight!魔女を打ち破った聖女と騎士はついに結ばれる!Love our honey fate ~ Love our shining future!ハートマーク」


 「クラブ」の中で、マサルに不服を持つ若い男たちはどう思うでしょうね? 


 マサルに勝つためにさらに奮発するのかしら~


 「あたしのために争わないで」なんかセリフ、ただの偽善よ。


 主人公みんな、本当に叫びたいのは「あたしのために争え!」ってセリフよ!


 そう、あたしこそ真の主人公、悪役令嬢だと誤解されたいい女。リカは人生を乗っ取られる元悪役令嬢に過ぎない。誰もそんなリカの消失に興味を持たない。


 エンジェはたくさんの男に囲まれる自分の美しい姿に陶酔した。


 投稿した勝利宣言に、英語のスペルミスがあるのにも気づかずに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ