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1404 二人の決意

新世界のトレーニング施設から出たイズルは、神農(しんのう)グループの「裏商品」を担当するスタッフに電話をした。


「オレだ。A175五箱、C016三箱を用意してくれ。趙奇愛の名義で、このアドレスに送ってくれ。必ず、本人の手に渡すように」




車でマンションに戻ると、彼を待っている奇愛と軌跡がいた。


「おかえり~~あらら、イズルお兄ちゃん、顔色が悪いね、大丈夫?犬のうんこでも踏んだ?」


イズルの曇った表情を見たら、奇愛はさっそく皮肉を始めた。


「何しに来た?呼んだのは軌跡だけだ」


子供と喧嘩する気分じゃないので、イズルは奇愛を追い払おうと厳しい顔を見せた。


「イズルお兄ちゃんの命の安全を心配してるの。リカお姉ちゃんは『あんな危険なもの』を注文したから、イズルお兄ちゃんが危ないと思った!」


「ごめん、隊長、俺が悪いんだ」


軌跡は前に出た。


「昨日電話を受けた時、ちょうど奇愛と食事をしていた……」


「まあいい、上がってこい」


ここで奇愛を断ったら、あちこちにデマを散らかされるかもしれない。イズルは妥協するしかない。




部屋に入って、イズルはこれからの「計画」を話した。


軌跡はその件の厳重性に気づき、さらに詳しく聞こうと口を開いたら、隣の奇愛がいきなり躍起した。


「あんたの会社、そんなものを作ったの?!」


奇愛の目から興奮な光を放っている。


「まさか、世界征服を企んでいるの?ああ分かった!リカ姉ちゃんはあんたの邪悪の計画を知ったから、それであんたに幻滅して、世界のためにあんたを振ったでしょ!」


「……#」


奇愛のあてつけはいつものことだけど、今回の話が格別にむかつくとイズルは思った。


「どうやってその結論に辿りついたんだ?リカは、いつ、どこで、オレを振ったんだ?」


「その失恋顔を見れば、全部分かっちゃうよ」


「どこが失恋顔だ。そもそも告白もしていない。失恋なんかあるものか」


「告白はただ形的なものよ、事実上の失恋は変わらないわ」


「……」


「奇愛、そうじゃないんだ」


剣幕の匂いを嗅いで、軌跡は仲介に入った。


「形は重要なものだ。隊長は告白していない、リカさんは断っていない。だから、隊長がリカさん振られて失恋したことは成立しないんだ」


「へぇえぇ?軌跡兄ちゃんはそんな固いタイプなの?」


「固いというか……俺、実証派なんだからな。状況の判断には確実な証拠が必要と思うんだ。例えば、俺とお前が食事をしている。それだけで、俺たちが付き合っているという結論に辿り着かないだろ?たとえ俺たちがペアリングをしていても、ただの偶然かもしれない。勝手に判断されたら、奇愛も困るんだろ?」


「!!」


「ップ」


奇愛の呆れ顔を見て、イズルは思わず笑い声を噴出した。


「ちッ、違うの!困らないの……そんなこと、証拠がなくだっていいの!!」


「軌跡、お前、哲学家の素質があるかもしれないな」


奇愛が混乱に落ちる隙に、イズルは真面目な話に戻った。


「それじゃ、軌跡、さっき言ったこと、必ず守るんだ。お前たちは『あのもの』を指定した場所に届くだけ、そのあとすぐトラックを捨てて撤退するんだ。それ以上介入してはいけない」


「ああ、分かった。任せろ」


「ほかの人に、ただの『訓練』だと伝えてくれ」


「隊長こそ、気を付けてくれよ」


イズルの態度からその行動の危険性を感じ、軌跡は心配でたまらない。


「オレは平気さ。この札に自信がある。本当に何があっても、『彼女』は、オレを死なせない……と思う」


「勘違いしてるんじゃない?」


回復した奇愛はさっそく反撃のチャンスを掴む。


「リカ姉ちゃんは万代家のお姫様でしょ。周りに優秀な男子がいっぱいるのに決まっている。あんたみたいな卑怯で軟弱な男を気にかけるわけがないじゃない?」


「#……残念ながら、ずっと気にかけられてたみたい。命も救われたんだ」


イズルは一字一句、奇愛の耳に言葉を叩き込むようにはっきりと反発した。


「ただの『偶然かもしれないし』。だって、『ペアリングをしていても恋人の証拠にならない』でしょ?事実は、リカさんはあたしに注文をして、あんたの商品を無視したよ。ね、軌跡兄ちゃん?」


「えっと、俺が言いたかったのは……」


奇愛の八つ当たりに、イズルはついに堪忍袋の緒が切れた。


全身黒いオーラが漂い、夜の森に光る狼のような目で奇愛を睨んで宣言する。


「じゃあ、今回彼女に会ったら、その事実や証拠を貰ってくる。どんあ手段を使っても……」


「たっ、隊長、その顔じゃダメなんだ!相手に逃げられちゃう!」


「何が逃げられちゃう?そもそもリカを追いかけていない!」


「あんなに媚びを売ってたのに?」


三人は戯言で盛り上がっていたら、イズルの携帯からメッセージの着信音が鳴った。




発信先はあかり。


「イズルお兄ちゃん、お願いがあります!お姉ちゃんはこれからとってもとっても危険な任務をするの!止めてあげてくだい!!あたしじゃお姉ちゃんを説得できないの!!」


その大急ぎ口調のメッセージを読んで、イズルは思わず口元を上げた。


少なくとも、あの小悪魔のように鋭いあかりから見れば、彼はリカを影響できる。


リカには彼の力が必要だ。そのため、彼を気にかけている。


「……」


それに、見た目と違い、リカは優しいから、彼を守ろうとしている。


「……」


これらを証拠に、奇愛に反論できなくもないが、イズルはどこが物足りない、あるいは、刺々しさを感じた。


リカは彼のことを、それだけのものだと思っているのか……


勾玉を渡された時のことが頭に浮かんだ。


「あんなもの」を見せたくらいなら、なぜそのまま自分に頼まない。


まさか、このイズルが奇愛よりも頼りになれないと思っているのか……




********


 リカの家で、あかりはパソコン画面をリカに見せながら、必死に彼女を止めようとする。


「お姉ちゃん、その任務を受けちゃいけない!あのタイミングで実験体を募集するなんて、絶対罠です!」 


「あいつらがガイアリングの建設担当だと知ってからいろいろ調べた……これらの写真を見て」


 パソコンに表示されたのは、エンジェが様々なコーディを着ている写真の投稿。


 すべての写真に、エンジェの濃いメイクの顔がぼやけになっていて、その代わりに、後ろの背景がきれいに処理された。


「これらは、エンジェの『クラブ』から抜き取ったもの。マサルのほうは死んだ魚みたいなんの情報もない。彼の親しい部下たちも口を噤んでる。仕方がなく、エンジェの『クラブ』の人のアカウントをハッキングして、そこに入ったの」


 あかりは背景部分を拡大する。


 きれいに見えるように処理されたけど、もともとの解像度が低く、露出された部分も小さいから、はっきりと内容が分からない。


 辛うじて判明できるのは山、崖、植物、大きいな石など景色。


 写真と共に、エンジェは「スーパーウルトラビッグクエストをやってるよ」「この任務が完成すれば人生の勝ち組!」「みんな、期待してて」みたいな文字も投稿した。でも、どの投稿にも具体的な任務を書かれていない。


「あの一があれば十まで吹けるエンジェでも、この程度の情報しか出せない……あのガイアリングは極秘の中の極秘に違いない。絶対、やばいところですよ!」


「それから、そのクラブで、エンジェの誘いで実験体となった人もいたの。このヤンキーみたいな人です!」


 あかりはある青紫の髪で半分の顔を隠した若い男のプロフィールを呼び出した。


「もともと毎日十回以上投稿する人だけど、ガイアリングのテストに参加してから、もう二か月も投稿しなかった。あいつの万代家での活動履歴も全部なくなって、存在そのものが消えたように……」


あかりは休むこともなく、次のファイルを呼び出した。


「それに、ガイアリングテストの任務を受ける時、この同意書もサインするの!」


 リカはそれを読んだことがある。


 同意書の内容は責任免除に関するもの。


 テストに参加するものはガイアリングがまだテスト段階のことを了承した上でテストに協力する。テストの途中、完了後、どんな問題が出ていても自己責任。ガイアリングの担当側に責任を問わないことを承諾する。


「こんなに用意周到、絶対罠です!異世界のことと同じ、お姉ちゃんを陥れようと……」


「あかり」


 リカは落ち着いた声であかり名前を呼んで、その小さな頭を撫でた。


「私は今回行かなくて、次があるわ。もうあいつらの茶番劇に付き合う暇はないの。今回の『仕掛け』を最後にするために、私は行く必要があるんだ」

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