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1402 二つの任務

今回のお茶会のメイン議題はリカとマサルの任務報告。


二人がそれぞれ完成したばかりのS級の任務:


「レア人材――渡海イズル――の確保」 、


「異能力強化施設『ガイアリング』の建設」について、


七龍頭に報告し、質問に答える。


「イズルの確保」について、リカは要領よくイズルの能力、背景、本人の意向についての考察を述べた。話した内容は資料のままで、特に追加がなかった。


「ご苦労様だった。彼と対面する日を楽しみにしている」


白先生は認めたようにうなずいて、リカの報告を終わらせた。


次はマサルの番。


マサルはパソコンで「ガイアリング」の内部環境、操作方法など映像を見せながら説明をした。


映像が終わったら、実験のレポートを展開して、数字を報告する。


「『単純強化実験』について、1000人の中で、約85%の人の能力は強化されました。強化の幅は人それぞれ違いますが、予測していた数字を上回りました」


「『復刻実験』について、まず、能力レベルでのまとめ結果を報告します。レベル4以下の復刻成功率は60%以上、レベル4~レベル7の成功率は15%、レベル8~レベル10の成功率は2.5%でした。レベル11以上の『サンプル』が不足しているため、実験を行いませんでした」


「また、種類別のまとめ結果によると、身体強化系の復刻成功率は77%、道具使い系の成功率は62%、自然操縦系は5%、精神干渉系は3%、秘術系のサンプルは3種類しかなくて、成功率はわずか0.5%でした。」


「いいんじゃないですか。成功例があれば、確率の問題よ。基数が増えれば解決できます」


シャングリは満足そうにうなずいた。


ほかの人も異議なしの表情だった。


「……」


でも、リカは納得できない。


マサルは成功率だけを報告し、失敗した人の状況に触れなった。


武内からもらった情報によると、強化失敗した人たちの身でさまざまな副作用が起こった。


心身衰弱など軽い症状で済む人もいたが、意識を失い、身体障碍、精神障害になる人もいた。


強化成功の人の中でも、ある程度の異常症状が現れた。


なのに、七龍頭の座に座っている人たちにとって、成功率があれば十分。失敗の結果は彼らが背負うものではない。


十分な餌を出せば、喜んで自分の命を売る出し、基数となる人を集められる。




「秘術系のサンプルは三つしかないのか?」


マサルの報告を聞き終わって、落合は眉を吊り上げた。


「申し訳ありません。実験に参加できる秘術系異能力者は三人しかいませんでした……ほかの人にも協力要請を出しましたが、仕事の関係で、みんなしばらく参加できません」


「そういえば、あの渡海イズルの能力はどの種類に入るのぉ。秘術系でいいよな」


「!」


落合の言いたいことに気づいて、リカはさっそく返事をした。


「分かりません。彼の能力についてまだ情報不足です。能力の原理も分からないので、種類を判別できません」


「いや、原理はどうでもいい」


落合は手を振って、陰気に笑いながら話を進める。


「要するに、それは家が必要とするレアな力だ。早くサンプルを取って、ほかの人に復刻すべきじゃないか。いっそう、これを渡海イズルの初任務にしよう」


「……」


「こちらは問題ございません。『ガイアリング』の改善のためにも、もっと多くのサンプルが必要です――」


マサルはさりげなく落合の提案に賛同したが、彼の話がまだ落着していないうちに、リカから反論があった。


「私は反対します。レアな力こそ、慎重に取り扱うべきです。『ガイアリング』は完成したばかり、安全性はまだ不十分と思います。成功例がありますが、失敗例も多くあるのでしょう。失敗例に関する研究分析はまだありません。レアな人材を実験に投入するとしたら、彼の身の安全を確保する必要があります。でなければ、逆に貴重な人材を失うかもしれません」


「!」


成果が疑われて、マサルは不満そうにとリカを睨んだ。


「サンプル採取に参加した人は、全員異常なし。データで証明されたことです」


マサルの反発に、リカは一歩も引かず、更に追い詰めた。


「現時点で異常がないかもしれないけど、これからも異常が出ない保証はありません。採取サンプルになった人はわずか150人、統計学上で必要とする1500の十分の一です。この人数の中でも、サンプル採取後に体の調子が崩れた人がいました。その現象と施設との関係性はまだ不明で、施設の安全性にまだ懸念があると思います」


「おまえ……!」


マサルは驚きと怒りで言葉に詰まった。


リカは彼とそれほど親しくないが、彼と対立したこともなかった。リカ社交能力のない不愛想な石頭だとずっと思っていた。


なぜ彼が成果を上げようとする時に、いきなり口上手になったのか?


「ほうぉ。リカの話も一理がある」


落合は焦らずに、ゆっくりとリカに聞き返した。


「じゃあ、安全性を上げるために、何か提案があるのかね?」


「……」


リカは知っている。この流れだと、「正解」は「サンプルを増やし、もっと実験をする」ことだ。


だが、その提案はもっと多くの人に危険をもたらす。


どうしても、そのような悪提案をしたくない。


リカがためらうと、マサルは話の続きを受け取った。


「実は、失敗例の観察から問題の可能性に気づいて、すでに手を打っています。すべての参加者に観察者をつけて、今後の変化にフォローしています。今朝、改めて実験参加者の募集を出しました。安全性についての懸念はそのうち、事実によって打ち消されるでしょう」


「さすがマサルくん、仕事が早いね」


シャングリはこのような気の利く若者にかなり好感を持っている。にっこりとマサルを誉めた。


落合もまたマサルの肩を持つ。


「私はマサルくんを信じるよ。リカはまだ心配するなら、実際に行ってみたらどうだ?」


「分かりました。行ってみます」


リカは迷いなく承諾した。


マサルは不服な目でリカを睨んで、困りそうに七龍頭に訴える。


「ですが、『ガイアリング』の機密レベルにより、直関係者以外の人が入れないのが規定です。継承人順位1位とはいえ、リカさんはそこを考察する権力がないです」


「考察名義で行きません。実験参加者を募集しているんでしょ。私は、テスター・実験体として、『ガイアリング』に入ります」


「!!」


その発言に驚かされ、マサルはやっとリカと目を合わせた。


すると、心臓の鼓動が制御できないように加速し始めた。


初めて、リカから威圧を感じた。


リカは柔軟性がない。エンジェみたいに自分のメンツに配慮しないのは分かっている。


だが、二人は一応「姉弟」で、立場的に対立したことがない。


リカの「敵」になった体験は、マサルにとってまったく始めてだ。


マサルはリカの「異世界任務」を破壊したことに多少罪悪感を持っているが、さほど気にしなかった。


彼からみれば、リカは相変わらず継承人の座に座っていて、損失がなかった。異世界の件はリカにとって、何億を持つ人間が100円を落としたようなことだった。


だから疑問だ。


そんな「ちっぽけなこと」で根を持って、家の重要なプロジェクトで自分と張り合って、何になる?


それとも、異世界の件ではなく、あの渡海イズルという男のためか……?



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