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0902 下手芝居の終わり

中年女性は視線から消えたら、リーダーはネクタイを整えて、引き締めた顔でイズルに説明した。


「彼女は通報人です。ここの消防設備に重大な問題があると訴えてきました。」


「異常者の話は信じられないと思いますが?」


イズルは淡々と返した。


「さっきまで異常はありませんでした。CEOさんの後ろの人を見てからいきなりおかしくなったから、問題があるのはその人かも知れませんね」


リーダーはドヤ顔でリカに目線を投げた。


「どのみち、問題はこちらにあると言いたいようですね」


見られたのは自分ではないけど、イズルはそのドヤ顔に嫌悪感を覚えた。


「ところで、皆さんはどちらの所属ですか?本当に問題が検出されたら、署の方に感謝状を贈りたいと思います」


リーダーはズボンのポケットから手帳を出して、チラッとイズルに見せた。


相手は見えたかどうかも分からないのに、これでいいだろと言わんばかりに顎を上げた。


「通報によると、夜中にこの工場から爆竹のような音がよく聞こえるだそうで、たまに、煙も出ているようです」


イズルは手帳のことに追わず、リーダーの腰のベルトにかけている拳銃を覗いた。


そして、何かが分かったように軽く笑った。


「なるほど。それは機械のテストと機密文書の破棄処理だと思います。そのような些細なことでご迷惑をかけまして、本当に申し訳ございません」


「念のため、実際に見させてもらいましょう。また通報が出たらこちらも困るし」


「そうですね。ここで白黒をつけないと、これから何があったら面倒ですね」


イズルはそう言いながら向きを変えた。


「案内しますから、警察の皆さんはついてきてください」


歩き出す前に、イズルは一度振り返って軌跡たちに微笑みをかけた。


「通行人の皆さん、もう帰っていいですよ」


軌跡三人は警察たちの疑わしい目線の中でつまらないチャラい話をしながら工場を離れた。




イズルの案内で、残った人たちは一つの倉庫に入った。


半分くらい空いている倉庫の中で、何人の作業員が荷物を運んでいる。


イズルの指示に従って、萩さんは作業員たちを連れて外に出た。




イズルはリカと9人の警察を一面の壁の前に案内した。


壁に掛けている電気ボックスみたいな箱を開けて、その中の何本のブレーカーを操作した。


すると、空いている壁のブロックはパズルのように移動し始めて、やがて一つの隠し扉が現れた。


扉の向こうにはせいぜ6、7人が入れる小型エレベーター。


目を張った警察たちに、イズルは意味深そうに言った。


「重要な安全設備ですので大事に隠されています。点検するならわたしについてきてください。エレベーターが狭いから、この人数だと、半分半分分けて降りましょう」


「いいえ。点検するなら、この人数はいらない。入れない人はここに残ります」


リーダーは慎重そうに半歩下がって、後にいる四人に命令を出す。


「念のため、お前たち四人はここに残れ」


イズルは密かに笑みを浮かべて、リカを連れて先にエレベーターに入った。


「もうちょっとこっちにおいで、後五人も入るから」


イズルは自分の前を指さしてリカを招いた。


「……」


何を企んでいるのか分からないけど、リカはとりあえず言われた通り、背中をもっとイズルに近づけた。




警察たちが乗り込んだら、イズルは扉を締めて、下へのボタンを押す。


数秒後、エレベーターは下の階に到着した。


扉が開いたら、一面の暗闇が広がる。


イズルは先にエレベーターを出て、壁にあるスイッチをオンした。


明るいと言えないライトがつけられた。


ほかの人は朧な光を借りて、この部屋の様子を見まわす。


ここも倉庫のようだ。


広さは上の倉庫とあまり変わらない。


黒い金属の棚が列になって、倉庫の半分を埋めている。


棚の上に、たくさんの段ボールが隙間なく詰められている。


イズルは一番近い棚の間に入って、ある段ボールから銀色の拳銃を取り出した。


「!!」


それを見た警察たちはすぐ自分の拳銃で構えた。


「大丈夫、弾が入っていません」


イズルは緊張する警察たちに笑顔を見せて、銀色の拳銃をリーダーに投げた。


「これは……?!」


リーダーは拳銃を手にしてよく見てみたら、目がキラっと光った。


「点検したい設備は、これのことでしょ?」


イズルは悠々と警察たちの前に戻る。


「お前……」


「これくらいのことも知らなかったら、神農グループのCEO


に務まれません」


イズルは視線を警察たちの持っている拳銃に移す。


「そして、皆さんが持っているものは、うちが五年前に万代家に提供したものです。去年まで毎年新しいものを提供していますが、皆さんは五年前のものを使っているということは……万代家での仕事はそれほど順調じゃないということですね」


「!!」


痛いところが突っ込まれて、「警察」たちはざわついた。


イズルは笑顔のままで続ける。


「失礼なことを言ってしまいましたが、悪い意図はありません。言いたいのは、せっかく来ていただいたから、敵より友達になってほしいということです」


「友達……?」


リーダーを始めて、「警察」たちは戸惑った。


「わたし的に、これからも万代家とよい関係…いいえ、更に親しい関係になりたいと思います。ですから、敵より、友達を作ったほうが自分にも有利と考えています」


イズルの話の意味を理解して、万代家の「警察」たちの緊張も少し解いた。


「ここにあるものから、皆さんは一人ずつ一つや二つを選んでいただいて、そのまま持ち帰ってください。ほかの人に聞かれたら、わたしが勝手に押し付けたプレゼントと言っていいです。何があっても、あくまでわたしの問題で、皆さんと関係ありません」


「おおぉ――」


最新の装備をタダでもらえる美味しい話だから、誰かが我慢できずに興奮の声を上げた。


「拳銃以外にもいろいろありますから、ごゆっくり選んでください。終わりましたら、どこかいい場所で夕食をご馳走させてください。今日は、本当にお疲れ様でした」


イズルの態度は謙遜で、明らかに自分たちの機嫌を取ろうとしている。


警察たちはてっきり威圧が効いたと思い込んで、かなりいい気になった。我も我もと棚の間に入って、お宝さがしに夢中した。




突然に、「ガラン」とでかい音と共に、金属棚の前に大きな檻が落ちた。


「?!!」


棚の外側に立っているリーダーは反応早く、間一髪に檻から逃げられたが、すぐイズルに頸を掴まれた。


「なっ……!!」


質問をする間を与えず、イズルは容赦なくリーダーの頭を床にぶつける。


「な、何をするんだ!!」


檻に閉じ込められた警察たちは状況に気付いた時に、リーダーはもう気絶した。


警察たちはさっそく拳銃でイズルを狙ったが、イズルはリーダーを盾にして、自分とリカの前に立たせた。


「さあ、撃つんだ。ここの防音はとてもいいから、シューティングの練習に最適だ」


イズルは愉快しそうに良い子のマスクを捨てて、「邪悪」な本性を見せた。


「クッ……卑怯者!」


「それでも男か!」


一本やられた警察たちは罵声を上げた。


イズルはそれに気にしなく、挑発し続ける。


「力が尽きるまで叫ぶがいい。ここは携帯の信号も入れない。誰も助けにこない」


ここまで言ったら、イズルはふっと気付いた。


自分はリカが万代家の洞窟で話したセリフをリピートしたようだ。


皮肉だが、ちょっとおもしろい偶然でもある。


ずっと傍観者でいるリカに一目を見て、また警察たちに向けた。


「誰の犬か分からないが、オレの領地を荒らしたことはただで済まない。主人が迎えにこなければ、死ぬまでここで叫ぶがいい」




目から険悪な光を放ったイズルを見たら、リカは眉をひそめて、軽く唇を噛んだ。


今のイズルは好青年CEOではないが、洞窟にいる彼とも違う。また知らない誰かになったようだ。




イズルはリーダーをエレベーターに入れて、リカと一緒に上の倉庫に戻った。


上に残した四人の「警察」はすでに工場のセキュリティーチームに抑えられた。


まもなく、狂ったように叫んだ中年女性と彼女を外に連れ出した二人の警察も確保済みと軌跡から連絡が入った。




工場の外、二人の警察と中年女性は縛られて、「パトカー」に抑えられた。


パトカーの外で、軌跡はイズルに報告している。


パトカーの中で、奇愛は拳銃で警察たちの頭を指している。


「誰の指図であたしのデートを邪魔したの?さっさと白状しろ!でないと命はない!」


「な、なんのことだ……誰がデートなんかを……」


警察は怯えながらも、奇愛の話に納得できなかった。


「邪魔したと言ったら邪魔したのよ!馬に蹴られて死ね!」


奇愛は拳銃で警察たちの頭を何回も叩いた



イズルは軌跡からの報告を聞いて、満足そうに微笑んだ。


「萩さんはそっちに行くから警察たちを彼に渡せばいい。軌跡はあの喚くおばさんをうちのマンションに連れてくれ。」


細い息をしているリーダーを見て、イズルは期待しそうな口調で呟いた。


「この下手な芝居の目的を、じっくり聞かせてもらおう」

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