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2103 告白

中庭でイズルの姿を探す最中に、いきなり、どこから人影が飛び出して、彼女を路地に引きずった。


リカは反射的にその人の頸を掴もうとしたら、逆に手首が掴まれた。


「オレだ!」


「!」


振り向いたら、イズルの顔が目の前にあった。


「ふー……なるほど、本当に頸が飛ばされる危険があるんだ……」


「なんのこと?」


イズルの話の意味が分からないけど、彼の無事を確認したので、リカはほっとした。


「……大丈夫?炎帝一族の人に会ったでしょ?何か困るようなことを言われなかった?」


「別に、困るほどのことじゃない。おかげで、状況整理ができた」


イズルは安定な声でリカに答えた。


「体の具合は?」


「それは……ちょっときてくれる?」


今度は言いづらいように、イズルは視線を逸らした。


そのはっきりしない態度に、リカの心配がまた増えた。




イズルはリカを無人の休憩室に案内して、ドアにロックをかけた。


「今日のパーティー、万代家の人も来たようだ。念のため、先ほどこの休憩室を調べた。監視カメラや盗聴器などがない。話をするならっ……!」


話がまだ終わっていないのに、イズルはいきなり胸を掴んで、ドンと背中を壁に預けた。


「どうしたの?異能力の反噬!?」


リカはイズルを支えようとしたが、手を伸ばした途端にイズルに手首を掴まれた。


「違う、お前のせいだ……」


イズルはわざと苦しそうな声を絞って、リカの手を自分の心臓のところに当てる。


「私のせい!?」


当然、リカは驚いた。


その隙に、イズルはそっと頭を上げて、自然にリカを胸の前に引き寄せた。


お互いの呼吸を感じられる近距離で、イズルはリカに鋭い目線と皮肉そうな笑顔を見せた。


「オレを、いつまで弄ぶつもり?」


「!?」


その見たことのない歪んだ笑顔を見ると、リカはなぜか胸が小さな棘に刺されたような痛みを感じた。


「あなたを弄ぶ……?なんの話?」


「さっき、言っただろ?」


イズルは受信機を出した。


「オレのことが好きって。それはどういうこと?」


「……」


ドキッと、リカははっきりと自分の心臓の鼓動を聞いた。


一時も早く危険を伝えたいから、イズルに音声を転送して、そのまま話を続けていた。


「好き」の話が出ると思わなかった。


イズルに改めて聞かれるとも思わなかった。


どこかまずそうな気がして、リカは目を逸らした。


「別に深い意味はない。気にしなくていい」


それに対して、イズルの表情は更に厳しくなった。


「どうしても気にすると言ったら?あいつを追い払たいのがわかる。だけど、オレはそんな言い訳が気に入らない。道具人間にされたとしか思えない」


「道具にするつもりは……」


「ないなら答えてくれ――あの言葉は本当か?」


イズルは先走りにリカの話を補完して、さらに質問を投げた。


「!」


リカはふっと気付いた。


体調が崩れたのが嘘、イズルは「好きの話」を聞くためにきっかけを作っただけ。


今から身を引き戻そうとしたら、もう完全に抑えられて、動けなくなった。


「答えてくれないと、オレの体調は治らないよ」


イズルはいたずら子のように口元を上げた。


「……」




リカの心臓の鼓動の速さは、すでにその答えを語っている。


リカは知っている。自分は良く考え事を胸に抑えているが、口から出すことを滅多に偽らない。


それに、「イズルが好き」と認めるのは難事ではなかった。


マサルを黙らせるために、頭の中でこれまでのイズルとのやり取りを振り返ったら、自然に気付いた。


イズルを思うと、胸の中に暖かい流れを感じ、花が咲くようなやさしい感触が広がる。あの日、イズルに問い詰められた時の憂鬱と涙の答えも見つけた。


それは、恐らくみんなが言う「好き」の感情だ。




でも、イズルに改めて聞かれたら、リカは何処から警告の声を聴いた。


これ以上、その感情を知ってはいけない。


理性で知っていることと感情で知っていることの重量級が違う。


マサルと話す時に、理性で答えられるが、イズルの前では、理性が感情に上回られそう。


イズルとのパートナー関係はあくまで彼を守るため、そして、異世界に行くためのもの。


私情を挟みすぎると、お互いにも迷惑をかける。


否定が一番速い完結方法だが、自分の気持ちに嘘をつくことに抵抗感があった。


矛盾だと思いながらも、リカは心臓の鼓動を抑えて、顔を引き締めた。




「好きかどうか、それは私の気持ち、あなたと関係ないことよ」


「オレが好きだと言ったのに、オレに関係ないって?」


イズルは不可解な表情になった。


「……どんな脳回路しているんだ」


「……」


その明らかに褒め言葉ではないコメントに、リカは睨みを返した。


「不服でも言う。リカの思考回路は異常だ」


「!」


いつものイズルなら、さっそく引いてリカの機嫌取ろうとするだろうが、今回は譲る気がない。


緑縁との会話で彼はもう気付いた。リカの気持ちが難解の原因は、思考回路だけではない。


深く隠されているから。


徹底的に追い詰めないとはっきり分からない。


この間、彼女の気持ちを追い詰めようとしたら、泣かせたという意外な状況があったせいで慌てて撤収した。


でも今回はもう引かない。


リカの口から「好き」という言葉を聞いたからだ。


こんな状況で彼女を「見逃し」たら、これからは更に追い詰めづらいだろう。


それに、イズルは自分の勘と判断力を信じる。


彼女の言った「好き」は本当だ。


出会った当初、ナイフで自分の頸に当てるリカは、今は自然に自分の腕の中にいる。


自分の一言一行に様々な表情や反応を見せる。




「本当だったら、相手の気持ちを知りたいのは普通だ。嘘だったら、トラブルを回避するために、早目に誤解を解くだろう。どのみち、返事を拒否することはない。それとも、やっぱりオレを弄ぶつもりなのか?」


説教っぽいっセリフを吐きながら、イズルは挑発的な笑顔を見せた。


「それは普通の場合。私はもうすぐあの異世界に行くから、その話はもう気になくていい」


リカも態度を固めた。


「どうしても答えてもらいたいと言ったら?」


「……」


リカはムッとして採点スマホを出した。


イズルは手が早く、スマホを奪ってソファに投げた。


そして、身を翻してリカを壁に押し付けた。


「!」


「採点ゲームに頼って逃げるなんて、いつものリカらしくないな」


イズルはリカ目をまっすぐ見て、意味深そうに微笑んだ。


「リカは嘘をつかないから、途方に暮れても否定しないということは、十中八九、答えは『本当』だろ」


「!」


リカの心臓はまた大きく鼓動した。


「それに、あえて答えしないのは、異世界に行くためだけじゃない。あなたは、まだ怖がっているだろう」


「……どういう意味?」


マサルから「孤独が怖い」云々話を聞いたばかり、イズルから似たようなものを聞いて、リカは思わず嫌味を覚えた。


「あのマサルが言ってた孤独が怖いなんかの話じゃない」


リカの不機嫌を読みとったのか、イズルはさっそく話しをはっきりした。


「リカは、人と親密な関係を作るのが怖がっていると思う」


「!」


リカは何かがぴったりと心臓に打ったような気がした。


「リカは昔の仲間たちのダメところを知っていても、奴らを仲間として受け入れた。そのせいで、後悔する結果となった。親しかった奴らに裏切られ、ほかの仲間まで失って、誰だって人生観が崩壊する。だから、あなたは人と再び信頼関係、そしてそれ以上の関係を作ることが怖くなった」


至近距離でイズルの体温が伝わってくる。


リカは目を潰して、胸の底から湧いてくる情緒を必死に抑えた。


「……否定はしない。だから、あなたのことも信じていなかった」


「過去形だね」


リカの渋い話から些細なポイントを掴んで、イズルは逆に嬉しくなった。


「もう気づいただろ?今のリカはオレを拒絶していない。こうして手を握られても、腰を掴まれても、壁ドンされても――リカ、オレは、すでにあなたの領域に入った」


そう言いながら、イズルは二人の距離を更に縮めた。


両手で花びらを拾うように、リカの顔を包む。


「……っ!」


リカが反応する前に、イズルは彼女の耳元で羽が落ちるような優しい声でと囁いた。


「好きだ」


「!!」


「オレはリカが好きだ」


もう一度、確実に。


「リカが迷いがあっても、オレにはない。リカの『好き』が言い訳だとしても、オレの『好き』は本物だ。ずっと前から、あなたのことが『好き』になった」



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