(2)
激しい雨が降っていた。昼頃に降り始め、止む気配を見せないどころか、勢いを増し続けて。彼女にこの雨の中帰るなんて大変でしょうと言われても、なんとも思わなかったほど、私は全く気にしていなかったのだが。平気ですと答える私に、彼女は車で送ってあげようと告げた。私はここでも、まだ幸運だというくらいにしか思わなかった。車のことや天気、季節のこと、彼女や私の生活、習慣のことを話していても、普段は後部座席にしか乗せらないせいで、助手席でシートベルトを締めるという経験やそこからの眺めの物珍しさに、ただわくわくするばかりだった。
フロントガラスに大きな雨粒が絶え間なく音を立ててぶつかり、それをワイパーがきゅうくつな摩擦を響かせながらひっきりなしにかき分ける。その向こう側には、にじんだ街灯や信号の明かりや車のライトが、まだほんのりと明るく青みがかった空の下に並んでいた。そして、私の家へ向かう道とは違う方へと進んでいく。
彼女は、私の両親の帰りがいつも遅く、きっとまだ家には誰もいないということを知って、自分の家、いや部屋に来るように誘った。だから、私は彼女の部屋に行った。
それはおかしなことだったのか? きっとそうなのだろう。そのときの私も、問題の影を感じていなかったわけではない。しかしそれはあくまで影でしかなかったし、そんな問題が起こりうるということ、あるいは、問題とされるような場合が存在するのだということを、知っていなかった。だから私は何も疑わず、懸念も不安も期待もなく、彼女の誘いに乗ったのだった。
彼女の部屋を訪れ、菓子でもてなされたその日、私は彼女と初めてキスをした。私にとっては初めての、彼女にとっては初めてではない、私たちにとっては初めての。
彼女がどうやってそれを果たしたのかを覚えてはいないし、おそらく説明できるような順序や段階の先にあったわけでもなかったと思う。おそらくは家に送ってもらって車から降りようとしたとき、私を振り向かせて彼女が唇を差し出したのだろう。
彼女は笑っていた。微笑と笑顔のちょうど中間に位置するような、穏やかでありながら感情をはっきりと示し、ほんの少しだけ悲しさのようなものが含まれている表情で。
私は驚くだけで、何が起こったのかを理解もできなかった。ただ彼女の最後の言葉、これは内緒だよという言葉だけが耳に残っていた。彼女の唇や吐息の暖かさや感触が胸を締め付け心を溶かし始めるのは、それから何時間も経ってからだった。
以来、私にとっての彼女は変わった。彼女のあらゆるところが重みや温度を持ち始め、それを感じ取るということを通じて、私の体や心に直接作用し始めた。例えばその頬や胸の丸い膨らみは、あの唇のように柔らかくて暖かいのだという思いは、明晰な夢のように、現実の経験や記憶と区別できないほど強く、心の内面に刻まれていたのだ。
私の生活にあった一人でいる時間、つまり空白は、彼女との時間に費やされるようになった。何度も彼女の部屋に行き、そのたびに菓子をごちそうされ、決まってキスをした。
いつも彼女から誘った。私は拒まなかったし、求めもしなかった。その必要もなく、私が望むようにしてくれたからだ。本当は、二回目のキスを目前にして初めて感じた胸の高鳴りや痛みのない心の苦痛を決して忘れられなかった私は、彼女の唇の感触とそれがもたらす甘美な憂いのことばかりを考え、いつも次の機会を心の底から待ち望んでいた。
そして、両親には友人と遊びに行くと嘘をついて初めて休日に彼女と出かけた日、人目につかないところに停めた彼女の車の中で、私たちはそれまでで一番長く、深いキスをした。彼女が私に覆い被さるようにして。口が離されると、彼女はほっとしたようにぼんやりとした顔をしていた。しかしきょとんといくらか驚いた様子を示し、そして、ゆっくりと笑顔に変わっていった。目を細め、しかし私の目を、あるいはその向こう側までを覗き込むようにして。思えば、それは彼女の欲望が果たされようとしていることの悦びを示していたのだろう。
私は彼女との接触がもたらした身体的な反応の意味も分からず、胸、あるいは心の痛みに戸惑っていた。そして頭はのぼせたように惚けて、何の思考もできなくなっていた。
私は何かを求めていた。しかし、それが何なのか、そのときの私には分からなかったし、知ってすらいなかったのだ。だがもちろん、彼女は知っていた。
折り重なったような状態のまま、彼女は私のズボンを下着ごと脱がし、彼女は自分の下着をずり下ろした。そしてスカートをまくり上げ、私にそれをはっきりと見せながら、あるいは見せつけながら、私の熱を彼女の体に突き刺させたのだった。
経験したことのない官能を制御も我慢もできるはずもなく、ほとんど時間をかけずに私は熱を吐き出した。体の芯と心が締め付けられるような感覚は、甘美だと感じる余裕も持てないほど甘美で、心臓が溶け出したように、それこそが自分の渇望そのものだったのだと気づくだけで私を精一杯にさせた。
自分のしていることの意味も分からないまま行為は続き、三回目を果たしたときには疲れ果てていた。彼女が車の中の後始末をしている間、太陽が傾こうとし始めた青空の下の涼やかな空気の中に私はいたが、上気した顔や体が持った熱、しみ出る余韻は、いつまでも冷めず、収まらなかった。
ようやく自分が何か恐ろしいことに手を出したのではないかとうろたえ始めた私に、いつの間にか隣に来た彼女が、
――ごめんなさい。
と告げたのを覚えている。穏やかに微笑みながら。それはつまり、私を自分の欲望に引きずり込んだことについて謝罪するという以上に、私たちがすでに、一種の共謀関係にあるのだと示そうとしていたのだろう。
彼女と見つめ合ったあまりにも長い時間のうちに、私は確かに自分が異常なこと、「いけないこと」に踏み込んでいるのだと悟った。しかし、それはせいぜい子供でいる間にはふつうは許されず、大人にしか許されない領域に踏み入れているというくらいの認識でしかなかった。私と彼女の間には、本当に貴重で重大で尊いものがあり、たまたまこの行為で表現されたに過ぎないのだから、と。
こんな私の思いは、私が味わった、まだこのときには快楽として認識すらできていなかったほどに自分の奥深くまで達した快楽について、ただ正当化するための幼稚な理屈だったのだと考えることもできるだろう。実際、そう示そうとした人もいた。