第9話 最後の特訓
「なれるよ、アリスタ君なら。」
僕の答えにそう答えたアルテミアさん。その声には優しさと強さがあって僕も少し自信が持てた。
「さて、帰ろうか。もう夕方になったしね。」
僕からそっと離れてからアルテミアさんは帰る為の紋章を描き始めた。
そして出来上がった紋章に僕らは飛び込んで行く。緑色の煌めきが体を包み込んで行く。
〜
アルテミアさんの家に戻ってきた僕は部屋に置かれた椅子に座った。
「さてと、アリスタ君。気分はもう大丈夫かな?」
「はい、ごめんなさい 少し取り乱しちゃって。」
「誰だって最初はそうなっちゃうものだよ歪みから現れる化け物に怯える人は何人もいるからね。」
「でもアリスタ君は戦いが終わる最後まで泣かなかった。それはまた一つの強さなんだよ、それを忘れないでね。」
僕は改めて強さを履き違えていたかもしれない。ただ力持ちで腕っ節が強い事それとも頭が良くて計算高い事。
どれも本当の強さとは違う、多分本当の強さは自分の心の中にあるのかもしれない。
「分かりました。その言葉胸の奥に刻みます!」
「そう言われたら少し照れるなぁ。」
僕の言葉を聞いたアルテミアさんが少し顔を赤らめたのが少し可愛かった。
僕はもっとそんな彼女の強さに近づける様に頑張らなければいけない。
「もう外が暗くなったけど今日も特訓に付き合ってもらえますか?」
僕の問いに対してアルテミアさんは柔らかく微笑み返した。
「勿論!」
〜
「さてと、今日の特訓は昨日と同じ詠唱魔法の練習だよ。もうあたりも暗いからアリスタ君には魔法で光を出してもらおうかな。」
アルテミアさんが杖を僕に手渡してくれた。僕はその杖で紋章を描いてイメージを集中させる眩い光、夕暮れの太陽の様な白い光。
「ライトニング!!」
紋章が緑色に煌めきと共に眩い光が現れた
その白い光が物凄い速さで放たれ周りにあった物を次々に貫いていく。
そして一通り破壊し尽くした後その光は九十度角度を変えてアルテミアさんの家の方に飛んで行った。
「なんてこった!」
アルテミアさんは慌てて防御魔法を展開したがそれよりも早く光は家に突っ込んで屋根の一部を消し飛ばした。
「アリスタ君、私は何というかもう少し大人しめな光を想像してたんだけど、まさかレーザービームを打つとは…。」
唖然とした表情でこちらを見るアルテミアさん。申し訳なさが溢れ出す。
「ごめんなさい!その悪気は無かったんです!」
「まぁ失敗は誰にでもあるものだ、ただ今日の特訓は中断しよう。家の屋根を直さなきゃだからね。」
アルテミアさんの腕がプルプル震えている、誰だって家を壊されたら怒る、今回のも完全に僕のやらかしだ。
「はい…。」
こうしてこの後僕は自分でアルテミアさんから借りた工具を使って壊した部分を修理する事となった。
それこそ魔法で直せばいいって話だけどアルテミアさんから
「自分で壊したものは責任を持って自分で直しなさい。」
と言われたので今こうやって治しているのだ。
どうやら彼女の様な魔法使いへの道はまだまだ僕には遠いみたいだ。
いつも読んでくださりありがとうございます。
なんやかんやでこの作品もとうとう9話まで進む事ができました。
これもひとえに読んでくださる方々のおかげです!
本当にありがとうございます!