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魔法使いの行方  作者: 腐れミカン
魔鉱山編
60/75

第60話 おやすみなさい。






あの後僕と緋色君はCランクの寮に戻る事にして、フラム、マリア、霧ヶ谷の三人は保健室に残り王城はAランクの寮に戻るので帰り道のと途中で別れる事になった。


「それではワタクシはここら辺で失礼しますぞ。」


ちょうど学生寮の別れる道でこちらに手を振ってきた王城。


僕らもそれに応えて軽く振り返した。今回の一件で王城が来たのは完全にイレギュラーだったけど結果的に一番活躍したのはその彼なのかもしれない。


「おう、またな〜。」


緋色君が遠ざかる王城に向けてそう言い終えた後に続けて僕も言った。


「また明日〜。」


僕らがそう声をかけると王城はまた手をぶり返してきた。


その時に王城の後ろに薄らと見えたAランクの寮はなんとも綺麗で大きく豪華で上品な建物だったので少し羨ましい気分になった。


例えるならあの寮は王様が住む様なお城みたいな建物だろう。だが僕らの帰る寮はお化け屋敷みたいな物である。


「なんか差が凄いよね。」


帰りながら僕はそう緋色君に問いかけた。すると不思議そうな顔でこちらを向いてきた緋色君。


「何のだ?」


そう僕に問いかけてきた彼に僕は思っていた事を伝えた。


「寮の外見だよ、僕らのに比べて王城の方は凄いじゃん。」


その言葉を聞いた緋色君は溜息を一つ吐いてから呆れた様に答えた。


「おいおい俺らのだって凄いだろ?駄目な方で…。」


「あははは…。」


彼の言葉に思わず乾いた笑いが出てしまった。


Aランクの寮を見てしまったからか自分のいるCランクの寮のオンボロさに尚更ガッカリしてしまったのかもしれない。


同じ屋根の下で学ぶ生徒同士だというのに何故ここまで差が出たのだろうか…。


今度マリアに頼んで外装だけでもどうにかして貰おうかな…なんて思ったけど、オルサーにあんな酷い事をされて魔法を無理矢理使わされた彼女に頼むのは何か気が引ける。


そんな風に考えていると僕らはもうCランクの寮の玄関まで来ていた。


「なんか帰ってきた感じするわ。」


緋色君の言葉に共感した僕はすぐに言葉を返した。本当にとても一日が長かった気がする。


「だよね、そんなに時間が経っている訳じゃ無いのにすっごい懐かしい気分だよ。」


「だよなぁ。」


そんな感じに僕らは軽い会話をしながら玄関を潜って部屋まで戻ってきた。


部屋に戻ってから緋色君は上着を脱いで僕に声をかけてきた。


「じゃあ俺、先風呂入るわ。」


「分かった。」


先に緋色君が風呂に入ってる間、僕は部屋にあるクローゼットの中のパジャマに着替えて代わりに帽子と杖を中に置いた。


その時に改めて帽子を見てアルテミアさんの事を思い出した。あの時に助けてもらえなかったらどうなっていたのだろうと思うと少し怖い。


それと杖の方は今回かなり無茶な使い方をしたからか少しお札が剥がれかけている。今度ダスト校長に会った時に直してもらおうかな。


そんな事を考えていると洗面所の方から緋色君が僕に声をかけてきた。


「風呂空いたぜ。」


タオルを頭に巻いたパジャマ姿の緋色君が、 出てきたので、僕も洗面所に足を踏み入れた。


タオルを頭の上に乗せてお風呂の湯船に浸かって、肩の疲れをスッキリさせてから、頭をシャンプーで洗って体をボディーソープで軽く流した。


その後に僕はお風呂から出て頭と体をしっかりとタオルで拭いてから、二段ベッドの上に登って柔らかい布団の中に体を入れた。


一方で緋色君は少しの間外に出て空を眺めていたけど、すぐに戻ってきて布団に入った。


そして今、僕と緋色君の二人は部屋の二段ベットに横たわっている。その下の方から疲れた声で緋色君が話しかけてきた。


「なんか色々あり過ぎて頭がパンクしそうだよな。マリアの事もだけど魔鉱山になんであんなのがあったのかとかさ、そんな事を色々考えてると更に疲れてきてさ…。」


結局の所、僕らはマリアを助けはしたものの何でオルサーに誘拐されたのかが具体的には分からずじまいだ。オルサー本人は神の因子だとか、魔法がどうだとか、融合思念体だとか、言っていた様な気がする。


だけどそれ以上にあの最期のインパクトが強すぎてあんまり印象に残っていない。結局の所マリアの魔法を利用して何をしたかったんだろうか。


それが何なのか気になって聞こうかと思ったけど、彼女のトラウマを刺激してしまうかもしれないから迂闊には聞けない。


今回の一件で僕は好奇心で人を傷つける様な人になりたく無いと強く思った。少しでもデリカシーを持った真っ当な人物になれる様に頑張らなくては…。


でもそれら全部を引っくるめて何よりも辛いのは明日に授業があるという事だ。確かに興味もあるし面白いんだけど、今の気分だとまともに受けれる気がしない。


そんな事を考えながら緋色君に言葉を返した。


「そうだよね。僕も明日授業を受ける気力とか全部無くなっちゃう位に疲れたよ。」


緋色君の話にそう答えると、少し時間が空いてから更に疲れている声で返してきた。


「でもこの後からトーナメントに向けて特訓やら準備もしなきゃならないんだぜ?正直やってらんないよな。」


よくよく考えれば彼女は特訓中に誘拐されたんだった。なんか助ける事に必死でトーナメントの事なんか完全に頭から抜け落ちていた。


その上確かトーナメント自体もあんまりいい物では無かった気がする。あの時に嫌そうな感じの顔していた緋色君を思い出して尚更疲れた。


しばらく動きたくない。ずっとこの布団の中にくるまっていたい、なんだか眠くなってきて頭が回らなくなってきた。


「本当だよね。少し考えてる内に眠くなってきちゃったよ。」


そう言った後、僕は意識していた訳じゃないけどつい欠伸が出てしまった。それと一緒に体を伸ばして力が抜けていく。


「じゃあもう寝るとするか。部屋の電気消してくれ。」


緋色君が僕の気を遣ってくれたのかそう言葉を返してきた。なので僕はその言葉に甘える事にした。


「分かった消すね。」


僕がそう言って天井から下がっている紐を引いて電気を切った。カチリという音と共に周りは暗くなった。


ふと横を向くと窓際から薄らと暗闇に浮かぶ星空が見えた。その風景に心を惹かれてボーッと眺めているとしていると、緋色君が僕に向けて一言告げてきた。


「おやすみ。」


その一言で僕は今日という日の終わりを実感した。凄く長かった様な、それでいてあっという間に終わった様な、なんとも不思議な気分になりながら僕も言葉を返した。


「おやすみなさい。」


そしてゆっくりと目を閉じていると、やがて深い眠気に誘われた。そのまま身を委ねて意識はゆっくりとなだらかに消えていく。


こうして僕は長い長い一日を終えたのだった。

最後までお読み頂きありがとうございます。


!60話!

達成しました!


いつも読んでくださる皆さん、本当にありがとうございます。この勢いのまま完結出来る様に頑張ります!

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