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魔法使いの行方  作者: 腐れミカン
はじまり編
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第5話 1日の終わり





服を洗い終えた後僕は最初の部屋に戻ってアルテミアさんが風呂から出てくるのを待っていた。


「ふー、さっぱりした。」


扉を開き現れたのはパジャマスタイルのアルテミアさん。その見た目の幼さと相まってもう本当に子供の様にしか見えない。


唯一魔法使いらしさがあったローブを脱いだ彼女を見て、もうその外見から誰も卓越した魔法を操る一流の魔法使いには見えないだろう。


「あれあれ?どうしたのアリスタ君。お姉さんの大人の魅力にやられちゃったかしら?」


僕がジッと見ているのに気付いた彼女はその身を少しくねらせてセクシーポーズらしきものを取った。


しかし何というかその見た目からか大人らしい魅力はほぼ皆無でむしろ少女が背伸びしている微笑ましさがあった。


「服を洗い終わったんですけどどこに干せばいいですか。」


「服は私が後で魔法で乾かすからそのままにしておいていいよ。それより今さっきのセクシーポーズをスルーって酷くないかしら?」


「あー、えっと。」


困った、セクシーポーズにセクシーさが無ければそれはただのポーズであり何と言うべきなのか分からない。


「もー、いいよ。私に大人の魅力が無いのは分かったから。」


僕が言葉に詰まったからか本気で落ち込みな

がら濡れた髪をタオルで拭くアルテミアさん


何というか服を油塗れにして精神的ダメージまで与えてしまうとは…僕は何で事をしてしまったのだろうか。


そしてこの場合どう返すのが正解なのか…僕には分からないけれどベストを尽くすべきだ。


「その…人それぞれ違った魅力ってあると思いますよ?」


しょんぼりしていたアルテミアさんはこちらを上目遣いで眺めてきた。


「そういう優しさが…一番辛いよぉ。」


その場でガクッと力無く倒れたアルテミアさんに僕はひたすら慰めの言葉をかけたのだが彼女は一向に起き上がることは無かった。




あれからかなり時間が流れて外がうっすらと暗くなった。


「うー。お腹減ったなぁ。アリスタ君そろそろご飯の時間にしようと思うんだけどいいかな?」


倒れたままのアルテミアさんは何とも言えない体制のまま力無い声でそう言った。


「僕もお腹が減ったのでいいと思います。」


その場からサッと起き上がったアルテミアさんはパジャマ姿のままその場に紋章を描いた。


「いでよ!美味しそうな料理!!」スポポン


紋章が緑色に煌めきその中から無数の料理や食器が飛び出して机の上に着地していく。


それにその料理たちはあの悍しいお菓子に比べて凄く美味しそうだ。


「おー!すごい。」


「いつもは私が料理をするんだけれど今日は面倒だったので魔法で出してみたんだ。」


エッヘンと無い胸を張るアルテミアさん。今回に関しては僕もその偉そうな姿すら尊敬の念を覚えそうだ。


しかし本当に魔法は万能で素晴らしいものだなぁ、僕もいつか完璧にマスターできる様になりたいものである。


「じゃ、いっただきまーす!」


アルテミアさんは手を合わせて机の上にある料理を食べ始めた。


「いただきます。」


一応僕も いただきます をしてから料理に手をつけ口に放ってみる。


すると机の上にあるどの料理もあまりの美味しさに体がとろけそうだ。


あの地獄の様なお菓子に比べると正に天と地の差である。


「そういえばこういう魔法で出した料理って消えないんですか?」


「うーん、わかんない。けどまぁ食べれるし美味しいから細かい事はいいじゃん。ほらほら早く食べましょ?」


魔法使いが魔法なんてどうでもいいっていうとは。


それに彼女の様に原理を知らなくてもこうやって好き放題できる魔法の凄さが更に際立つ。


そんな事を考えていたが結局僕もお腹が空いていたので食事を優先する事にした。


「それもそうですね。美味しければよし!」


恐るべき地獄(お菓子)を超えて傷ついた胃腸が蘇る様に動き始め食欲は止まらない。


これらの料理の中で特に目を引いたのは肉じゃがというものである。


これのじゃがいものホクホクさが僕に暖かさを与え肉のジューシーな旨味が箸を進めさせる起爆剤となり更なる食欲わ沸き立てる。




箸を置き手を合わせる。



「ごちそうさまでした。」



素晴らしい食事を終えた僕は食器を片付けようとまとめているとアルテミアさんに呼び止められた。


「あー、片付けなくてもいいよ。私が魔法でパッとやっておくから。」


「じゃ、お願いします。」


また現れた紋章に吸い込まれていく食器たち

はどこに行くのだろうか。


「ふー、ご飯も食べたし魔法を使って疲れたから私はもう寝るね。アリスタ君も適当にそこら辺で寝ていていいよ。」


「あ、おやすみなさい。」


沢山魔法を使って疲れたらしい彼女は何も無い床でグダーっと横たわり寝てしまったアルテミアさん。何とも自由奔放である。


床だと風邪を引くかもしれないと思った僕は

彼女の小さな体を持ち上げて布団のある部屋を探す。


その柔らかな髪が腕に当たり少しくすぐったく甘いシャンプーの香りでクラクラしそうだ。


彼女に大人としての魅力は無いかもしれないが少女としての魅力は充分あると思う。元に僕はアルテミアさんにドキドキが止まらない。


ふとそんな彼女の顔を眺める。

すやすやと眠る寝顔がとても可愛らしい。


そしてそんな事を考えているうちに一つのベッドがある部屋を見つけ彼女をそっと下ろして掛け布団をかけてあげた。



「僕も寝るかぁ。」


そこには寝る場所が一つしかなかったので僕は食事をした部屋に戻り大きめなソファに体を倒して横たわる。


今日一日だけで色んなことがあった。

僕に名前がついて魔法を知って地獄と天国を味わって…。


また明日も楽しみだな。

5話まで続けられました、これもここまで読み進めて下さった皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。

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