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魔法使いの行方  作者: 腐れミカン
魔鉱山編
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第48話 融合思念体



〜緋色視点





アリスタ達を先に行かせたのはいいものの、目の前にいるこのデカブツをどうしたものか。


見た目は緑色のスライムの様な物でありながら薄らと透けている人の臓器みたいな物が不気味さに拍車をかけている。


「さてと、仕事の時間と行きますかね。」


カードを空間から取り出してこれから始まる戦いの準備を終える。


残っているのは重力と武器のカード二枚だけ。


この先にマリアを連れ去った男がいるからこれ以上の消耗は避けたいのだが、それで俺が死んでしまったら意味は無い。


最悪、今手元に抱えている現状このメンバーの最強格である霧ヶ谷に目覚めて貰ってなんとかして貰えばいい。


「王城、霧ヶ谷が起きるまでお前のデコイで守ってもらえるか?」


「ガッテン承知。任せてくだされ!」


王城の合図に俺は言葉を返す。


「じゃあ頼むわ。それとあのデカブツは俺が引き付けて倒すからお前は後ろから攻撃魔法を使ってくれ。」


「任された!では行きましょうぞ。」


俺らが連携を取っている間に巨大なスライムはプルプルとその場で震えながらこちらへ進み始めてきた。


なのでまずは俺は重力のカードを取り出してあのデカブツの中心に向かって強力な引き寄せる発生させる。


「デコイアーミー全展開!ファイヤー!!」


王城が動けなくなったスライム目掛けて複数体のデコイを使って炎を放射する。


あの見た目だからか音は出ないが、辺りに煙が立ち込めており効果は薄らとだがありそうだ。


「追撃行くぜ!」


俺は武器のカードで無から槍を取り出した。そしてその槍で勢い良くスライムの中にある臓器を次々とつぶしては砕いていく。


飛び散る緑の液体を被らない様に避けながら次々攻撃を続けていくのだが、中々に気色悪い物だ。


それとやはりというか弱点を突かれたスライムは、その場で震えながら分裂しようとしている。


だがそれも俺の重力で場所を固定されているので動く事はできない。


「しっかし気味が悪いなこれ。」


槍越しでも感じる妙な感触とあんまりにも簡単に物事が進みすぎているというこの違和感。


ふと目眩とともに脳裏に複数人の声が響く。


オイデ…オイデ…。


その声を頼りに今何故このスライムに攻撃をしているのか、それを疑問に思った俺は槍を投げ捨てていた。


ヒトツニ…ヒトツニ…。


そして手を思い切りその中に入れて中に入ろうとしたその瞬間、思い切り引き摺り出される様な感覚に襲われる。


「何やってるのよ。」


振り向けばそこには凛とした面立ちで周りに霧を纏わせている霧ヶ谷が居た。


「それってどうい…」


意識が鮮明になって手の当たりを見た俺は恐怖した。あの緑の液体がベッタリと付いていたのだ。


そして隣では泡を吹いて倒れている王城の姿が見えた、これは一体どういう事だというのか。


「どうやらあの魔物は敵対する者に幻覚を見せて取り込もうとするタイプの厄介な物ね。緋色君も王城を抱えて早めに私の近くに来た方がいいわ。」


そんな厄介な相手だったとは、幻覚どころか幻聴まで聞こえていた気がしたけど…。


そんな事を考えながら俺はその言葉の通りに足早に王城を回収して霧ヶ谷の後ろまで移動してふと浮かんだ疑問をぶつける。


「幻覚まで無効化出来んのか?」


「えぇ。外界との接触を断ち切るのが私の魔法の持ちうる力よ、それくらい簡単な事だわ。」


俺はてっきり魔法攻撃や物理攻撃を無効化するものだと思っていたけど、どうやらもっと奥が深い物らしい。


まぁ今はそんな事はどうでもいい。


問題なのは目の前の化け物が俺と王城の攻撃をくらっておきながら全く変わらずにいるという事だ。


「霧ヶ谷はアレをどうやって倒すつもりだ?俺と王城で魔法と物理の両方ともやってみたけど全く効かなかったんだが。」


「それなら簡単な事よ。私の霧で内側から全て切り刻めばいい。再生するのならその度に何度も何度も、戻らなくなるまで攻撃すればいいだけよ。」


コイツ…整った顔から感じられる理知的な雰囲気に反して想像以上の脳筋野郎だな。


だがそれでもいい。俺と王城はこういう巨大な敵との戦いにおいて決定打を持たないから、今の彼女の様にパワーがある人物がいた方が楽に進められる。


「とことんやってくれ霧ヶ谷。跡形も残らない様にな。」


俺の言葉を聞いた霧ヶ谷は、少し嫌そうに顔を顰めた。


「それくらい言われなくても分かってる。現れなさい、ミストドラグーン!」


周りを覆う白色の霧がスライムの内側に移動し、竜の形を作り上げて勢い良く食い破って行く。


辺りに散らばす緑色の液体、そして臓器の数々を全て跡形も無く切り刻んだ。


ミストドラグーンは依代を失いその場に残された何度も逃げようとする残骸を、粉微塵に粉砕し続けて行った。


「私にかかればこれくらい容易い物ね。」


物凄い自慢げな表情でこちらを見つめる彼女に少し苛立ちを覚えたが、今回のMVPは紛れもなく霧ヶ谷なのでその気持ちを抑える。


「助かったぜ霧ヶ谷、お前が起きなかったら俺も王城も危なかった。」


「お礼なんて後回しでいいわ。それよりもこれはどういう状況なの、マリアはどこに…?」


不思議そうにこの灰色の部屋の周りを見渡す霧ヶ谷。確かに彼女はあのイービルとかいう奴に体を乗っ取られていたから、記憶が無いっていうのも当然っちゃ当然だろう。


「あー、そこからか。分かった簡単に説明してやるから。」


「助かるわ。」


この後、霧ヶ谷に大雑把な説明をし終えた後に、王城が意識を取り戻したので、俺達はアリスタとフラムが先に行っている場所へと向かうのであった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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