第45話 合流
アリスタ視点
僕とフラムで編み出した新魔法で魔鉱山の入り口を破壊した後に中に入って行くと、そこには何人ものスーツを着た人が倒れていた。
「これって…。」
「どうやらアタシ達が来る前に一悶着あったみたいね。」
そして皆顔立ちは完璧にマリアそのものとは言えないものの近しい物で僕はゾッとした。
だけどそれと同時に近くに彼らの物と思わしき制服が脱ぎ捨ててあるのが見えた。
「あれって緋色君達の服じゃないのかな?」
「そうね。アイツの事だから何かアタシ達にヒントを残してくれてるかも。」
そう言ったフラムは倒れている人を避けながら緋色君の制服を取って中を漁り始めた。
そして何かを見つけたのか少し得意げな顔でその中から一枚のカードを取り出した。
「このカードに何か書いてある。えーと、恐らく後から来るであろうフラムとアリスタ君へ、まず最初にここは間違いなく裏で何かしらの事をしているから注意してくれ。それと僕らは先に奥の方へ進んでいるから後から追ってくるといい。だってさ。」
フラムがそう言った後僕は彼女の方へ移動して改めてそのカードの内容が間違っていないかを確認した。
そして改めて周りを見渡して確かにここは普通ではないと少し思う。
見慣れないサイバーな壁に照明や光るパネル、なんともSFチックなここはとても不思議な場所だ。
「なるほど。じゃあこっちに行けばいいのか。」
僕がそう言うとフラムもそれに答えた。
「そうね、じゃあ行くわよ。」
そして僕らがこの場所から移動して緋色君達が居ると思われる通路に足を踏み入れた時。
目の前から何人かのスーツを着た警備員の様な人がこっちに向かって走ってきた。
「何か来てる!どうしよう。」
僕が彼女に問いかけると下に転がる別の人と見比べてから答えた。
「倒れてる連中は先に行った緋色達が倒した訳でつまるところアタシ達の敵みたいね。」
「侵入者を発見。ただちにこの魔鉱山内部から排除する!」
何人もの人がわらわらと集まりこちらに見慣れない物を構えた。何なのかは分からないけれど何か危険な予感が僕の中にある。
「総員、構え!」
「それがなんだか知らないけど、アタシ達の行先を邪魔するのならさっさと消える事ね!」
フラムはそう言ってその群がる人たちに向けて紋章を描き上げた。
「フレイム!」
その掛け声と共に放たれた炎は辺りにいる人全てを飲み込み燃やし尽くし始めた。
「隊長!仲間が次々燃えて…うわぁぁあ!!」
「クソォ!構うな!撃て!撃てぇ!!」
バンバンバンバババーン
こちらに飛来する何か、それが何なのかは分からない。
だけど自分の体に当たれば間違いなく無事ではすまないという事を直感で理解した僕は咄嗟に光を盾のようにして身を守るイメージを浮かべて紋章を描き上げた。
「来てくれ!ライトニングシールド!!」
その現れた光の盾は僕とフラムの体の周りを覆い飛来してきた物全てを弾き飛ばして完全に守護する事に成功した。
「ナイスよ!アリスタ。」
「敵を倒せたのはフラムのおかげだよ。」
そして完全に現れた敵を倒した僕らはそのまま更に奥へ進んで行くとそこには見慣れた顔の三人組がいた。
その中の一人である緋色はこちらに気がついたのか声をかけてきた。
「アリスタ君にフラムじゃないか。君達が来たって事はこれで全員揃ったって訳だ。」
二人は服装がボロボロのスーツ。一人は傷一つない状態でその場に横たわっていた。
「皆そんなボロボロになって一体どうしたの?!」
僕が緋色君に問いかけると、彼は僕の方に顔を向けて話し始めた。
「今さっきまで敵と戦っていたんだ。それと俺の事は取り敢えず後でいいから少しこっちの方に来てくれ。」
そう言われた僕らが緋色君達がいる大きなドアの付近まで行ってから今度は王城が話し始めた。
「実はワタクシたちが先頭に入る前に、マリアの父を名乗る男がマリア殿をこの扉の先に連れて行ってしまいましてな。今ここにいるメンバーでは扉を破壊できず、困っていた所なのですぞ。」
彼は何故か普段から想像も出来ないほど真面目な表情でこちらに情報を伝えてくれた。
この事から分かるのは今回のマリア騒動は想像以上に重い問題だという事だろうか。
そんな事を考えていると、フラムが緋色のに不思議そうに問いかけた。
「でもアタシ達が来なくても緋色ならなんとか出来たんじゃないの?」
確かに緋色君は魔法は使えないものの何かよく分からない力を沢山使えるのだ。
なので僕らを待たなくても普通にドアを開く事が出来る気がした…のだが心底残念そうな表情でフラムに言葉を返した。
「俺の能力はそんな便利で使い勝手がいいもんじゃねぇんだよ、残念な事にな。それに頼みの綱の霧ヶ谷もダウンしてるから、本格的にこっちにはパワーがあるメンツが足りなかったんだよ。」
そんな緋色君の話を聞いておきながらあんまり興味がないという素振りでフラムは紋章を扉の前に描き始めた。
「まぁいいけど、よーするにパワーがある魔法の使えるアタシがドアを壊せって事ね。」
「そういう事、んじゃ宜しく頼むわ。」
メガネの位置を直す王城と緋色君は霧ヶ谷の体を持ち上げてフラムの後ろに移動した。
僕も同じ様に後ろの方に移動する。
「フレイムボム!!」
フラムが魔法を使ったのと同時に辺りを熱気と爆音が吹き抜けた後、そこには完全にドアが消滅した入り口があった。
「完璧だね。」
僕が彼女にそう伝えると満足げにサムズアップして言葉を返して来た。
「まぁこれくらい簡単な事よ。」
そんな僕らの様子を見た緋色君は前に移動して勿体ぶった様に言った。
「よーし、んじゃ移動しますかね。霧ヶ谷は俺が運ぶからアリスタとフラムは前から来る敵を迎撃してくれ。王城はデコイを出して近辺の索敵をする事、おーけー?」
何とも曖昧な発音でそう問いかけて来た緋色君に皆が各々の考えを伝えて行く。
「アンタ仕切るのは少しイラッとするけど今回ばかりはその考えに賛成よ。」
「僕も特に異議はないかな。」
緋色君のが僕よりもリーダーシップはあるだろうし普通に異議はない。
そんな僕の後ろの人は大変不満足そうに手を上げた。
「いーや、意義がありますねここはワタクシが霧ヶ谷様をお運びするべきだ。」
そんな王城に対して飛び出して来た頭を押さえながら諭す様に語りかける緋色君。
「おいおい、まとまりかけていた話を台無しにすんなよ王城。もう時間的余裕がないからここは我慢しなさ〜い。」
そんな返しに王城は少し悩んで緋色の方に言った。
「むむむむ…確かに今は一刻を争う自体。仕方ありませぬな、今回は身を引く事にしますぞ。」
「じゃあ全員異論なし。いっちょチーム学院生の力を見せてやろうぜ!」
僕とフラムは緋色君の前へ移動して、緋色君はは横たわっていた霧ヶ谷を持ち上げ、王城はデコイを何体か出して後ろの方へ移動した。
「行くぞー!」
緋色君の掛け声と共に僕らはマリアが居るであろうこの入り口の先へと足を踏み入れていくのであった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。