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魔法使いの行方  作者: 腐れミカン
学院編
28/75

第28話 放課後にむけて








「〜であるからして〜なのだ。今日の授業はここまでとする。」


ルイ先生が板書を書き終えて授業は終わりを迎えた。教卓の前に立ったルイ先生はチョークを置いて僕らに話し始める


「そうだ、アリスタ君。君はまだ来たばかりだから知らないだろうがこの学院には各クラスで魔法を競い合うトーナメントがあるんだが出れそうか?」


魔法の競い合いだって…?魔法なんて人の体に当たったなら無事では無いだろうしどうなってるんだ。


もしかしてこの学院は死に対する意識が皆無なのか?


だがそんな困り切ってしまった僕に隣の緋色君はそっと耳打ちした。


「俺は一度出た事があるんだが別に魔法で殺し合うみたいな野蛮な奴じゃ無いからそんなに怖がらなくても大丈夫だぜ?」


「そうなの?」


「まぁな、だから安心して参加してくれ。前年度は人数が足りなくて俺が二回出る事になってひどい目に…ゲホンゲホン。」


緋色君の声が次第に小さくなって最後の方が聞こえなかった。なんだかとても重要な事を言っていた気がしたので聞き返す。


「えっ今なんて?」


「あははは、いやいやアリスタ君も混じったトーナメントが楽しみだな〜って言ったのさ。」


指でV字サインを作りこちらに向ける緋色君だが多分…いや絶対に違う。なんか二回出て酷い目に…的な事を言ってた気がする。


「絶対違うよ!本当は何を言っていたのさ?」


僕が問いただすと緋色君は僕を宥める様な感じで肩を組む。そしてルイ先生に向けて声高々と言った。


「先生〜!アリスタ君やってくれるみたいです。」


「おぉ!そうか今年は何とか人数が揃いそうだな、先生は嬉しいぞ。」


「ちょ…まっ。」


必死にその言葉を取り消そうとするが緋色君が力強く口元を抑えてしまって声が出せない。


「悪いな…アリスタ君。だがこっちも命懸けなんでね。」


やけにハードボイルドな声でそう呟く緋色君だが絶対にそのトーナメントが辛いから僕を巻き込んだ奴だこれ。


そんな風に身動きが地味に取れないでいるうちにルイ先生は教材をまとめた。


「じゃあこれからトーナメントに向けての練習を頑張ってくれたまえアリスタ君。応援していますよ。」


そう言って先生は教室から出て行ったのだ。そしてそれと同時に緋色君は僕の拘束を解除した。


「酷いじゃないか緋色君、僕はまだやるなんて一言も言ってないよ!」


「すまん!だが本当にあの試合を二回やるなんて身が持たないんだ。マジですまん!」


頭を下げて謝る緋色君に僕は怒りがこみ上げてきて口から物凄い罵詈雑言が出そうになったその瞬間。


そんな僕らの間にマリアが割って入った。


「アリスタさん…落ち着いてください。私からも頭を下げるので…許してあげて。」


マリアがここまで言うという事はどうやら何か事情があるみたいだ。


「マリアがそこまでするなら…でも事情は聞かせてもらうけどね。」


「なんで緋色がアンタを巻き込んだのか教えてあげるわ。」


僕の言葉に割って入ってきたフラムは自信満々に語り出した。


「そもそもこの学院のトーナメントが魔法使い同士の戦いなのよ。すなわち魔法を人に向けて打ち合うなんて正気じゃない競技。」


その言葉を僕を焼き殺そうとしたフラムが言うのか…なんてツッコミを心の奥底に引っ込めながら話の続きを聞く。


「そんな一度の戦いでボロボロになる様な物を前回緋色は人数が足りないって理由で二回出てボコボコにされたのよ。」


緋色君は当時の事を思い出したのかボロボロと大粒の涙を流す。


「あの時は…辛かった。」


その短い言葉に全てが込められていた。

そんな悲痛な声を聞かされたら僕も覚悟を決めるしか無いみたいだ。


「わかったよ、やるよトーナメント。」


僕が渋々承諾すると甲高い声が教室に響き渡る。


「本当かい?流石アリスタ君だ!!やったー!」


さっきまで泣いていたのが嘘みたいに晴々とした笑顔で飛び上がる緋色君。何だか見ていて少しムカついた。


一方マリアは事が収束した事にホッと胸を撫で下ろしており近くにいるフラムは緋色君を見て呆れた様にため息をついていた。


「よし、アリスタ君も参加してくれた事だし早速練習しなきゃだね。練習する時に一人だけだと何処が悪いのかよく分からないから2組で練習するのはどうだい?俺とマリア会長アリスタとフラムなんてどうよ?」


「2組を組むアイディアって訳ね。緋色の癖に中々いいじゃない。」


フラムもヤケに乗り気だが僕は正直彼女とタッグを組むのはあまり乗り気ではない。いくら鉛筆やノートの切れ端を貸してくれたといえど僕を焼き殺そうとした事実は消えないからだ。


僕が苦言を申そうとした瞬間マリアが不満そうに口を開いた。


「えっ私…緋色さん嫌なんだけれど。」


「うーん、じゃあしょうがないや俺とフラム、アリスタ君とマリア会長で組むって感じのがいい?」


「僕もそれがいい!」


すかさず言葉を滑り込ませたがそんな僕の言葉の後にフラムの不満そうな声が追いかけて来た。


「待って…アタシ緋色と組むのは嫌よ。理由はないけど何か嫌。」


「おいおい…そんな事あるかい?俺ってそんなに嫌われてんの?」


しょんぼりとその場に力なく倒れ込んだ緋色君 何だか不憫である。


そしてこのままではあまりにも緋色君が可愛そうな事になってしまう。


彼は僕をこの地獄のトーナメントに巻き込んだ張本人だが情が沸いたので少しだけフォローする事にした。


「じゃあさ僕から一つ提案があるんだけど…組み分けをジャンケンで勝った人が決めるのはどうかな?」


僕の提案にマリアは頷いて答えてくれた。


「アリスタさんが…そういうなら。」


「アタシも賛成、ジャンケンなら恨みっこ無しで出来そうだし。」


「よし、俺もここで挽回してやるぜ!」


僕らは円陣を組んで右手を出し合った。


「せーの。」


「「「「ジャンケン ポン」」」」


なんと僕とマリアとフラムは皆パーを出していた。それに対して緋色君はチョキ…すなわち一人勝ちしたのである。


「よっしゃ!じゃあ最初に言った俺とマリア会長、アリスタ君とフラムのペアって事でよろしくぅ!」


「はぁ…。」


本当に嬉しそうにガッツポーズをする緋色君を心底嫌そうな顔で見つめるマリア。


果たして上手くやっていけるのだろうか。


だが僕にはそんな心配をする余裕はない。何故ならば僕のタッグがあのフラムだからだ。


「まぁ、緋色よりはマシね。それとアタシとタッグを組んだからには覚悟することね。」


「あ、あはは。僕なりに善処するよ。」


僕の口から乾いた笑いが溢れ落ちこの賑やかな教室の中に放課後のチャイムが無機質な音で鳴り響いた。


果たして僕は生き残れるのだろうか…。

最後までお読み頂きありがとうございます。


少しでもお暇を埋める事が出来たなら光栄です。


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