第25話 少しの我慢
教室の前まで移動した僕らにルイ先生は足を止めて話し始めた。
「さてと、ここが私の受け持つクラスの教室であり君が通う教室という訳だ。これから私は教材を取ってくるから先にマリア君とこの中に入って待っていたまえ。」
「分かりました。」
ルイ先生はそう言って僕らを後にして教室
から離れていった為、残された僕らはルイ先生の言ってた通りに教室の中に入る事にした。
中に入るとあの学院寮と同じくらいになんだか古くさい感じがあり更にとても狭くて人が入れて大体5〜6人のスペースしかない。
そして何よりもその狭い教室の中には見覚えのある女が一人居てなんとも嫌そうな顔でこちらを見ている。
「な…!なんでアンタがここに居るのよ!!」
指をこちらに向けて指して来た僕の苦手な女…フラムは抗議するように言っので僕はそれを睨み返した。
前回殺されかけているの上での発言だったので正直少しムカついた。
だがそんな僕らの間にマリアが静止する様に入り込んできて僕の耳に囁いた。
「フラムさんをここで暴れさせたら…教室が滅茶苦茶になっちゃう…。」
「マリアが言うのなら…分かった。」
そしてマリアの意図を読んだ僕は賢明にそれを抑えて無理に笑みを作りながら彼女に手を差し伸べた。
「今日から僕はこのクラスで一緒に勉強する事になったんだ、よろしくね。」
フラムはとても嫌そうな素振りをしながらも一応手を握ってはくれた。
そしてその様子を見ていたマリアは争いが起こらなかった事を見てホッとしている。
「アンタ、名前は何て言うの?」
「そういえば まだ話してなかったね。僕はアリスタって言うんだ。」
「ふーん。」
顔をそっぽに向けて腑抜けた声で返事を返したフラム。
自分から聞いておいて全く興味の無さそうな反応をされたので言葉にならない苛立ちが湧き上がってきた…が握り拳を作って抑える。
そんな僕にマリアがそっと話しかけてきた。
「アリスタさん…もしかして…フラムさんの事が…苦手?」
「あぁ、無理だね。どうにも彼女とこれからしばらくの間関わるなんて、正直僕には耐えれないよ。」
僕がそう言ったらマリアは僕をフラムの方から遠ざけて話を続けた。
「そう…。でもね…アリスタさん…。フラムさんはあれでもかなり頑張ってるの。」
「それってどういう事だい?」
「いつもよりも態度が柔らかかったから…フラムさんは…アリスタさんの事をそんなに嫌いじゃないと思う。」
「そうなのかな?」
ちょっとだけフラムの方を見ると僕をかなり本気で殺そうとして来たよりも、まだ落ち着いている様に思えた。
それにマリアがここまで言うのだからもしかしたら僕が一方的に嫌っているだけで、そこまででもないのかもしれない。
「マリアのおかげでなんかそんな気がしてきたよ。僕ももう少しフラムと関わる事を頑張ってみる。」
僕なりに考えた答えを聞いたマリアは少し笑みを浮かべてサムズアップした。
「…ファイトです。」
マリアが見守る中僕は戦地に赴いた。
〜
僕は改めてフラムの方に体を向けて話をしてみた。
「えっとフラムさんって趣味とかある?」
「無い。」
即答である、確かに彼女の様な野蛮な人物が趣味とか持っている訳が無い。
「じゃあ好きな食べ物とかは?」
「無い。」
まさか無いとは思わなかった。一体彼女は何を生きがいにしているのだろうか。
「なら尊敬する人って居る?」
「お爺様よ。」
ようやくそれっぽい言葉が帰ってきたが僕は正直そのお爺様に対して何を言えばいいのか分からないから会話が続かない。
やっぱり彼女は僕がかなり苦手な部類のカゴテリに入る…本当に信じられない。
かつてここまで話しづらい人が居たのだろうか?
こっちが頑張って話しかけてあげたのにこんな無関心に近い態度を取るなんて!!
あーームカつく!!!!
僕の中で湧き上がる苛立ちが爆発寸前に達しそうになったその瞬間。教室の扉が勢い良くバッと開いた。
「おーっす!」
そこには酔いから目覚めた緋色君が居た。
これはまた僕の周りが騒がしくなりそうだ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
改めて、新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。