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魔法使いの行方  作者: 腐れミカン
学院編
21/75

第21話 親しみを込めて





「まぁ、試験も終わった事だしマリア君に学院寮でも案内してもらうといい。今日の魔法の授業は全部終わってしまったからね。まずは寮で体を休めて明日からの授業に備えるといいよ。」


そう試験を終えたルイ先生は僕に言った


「分かりました。試験を受けさせてくれてありがとうございます。」


「いや、こちらこそなかなか面白いものが見えたから楽しかったよ。これからよろしくねアリスタ君。」


ルイ先生はそう行って扉を開いて出て行ってしまった。そして先生が出て行くのとは対照的にマリアが応援席からこっちの方まで来てくれた。


「魔法ランク…どうだった?」


そして少し不安そうな声色で結果を僕に聞いてきた彼女に対して僕は安心させる様に自信ありげに答えた。


「なんとか試験には受かってね。ランクはCだったよ、だからマリア会長と同じクラスなんだ。改めてよろしくね。」


「そっか…私もアリスタさんが…同じクラスなのは…嬉しいな。」


「僕もマリア会長と同じクラスだから嬉しいよ。改めてよろしくね。」


「…うん。」


マリアがそっとこちらに手を差し出してきた、僕はその握手に応える様に自分の手を出して彼女の柔らかな手を柔らかく握った。


お互いの熱が手を通して伝わっているという事を考えるとなんだかとても照れくさくなった。


恥ずかしさを紛らす為にルイ先生から言われた寮の場所を聞く事にした。


「えっと。ここの学院寮の場所ってわかるかな?もし良ければ案内してくれると嬉しいな。」


マリアは少し微笑んで僕の問いに応える。


「いいよ…。寮まで案内するね。」


「ありがとう!」


僕らは繋いだ手を離してからこの闘技場を出て寮へと向かった。





「着いた…。あれがCランクの学院寮だよ。」


マリアの言う通りなら目の前にある蔦やら苔やら草やらが生え散らかしている凄く古い倉庫の様な物が学院寮という事になる。


信じたくないのでそっとマリアの方へ目線を合わせたが相変わらず目元が隠れているので表情を読み取れない。


なので目の前の建物の事をすごく丁寧に言葉を選んで言う事にした。


「なんだか、すごく年季が入ってるね。」


マリアは少し口を結んでムスッとしてから少し不機嫌そうに目の前の建物の事を語り始めた


「そうなの。私たちCランクの生徒は…上のランクの生徒から降りてきた物を…基本的に使うの。だからこの寮も、古くなって使わなくなった物がCランクに渡ったという事なの。」


どうやらこの学院内でのランクによる差別とも思える待遇の差は恐ろしい程根強く残っているみたいだ。


この学院にいる誰もが同じ魔法使いを志している生徒だと言うのに。


「この学院はやっぱりランクによる待遇の違いがあるんだね。この寮を見てるとつくづくそう思うよ。」


「そうなの…。私だってAランクの生徒から…この会長の役割を押し付けられたし。Cランクだとこの学院で…肩身がとても狭いの。」


「会長って偉い役職じゃないの?なんで押し付けることなんてしたんだろう?」


「アリスタさん…実は会長は…そんなに偉くは無いのです。私に出来る事は学院内の装備や修理…要するに…会長とは名ばかりの雑用係なのです。」


マリアは言葉を絞りとても辛そうに語り終えた。僕はこの学院に来たばかりだからこんな事になってるなんて知らないので彼女の苦しみを解る事は出来ない。


だけどその重りを一緒に背負う事なら出来る僕の尊敬している偉大な魔法使いのアルテミアさんなら必ずそうするだろう。


「なら僕がマリア会長を手伝うよ。一人で大変な事でも二人でやれればきっと少しは楽になるから。」


「アリスタさん…。ありがとう…そう言ってくれると、とても心強いです。」


彼女の口元がゆっくりと上がり優しく嬉しそうに微笑んだ。その顔を見て僕もここに来て初めてニッコリと笑えた。


「結構話し込んで…今更なのだけど。取り敢えず中に…入りましょう?」


「確かにそうだね。マリア会長と話すのが楽しくて随分と話し込んじゃったよ。」


僕がそう言った後にマリアは意を決するように口を開いた。その仕草から少し緊張が感じ取れる。


「マリア…でいいですよ。アリスタさんになら呼び捨てで…呼ばれてもいいから。」


なんだか初めて人…いや友達に認められた気分だ。言葉に表せないくらいにとても嬉しくてなんだか暖かい。


そして緊張を超えてまで思いを伝えてくれた彼女の精神に敬意を評して僕も恥ずかしさを押し殺して口を開いた。


「じゃあ、その…マリア。」


名前を読んだ瞬間 僕と彼女の間を風が吹き抜けた。そしてその風でマリアの茶色の髪が靡き目元が見えた。


「…はい、アリスタさん。」


僕を見つめているその瞳は透き通り煌めくサファイアの様な深く美しさを兼ね備えていて

薄らと桃色に染めた頬がとても可愛い。


だけれど風はやがて治り髪がまた瞳の上に被さってしまった。それを少し残念に思いながらもそんな彼女もまた良いなと思うのであった。


お仕事、学業、いつも疲れ様です。


普段からずっと頑張っている皆さんの隙間時間に少しだけでも満足感が与えられたなら嬉しいです。


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