第19話 軽い校内見学
マリアさんに連れられて僕は屋上の階段を下り下の階へと降りてきた。
「そういえばアリスタさんのクラスはどこだか…分かってますか?」
「全然分からないや。」
「なるほど。じゃあ一緒に…校内を見て周りながら、確認しましょう。」
〜
その後廊下を歩きながら図書室やら実験室やら視聴覚室やら様々な教室を教えてもらいながら校内を歩いた。
「そして…最後がここ!私が仕事をする場所…生徒会室です。」
そこの扉だけ他の教室よりも質が良さそうな木が使われていてなんだか高級感がある。そしてマリアは扉を開き中に入っていってしまった。
「えっと、入っても大丈夫なんですか?」
僕の問いかけに扉越しでマリアはグッチョブのジェスチャーをした。
そして僕もその扉を超えて生徒会室に入った、中の外装は高級そうな赤色の絨毯と木々が丁寧に貼り合わせられた壁。
そしてこの部屋で一際目を引くのは七色の光に輝く美しいステンドグラスだ。
僕がジッとそのステンドグラスを見ているとマリアがこちらを覗き込んできた。
「今アリスタさんが…見てるあの…ステンドグラス実は私が作ったんですよ。」
彼女の扱う鉱物錬成魔法を応用したものだろう。中々凝っており天使が空から舞い降りる様な装飾も施されている。
「そうだったんですか!こんな細かな所まで調節できるなんて凄いですね。」
僕の魔法は全部自分では完全に扱いきれないシロモノばかりなので一つだけを極めているマリアの様な人物はすごいと思う。
「ううん…私なんか全然…この学院内での魔法ランクでは下から数えた方が早いかも。」
「魔法ランク?」
気になったその言葉を聞くとマリアは生徒会室の椅子に座った。
目元が見えないので詳しい表情は分からないけれど仕草から真剣さが感じ取れた。
「それについて…話すと長くなるの…座って聞いてもらえたらうれしい。」
どうやら僕の問いかけ…魔法ランクという言葉を説明するにはそれなりの時間を要するみたいだ。
なので僕も彼女の優しさに免じて近くにあるソファに腰掛ける事にした。
座ってみると中々柔らかい素材でお尻を包み込む感覚が優しくとてもフィットして心地よい。
「じゃ…話始めるね。」
僕はマリアの話を聞く為にソファを堪能するのを辞め ソファを座り直して体制を整えた。
「お願いします。」
そんな僕の様子を見てからマリアは口を開きゆっくりと語り始めた。
「私たち魔法使いは…皆いくつかの魔法を使うの。それで三つ以上の異なる魔法を使いこなす魔法使いをAランク、二つの魔法を使う魔法使いがBランク、そして私の様に魔法が一つしか使えなかったり下手な魔法使いはCランクになるの。」
彼女の言いたい事は大体理解した。
つまりこの学院内には魔法ランクという階級制度があり魔法が使える分その階級が上がるという事なのだ。
なんとなくの憶測だが恐らくそのランクはこの学院内で何らかの意味を持つ重要な物なのだろう。
「なるほど…魔法ランクかぁ。」
マリアは僕の話を聞いてからまた語りはじめた。
「多分アリスタさんのクラスも…その魔法ランクが基準になって決まるから…。私がこの後先生を呼ぶので…そこで試験を受けて下さい。」
なるほど、どうや学院内でのランクの役割はクラスを決める為のものらしい。
確かに同じくらいの実力を持つ人をまとめて指導をした方が教育する効率がいいだろう。
ただ少し気になった事があったのでその事だけマリアに確認する。
「ちなみに試験って、具体的に何をするんですか?」
僕の問いかけを聞いたマリアは少し考えてから口を開いた。
「自分ができる魔法を…その先生に全部見せるのです。そうしたら後は…先生がクラスをジャッジしてくれるのです。」
どうやら先生…すなわち試験官が僕を見定めてクラスを決めてくれるみたいだ。
だけど僕の魔法はどれもなんとも言えない始末だしなぁ。
炎はしょぼくて水は油が出るし唯一ちゃんと出来てる部類の光は破壊力の調整ができないので…やっぱりダメだ。
どうしようと思いながらも取り敢えず色々教えてくれたマリアにお礼を言わねば。
「なるほど、マリア会長色々教えてくれてありがとう!」
「いえこちらこそ久しぶりに…人と話せたので楽しかったです。」
マリアはソッと頬を染めて少し照れくさそうに答えた。
やっぱり可愛さは容姿ではないみたいだ。内面の魅力や人柄があって初めて可愛さという物が現れるんだなぁ…とフラムとマリアを比べてしみじみ思う僕であった。