第17話 一応の決着
緋色君のくれたカードの効果が切れて絶体絶命の状態!
目の前で僕を滅するくらいの強大な炎が風に揺らめきボウボウと燃えている。
オマケにその炎を操っている少女は何故か僕に対して物凄い敵意を持っていて手に負えない状態だ。
「もうやめようよ。僕らで争っても何の意味も無いよ!」
そう呼びかけるが物凄い形相で睨み返された。
「うるさい!なら何でアンタはお爺様とあんなに仲良さそうに話してたの?絶対アタシを除け者にしてたでしょ?!」
どうやらフラムはダスト校長が大好きなのか知らないけれど僕に嫉妬(?)しているみたいだ。なんとか弁解すれば分かり合えるかな?
「いやだって、転入試験の話を聞いてただけだし。そんな深い話をしてた訳じゃないよ。」
そんな僕の弁解を全く聞くそぶりなど見せずに指をこちらにビシィっと指して声高々と叫び上げるフラム。
「問答無用!覚悟しなさい。」
駄目だこれは話が通じるタイプでは無い。
そして僕もここで焼け死ぬ訳にはいかない魔法を使って対抗しなきゃ…やられる!
「君だって魔法を使ったんだ。悪く思わないでよね!」
僕も炎に対抗するべく紋章を描き上げた。
ウォーターだと油が出るから炎とは相性が悪い…ならこの際炎に炎をぶつけてしまった方がいいのでは無いだろうか?
「何しても無駄よ。私のボルケニックフレイムでまる焦げになって死になさい!」
強大な炎が迫りくる。だが僕の魔法の展開も遅れてはいない。
こちらに飛んできた強大な炎に間に合わせてこちらも紋章から炎を放つ準備をした。
「させるか!ファイヤー!!」
炎がこちらに迫ったそして今がその時!魔法を展開して紋章が緑色に煌めきその中から小さくて火力の無い炎が出てきた。
その炎を見て僕は自分に失望した。これじゃ炎というより蛍火だ。
こんなのじゃフラムの炎を押し返す威力なんか無いじゃないか!
「何よその炎は。アタシの事を舐めてるのかしら?ムカついた!!この炎の攻撃が終わったらもう一発食らわせてやるわ!」
どうやら僕のその炎がシャクに触ってしまったのか更に怒り狂うフラム。元々あった綺麗な顔が分からない位に表情が怖い。
「ひぇぇぇ!!そんなぁ。」
そして結局 僕のヒョロヒョロしたしょぼい炎がのろのろとフラムの出した炎の方へ飛んで行ってぶつかった。
「フン!やっぱりそんな炎大した事無いじゃない!」
僕の炎はフラムの出した強大な炎に取り込まれてしまった。
するとそのフラムの炎も徐々にその形を小さく変え始めた。どういう原理だか分からないけれど何とかなりそうだ!
まだ僕に勝機はある!
「嘘…何が起こってるの!何でアンタのそんなしょぼい炎を受けただけで私のボルケニックフレイムがちっちゃくなっちゃったの!?」
動揺しているフラム、今のうちに彼女の攻撃手段の炎魔法を封じねば僕は死ぬ!
冷静に考えるんだ。彼女が炎を使えない状態に追い込む訳だから…
よし決めた、ウォーターで彼女を油まみれにしてしまおう。そうすれば迂闊に魔法で炎は出せまい!
紋章を描き上げて札付きの杖を掲げ上げる。
「もう炎は使わせない!これで終わらせてやる!!ウォーター!!」
紋章は緑色の煌めきを放ち超大量の油をフラムに向かって物凄い勢いで吹き出した。
「何よこれ!」
ベタァとフラムの着ている学院の制服にこびり付いた油。彼女は表情を歪め不快感を物凄く出している。
そんな彼女に諭す様に僕は話しかける。
「油だよ、もしまた炎の魔法を使おうとすれば今度は君がまる焦げになるよ。それでも使うのかい?」
その場で蹲み込んだ彼女はこちらを憎そうに睨みつけてくる。
「クッ……。認めてあげる!今はアタシの負け!!だけど覚えてなさい!!!次はアタシがアンタを黒焦げにして勝つから!!!!」
フラムはそう言って紋章を描き始めた。もう炎を放つ事はないだろう。
しかし次があるのか…あまり考えたくないな。
「あの、一応学院の案内とか…してもらえたり」
フラムは僕のそんな声かけをガン無視して紋章を描いてその中に入って行ってしまった。
なんとか焼死しなくて済んだものの肝心の構内の案内をしてもらえなかった為僕は屋上で風に吹かれ途方に暮れていた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
今日はクリスマスですが、私はボッチで御座います。
皆様に良いクリスマスが訪れます様に