第16話 出会いと炎と盾
僕はこの病室のベッドから体を起こしてまず外の廊下に出た。
その廊下はツルツルとしたタイル張りの床と余り特徴の無いシンプルな壁紙と見やすい窓があり雰囲気が明るい。
そしてこのろうかにはこの学院の生徒らしき人が何人も歩いていて大変賑やかだ。
「えっと…。」
ただ僕がフラムという人について話を聞こうとしても普通に生徒の数が多い為誰に声をかけようか戸惑ってしまい手がつかないでいたその時後ろから肩をポンと叩かれた。
「銀髪緑目のとんがり帽子…つまり君があの呪竜を倒したと噂の魔法使いかい?」
その無駄に爽やかでいい感じの声で語りかけてきた人物の正体を確かめるべく振り向く。
するとそこにはこの学院の制服をキチンと着た黒髪黒目の余り特徴の無い青年がいた。
「貴方は?」
僕の問いかけに対してその青年は胸に手を当てて紳士的に答えた。
「俺は緋色 蓮ここの学院に通う生徒なんだ よろしくな!」
にこやかに微笑み手をこちらに差し伸べてきた緋色君に答える様に僕も手を掴んだ。
「僕はアリスタ こちらこそよろしく。」
一度がっしり握手をしてから息を整えて改めて話し始める。
「早速で悪いんだけれど緋色君はフラムっていう人を知ってる?ダスト校長に会う様に言われたんだけれど。」
緋色君は頭を手をポンと叩いた。
「あー、フラムの事か!アイツのよくいる場所ならなら俺知ってるから案内しようか?」
「じゃあお願いします。」
「おう!任せろ」
〜
そして僕らはこの広い学院を歩き回りはや一時間ぐらい。廊下を曲がって突き当たりにある長い長い階段を登り続けたのだ。
「中々遠いね。」
息を切らして今にも倒れそうになる僕はなんとか声を振り絞り緋色君に話しかける
すると息切れすらしておらずむしろ元気そうな緋色君は少し笑って答えた。
「まぁフラムは中々というか、かなりの変わり者だからな。こういう変な場所が好きなんだろうさ。」
「そうなんですか。」
そして緋色君はペースアップして僕の前を駆け抜けて行き階段の先にある扉を指差した。
「お疲れアリスタ君多分この扉の先にアイツが居るだろうから後は頑張れよ!」
「緋色君は行かないの?」
「あはは〜、まぁ…ね?。それとこれを持っていく事をおすすめするよ。」
緋色君は乾いた笑みを浮かべて僕に一枚の赤色のカードを渡した。
そのカードには盾の絵と何かの文字が書いてある。そしてその文字にはパーフェクトガードと書かれている。
「これは?」
「コイツは俺の魔法…みたいなもんさ。もし自分の身に危険が迫ったと思ったら躊躇いなくそのカードに書かれてる文字を読み上げるんだ。いいね?」
「それはもしかしてフラムって人はかなり…」
緋色君は焦った表情を浮かべて咄嗟に僕の口を塞いだ。
「馬鹿…。扉越しにアイツがいるのに今ここでそれを聞かれたら死ぬぞ?」
「ごめん緋色君。」
「大丈夫だ。俺はこれから別件で忙しいからここら辺で…上手くやれよ?」
「分かった 案内してくれてありがとう。」
そして緋色君はそーっと階段を降りてこの場から居なくなってしまった。
やはり…というかフラムって人はかなりの危険人物みたいだ。ダスト校長が自分の孫娘とか言ってたから大丈夫だと勝手に思っていた僕が馬鹿だった。
冷静に慎重に行こう。
ドアノブに手を掛けて扉を開いた。
その先はこの学院の屋上で真ん中にある巨大な木がよく見えて心地よい爽やかな風が吹いている。
そしてその木をフェンス越しに眺めている一人の可憐な金髪の少女の後ろ姿が見えた。
二つに結んだ長い髪の毛は風に吹かれてヒラヒラと靡いていてキラキラと輝いている。
なんか思っていた人物像とはかけ離れていたので驚いていたらそのフラムらしき少女は素早く振り向いた。
そして見えた顔つきは煌びやかな上品さと美しさを両立していて赤く透き通った瞳はルビーの様だ。
なんか想像よりもまともそうだ。
「えっと…フラムさんですか?」
僕が問いかけると物凄い不機嫌そうに眉を下げてこちらを力強く睨みつけてきた。
前言撤回何故か僕ら今彼女から物凄い敵意を持たれている。
目の前のフラムと思わしき少女はその手に掴んでいる杖で紋章を作り上げた。
「お爺様を誑かしたアンタなんか!!燃えて消えちゃえ!!」
物凄い巨大な炎が紋章から現れて僕の方に超高速で飛んできた。
「嘘だろ?!」
緋色君が言っていた通りの人だ、この人は。
僕は焦りながらも緋色君から貰ったカードを掲げて記された言葉を読み上げる。
「パーフェクトシールド!!」
僕の目の前に透き通った巨大な城壁が現れて強大な炎を抑え込む。壁越しに眩く燃える炎の赤色が僕に更なる恐怖心を作らせる。
だがそれ以上に緋色君の魔法は強力でその炎を完璧な押さえ込んだ。
そして安心したのも束の間、目の前にいる彼女は第二波の準備を終えていた。
緋色君のカードをもう一度使おうとしたけれど今さっきまであった壁の絵が消えて何も書かれていない空白のカードになってしまった。
「終わりよ!お爺様に纏わり付くハエめ!死んじゃえ!!!!」
あの呪竜と同じくらいかそれ以上の豪炎が僕の方へ吹き飛んできた。この学院の案内をしてもらうとかそんな話ではない。
まずは目の前の彼女を説得してあの危ない炎を止めて貰わねば!!
いつもお仕事or学業お疲れ様です。
最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。