第14話 やけど
「アレは一体…どうなっておるのじゃ。」
ダストは目の前の光景を見て絶句した。
山が崩れ去り地面から巨大な岩屋が現れ木々は燃え山に住む動物が逃げ惑っている。
それは正に地獄の様な光景であったからだ。
そして巨大な岩屋から眩い赤色の閃光が駆け抜けて周りを吹き飛ばした。
「消えた…だと?」
信じられない事に厄災の気配が一切無くなった。だがあの山を燃やす炎は間違いなく封じられたら呪いの竜の豪炎だ。
何故ならダスト自身が過去の戦いであの竜を封じ込めた本人だからである。
「信じられん、あのアリスタという少年が厄災をやったというのか?」
老人は驚きながらも安堵して光の壁を解いた。そして学院の生徒に指示を出してアリスタを救出するように言った。
〜
焼けるような痛み、爛れ落ちる傷跡今きっと僕の体も炎でボロボロなのだろう。
全く動く事も叶わないし目蓋を開く事さえ出来ない僕はただ時間が流れるのを待つしか無かった。
ドダダダダダ
複数の足音がする、もしかして誰か助けが来たのか?
「助け…。」
焼き爛れた口元を精一杯開いて言葉を話すものの喉が暑さで擦り切れそうで余り声が出ない。
だがそんな僕の叫びが届いたのか僕の近くで声がした。
「居たわよ!多分アレだわ。」
女の人の声と
「うわ、こりゃすげぇ。あの呪竜が黒焦げじゃねぇか。」
男の人の声だ。どうやら男女二人組が助けに来てくれたみたいだ。
だが男の喋った内容からどうやらあの竜の方を見ているみたいだ。
「こっ…ち。」
なんとか僕の事に気付いてもらう為にまた痛む喉を抑えながら必死に声を絞り出す。
「ねぇ蓮!あの竜の後ろに人が居るわ!」
奇跡的に女の方に声が届いたのか男…いや蓮という男に声をかけた。
「本当だ!この竜の攻撃に巻き込まれたのかも知れない助けないと!」
ドガガガ
物凄い物音と共にこちらに迫る足音。
「大丈夫かい君?」
返事をしようとするものの全く口が動かない。どうやら今さっきで完全に喉がやられてしまったみたいだ。
「蓮!ボッーっとしてないで早く医務室に運ぶわよ!」
「分かった、君も辛いかも知れないが踏ん張れよ!」
その声と共に抱えられる僕の体。どうやら蓮という人が持ち上げてくれている様だ。
「転移魔法の準備が出来たわ!早く」
「分かってるって急かすな!」
僕は視界が閉ざされ暗闇なのにも関わらず何故だか紋章の緑色の煌めきが見えた気がした。
〜
アタシお爺様に命じられてあの山に居る人の救出に向かう事になった。
どうやらあの試験を受けていた奴が呪竜の封印を解いてしまったらしい。
かなりドジなアタシでもしない様なミスで正直言って信じられない、相当の馬鹿ね。
「おい!フラム。あの炎だとヤベェ早く行かねぇとな!」
隣にいる声のうるさいコイツは緋色蓮、アタシと同じく救出任務を受けた学院の生徒だ。
彼が言う通り目の前にある山から出ている炎の強さは尋常ではない。
「分かってるわよ!転移魔法展開!!」
アタシは杖を使って急いで紋章を書き上げる。そして現れた紋章とあの大きな岩屋を繋いで移動できる様にした。
最後に繋がった紋章の方に来る様に蓮に手でジェスチャーを送った。
蓮はアタシのジェスチャーに応える様に親指をピンと立てて答えて紋章の中に入って行った。
蓮が先に行ってしまったので一人になったアタシは小さな声で自分を落ち着かせる為に呟いた。
「まさかアタシが落としたあの杖が関係あったりなんて…しないよね?」