第12話 妨害
長く生い茂った草を掻き分けて足元の悪い山道を死ぬ気で進み続ける。
「あれは…。」
なんと頑張る僕に対するご褒美なのか目の前に草が無い進みやすそうな道が現れた。
これは何という幸運だろうか。
そして僕は今まで進んでいた道を放っぽり出してその道を進む事にした。
〜
そしてその道をしばらく歩んでいたら目の前の草むらからガサガサと音が聞こえた。
サッと音のした方を眺めると草むらはゆらゆらと揺れていて何かが出てきそうだ。
「警戒しないと…。」
僕は意識を集中して音を立てない様に忍び足で通り過ぎようとした…その瞬間
ガルルル!!
草むらから体格の大きな狼が現れ鋭い眼光で僕の方をギラリと睨みつけてきた。
「なんてこった。」
今の僕は杖も何も無い丸腰の状態…つまりこの状態はかなり絶望的な状況だ。
ドンドンこちらへ詰め寄ってくるこの狼は僕に考える時間すら与えてくれない。
「こうなったらヤケだ。やってやる!!」
魔法は紋章が書ければ何とかなる、だから僕は自分の足元に落ちていた枝を拾い上げた
ガルルル!!
狼がこちらに飛びかかって来た!
「グッ…。」
足元から痛みが走り目線を下げると自分のふとももから血が流れているのが分かった。
どうやら僕は狼の鋭く強靭な爪でふとももを引っかかれてしまったみたいだ。
ガルルゥ
痛みに耐える僕を嘲笑う様に尻尾を振り唸り声を上げる狼
そしてどうやらこの狼は獲物を弱らせて確実に仕留めるという手段を取ってくれたらしい
これなら僕にも勝機はある。
枝で紋章が出る事を祈りながら空中に描くと緑色の煌めきが僕の視界に映り込んだ
「やった…。発動した。」
現れた紋章はお世話にも整った物では無いけれどこれで魔法は使える!
後はイメージを送り込み僕の中で最大の一撃をこの狼に与えれば…行ける!
現れた紋章に光り輝く太陽のイメージを与え力強く叫び上げる!
「行け!ライトニング!!!!」
紋章は更に輝きを増して砕け散り極大な光の塊が現れた。
その光の塊は白く眩い光を放ち現れ狼の方へ向かって行った。
キャイン!
しかし狼は素早く身を翻しその光の塊から逃れ草むらに逃げ帰ってしまった。
その上光の塊は打ち出されてから左方向に急激に曲がって狼のいた位置とは全然違う方に飛んでいってしまった。
そして僕の目の前に残されたのは粉微塵に吹き飛ばされた木々の残骸と草一つ生えていない荒地だった。
「あぁ…。」
この時僕は自分の中で理解した
この魔法は使ったらいけない物だと
その理解を胸に抱き、木々や草が吹き飛ばされて歩きやすくなった道でまた前へと歩き始めた。
〜
アタシは魔法を使い頂上へと簡単に登って周りを見渡した。
周りには人影は一つもなく殺風景な岩場でどうやらまだお爺様に転入試験を受けたアイツは頂上に着いていない見たいだ。
「よいしょっと。」
そしてその岩場の真ん中に突き刺さって入り杖を見つけたアタシは近づいてその杖を引き抜く。
なんか周りにお札とか色々貼られてるけど多分目印か何かで意味は無いだろうし
「えーい!どっか行っちゃえー!」
アタシは杖を力一杯山の頂上から下にある森の方に投げ捨てた。
これでもう杖がどこに行ったのかは自分にも分からないし頂上を目指しているアイツはもっと分からない。
つまりアイツは試験に合格する事はない。
「ざまあみろ!ばーーか!」
アイツへの暴言を叫ぶだけ叫び満足したので魔法を使って学院の寮に戻る事にした。
あー気分最高!
…
彼女が去った後 近くで地響きが起こり不穏な空気が山と近くにある学院を包み込む。
校門でアリスタを待つダストは震えながらこう呟いた。
「とうとう厄災が…蘇ったか、ワシもこの学院を守る為に動かねば。」
ダストは杖を振り巨大な紋章を描いた。その紋章から現れた光の壁が学院全部を包み込んでいった。
そしてダストは不安を覚える、自分が送り出したある一人の少年の事だ。
「アリスタとかいう少年…無事だといいのだが。」