Ⅱ-22 3人で乗る馬車
■皇帝専用馬車
屋敷の中に入った俺はブッフバルトを応接間でたたき起こして、使用人頭に作業小屋に出入り可能な人間を聞きだしたが、役に立つ情報は得られなかった。
作業小屋には誰でも入れたようだ。屋敷自体も行商人等の出入りが多く、厨房の裏口あたりは見たことの無い人間が居ても気づかないらしい。
無駄だとは思ったが、念のため俺が訪問すると聞いた後に屋敷へ出入りした人間を洗い出して、報告するようにさせておいた。
ブッフバルトは処断されると思っていたようだ。
俺から仕事をもらった時は、死人のような顔が多少はましになっていたが。
ブッフバルトを処断しても仕方がない。
屋敷内での不始末だから、どのようにも処断できる・・・
だが、今回はしない方が良い気がする。
アリスの宮殿入りについても、望むなら宮殿に来てよいと改めて伝えた。
そこまで話を進めて、眠くなって来たので親友達と客間で休むことにした。
黒狼と白虎は全く満足できない量の肉を与えられたらしい。
料理長は謝り続けていたが、無いものは仕方が無いであろう。
当然、今朝もこいつらの肉は無かった。
なので、走らせるのが可哀そうだと思って、帰りは一緒に馬車に乗せてやった。
うむ、乗るには乗ったが・・・、馬車の中はほとんどがこいつ等の体で占めておる。
馬車は大人が3人ずつ向かい合って座れるようになっているが、白虎は椅子には乗らなかった。
体の半分を床につけて、前足と頭を椅子の上に乗せて丸くなっておる。
黒狼はなんとかもう一つの椅子の上に収まった。
で、俺は椅子の上の白虎の上に乗っかっている。
3人とも不自然な体勢で窮屈だった。
でも、窮屈で苦しいが何となく楽しい。
たまにはこれも良いかもしれない。
■リーブル宮殿 皇帝執務室
少し首を捻ったような気もするが、ブッフバルトの屋敷から昼前には宮殿に到着した。
先に厨房へ寄って二人の食事をもらった。
いつもより食べる時間が短かった、白虎は昨日おあずけを食っているから尚更だ。
執務室のハンスはいつものすました顔で俺を迎える。
馬車より先にハーマンの部下が報告しているはずだが・・・
「陛下、ご無事で何よりでございます」
「ふむ、余を狙ったものでは無いゆえ、心配無用じゃ。持ち帰った山刀は薬師に調べさせろ、間違いなく毒が塗られておるはずじゃ」
「はい、そのようにいたします。時にブッフバルト公爵は処分されないというのは本当でございますか?」
「うむ、管理不行き届きではあるが、処分して毒を盛ったやつを喜ばせるのも癪であろう」
「なるほど、ブッフバルトの失脚も狙っていた可能性があると言うことですか」
「全て憶測じゃがな。自分の屋敷で俺の親友に危害を加えて得るものなどは無いであろう」
-そこまでの愚か者には見えなかった。
「それで、アリスを姫達の家庭教師で受け入れることにした。昨日の騒動で気が変わったかも知れぬが、アリス達が望むなら受け入れてやれ」
「かしこまりました。その姫達の件ですが明日から宮殿に入られます」
「全員同時に? であるのか?」
「はい、そのようにさせていただきました」
-序列をつけなかったからか。
「部屋の準備などは遺漏無いか?」
「はい、整っております。各国から側仕えを一人受け入れますので、身の回りのことは大丈夫でございましょう。陛下がシュターナー邸で見つけられたメイドのティナに側仕えとのつなぎをさせる段取りになっております」
白玉のメイドか、姫達もみな白玉だ。
ようやく白玉が増えてきた。
だが、俺の側にいれば・・・
そうか、俺が守ってやらねばならんのだな、マリーよ。
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