Ⅱ-6 外交成果 農業
■リーブル宮殿 皇帝執務室
結局、この部屋へ来てしまった。
せっかく着替えたし、今日は働くことにして明日こそは部屋におることにしよう。
「ハンスよ。大臣達とハーマン、そしてケイジをここに呼べ」
「一同揃ってからでよろしいのでしょうか?」
「来たものから順に入ってくればよい。今回の外交結果をそなたから皆へ説明して、具体的に動き出して欲しいのじゃ」
「かしこまりました。此度は陛下のご活躍により多くの成果が上がったと存じます」
そうじゃ、もっと俺を褒めるべきなのだ。
俺への褒美はどうなっておるのだ?
最初に来たのはラインハルトだった。
「ラインハルトよ。領主どもの動きはどうであるか?」
「まだ、多くの領主が皇都へとどまっており、毎夜会合を開いております」
「余の施策や法への反応は掴んでおるのか?」
「はい、新しい農業施策に強い反発があるようで、陛下に進言せよとの声がでておるようでございます」
「進言があるならば誰から上がってこようか?」
「やはり、両公爵の下へ人が集まっておりますので、両名のいずれかになろうかと」
-イシュバールとブッフバルトか。両方からかも知れんな。
「他国の動きはどうであるか?」
「帝国は大人しくしております、それ以外で目新しい動きはございません」
「時に、そなたはフランの王をどのような人物と思っておるのだ?」
「中々に、したたかな人物と思っております。かの国では民と王が話し合って国事を勧めておりますが、民を操る能力に長けておるようです」
-民を操るか・・・
「ならば、これからはフランの動向にも注意を払え、人手や金をかけても構わぬ」
-フランの黒玉はしっかり見極めねばな。
「陛下、内務卿とケイジが参りました」
「ふむ、通せ。して、そなたから農業関連の交渉結果を説明せよ」
「かしこまりました。では、私から・・・
ノットランドには鉄製耕作器具の製作を、
モンハルには、農耕馬の提供を、
ウラーナには鉄鉱石の提供を、
サウザンドには耕作人の提供を、
それぞれ、各国の王に快諾いただいておる」
「陛下、陛下のお力に感服いたしました」
「じゃが、エドガー、そしてケイジよ。具体的な数や時期などはそなた達が調整せねばならぬ。各国の公使と早い時期に打ち合わせをせよ」
「「かしこまりました」」
「時に、エドガーよ、サウザンドは多くの人を送りたいようじゃ。じゃが、住むところも必要であろう? 当面はどのぐらいの人数が受け入れ可能なんじゃ?」
「直轄地であれば旧領主達の居館が多数ございます。部屋は潤沢にございますので、1,500名程度ならば、今のままで大丈夫かと」
-そうか、住む場所もあったか。
「そうであるのか、サウザンドにはクローナ芋の提供を約束しておる。直轄地での栽培を急ぎ、人手の対価として優先的にサウザンドへ回してやれ」
「承知いたしました。クローナへ視察に向かったものも近日中に帰ってくる予定でございます。戻り次第すぐに取り掛かります」
「ふむ。クローナの公使も到着された、不都合があれば先と直接交渉して構わぬ」
「かしこまりました」
-ん?ケイジが下を向いたままだな。
「ケイジよ、何か気になることなどがあるのか?」
「いえ、そのようなことはございません。ですが、ご心痛の陛下がここまでの交渉をされていたという事に、深く感銘を受けておりました」
「余計な事を言うでない! そなた達は国事だけに向いておれば良いのじゃ!」
-ご心痛か・・・、思い出させるな、泣いたらどうする。
「陛下、大変申し訳ございませんでした。何卒、ご容赦くださいませ」
「もう良い、それよりエドガーよ。皇帝市の件じゃが、できるだけ早く直轄地で立ち上げよ。他国の商品で珍しいものを集めるのじゃ。特にノットランドは市を待っておるので、優先的に場所を確保してやれ」
「承知いたしました、皇帝市についてはブッフバルト公爵からも応諾いただいております」
「ならば、公爵の市を最優先にせよ。できるだけ人がにぎわう様に、宿等も整備しておけ。市があれば領地が潤うことを示してやるのじゃ」
「かしこまりました」
領主の不満を抑えるためには、成功する実績が必要であろう。
敵、味方を見極めるためにもな。




