3話_5歳児の人事面接
■リーブル皇国 皇帝謁見の間
今日は新しい軍務卿候補が目の前にいる。
リカルド アインズ男爵 と言うらしい。
ハンスの判断では有能で北の帝国へも恐れずに対峙できるガッツがあるらしい。
「で、貴兄は軍務卿として、どのように勤めるつもりだ。」
「恐れながら陛下、北の帝国の軍事力はわが国の倍でございます。しかるに、こちらからは戦端を開くことなく、当面は専守防衛に努めることを進言いたします。」
「装備や兵力も北の防衛に回し、兵の鍛錬も敵を撃退することに特化したいと考えております。」
「よかろう、その方針で進めよ。いまより卿が軍務卿となる。」
「1ヶ月以内に防衛策のみを整備して、余に報告せよ。」
「御意!」
まあ、頭に白玉が浮かんでいるので、基本OKだからね。
これで、3馬鹿が2馬鹿になった。
その後は新しい近衛兵をハンスが呼び込む。
6人並んで、頭を垂れている。
「皆、遠慮は要らぬ面を上げい。」
「諸君らは、先の近衛兵がどうなったか聞いておろう。余の命に従う覚悟が無いものは、この場から立ち去ってよい。立ち去っても何の処分もいたさぬ。」
「この場に残ったものは、各自の心を捨て、わが言葉のみに従う忠誠を誓え。」
「ハァッ!」
返事は良いし6人とも去らないが、白玉は二つだけで4人は黒玉だ。
まあ、こんなもんだし、殺してるときりがないから、あきらめよう。
■リーブル皇国 皇帝執務室
今日もハンスが山のように書類を持ち込んでいる。
100件ぐらい合ったが、全部聞き取った上で99件はハンスに任せた。
最近は麦の不作で各地の領主から借財の申し入れが多いようだ。
俺が気になったのは、アメリア連邦フラン共和国からの援軍要請だ。
北の帝国には連邦内の2大国家であるリーブルとフランが接しており、両国と帝国の間では常に小競り合いが発生している。
フランはリーブルの次に大きなアメリアの加盟国だが、軍事力はリーブルより弱い。
善人である先王は要請に応じて無条件で援軍を送っていた。
俺は当然ながら対価を要求する。
「ハンス、増援に見合う小麦か金貨をフランに要求しろ、それが届いてから増援を出してやれ。」
「帝国に寝返る心配はございませんか?」
「帝国は連邦と異なり、自治などは認めぬ。フランは自由を謳歌する国だ。その覚悟はないであろう。」
「承知しました。ところで陛下、即位の礼ですが、いつ執り行いましょうか?」
「いつでも良い、任せる。が、費用は出来るだけかけるな。」
俺の中のもう一人は貧乏だったようだ。
金を使う話がでると、頭の中が騒々しい。
やたら、セツヤクとかシッソケンヤクとか言い続けている。
最近ではやっと意味が理解できた。
必要なものを見極めて金をかけろと言うことだ。
即位の礼は必要だが、派手にやる必要もない。
大人の相手は疲れる。
「それでは、礼服をお作りしますので、採寸のため裁縫士を連れて後ほどお伺いします。」
フム、人が来るのか。
黒狼と白虎が耳を立てている。
久々に面白くなりそうだ。
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