45話_5歳児の即位式準備
■リーブル宮殿 皇帝執務室
北の帝国はやはり動きそうに無い。
領主の反乱もエドガーの策であれば、これ以上広がらんだろう。
そろそろ、即位式に集中せねば・・・
「陛下、即位式典の最終進行表をご確認願います」
「読み上げよ」
「次の通りとなっております・・・」
1日目 午前 即位式 帝冠・帝笏継承 新皇帝発布 諸侯引見 爵位授与
1日目 午後 各国国王謁見
2日目 終日 各国国王謁見
3日目 終日 諸侯謁見
4日目 終日 諸侯謁見
5日目 終日 諸侯謁見
1日目の午前中が山場だ、式典自体は儀式に過ぎないが、新皇帝の施策として領主たちが望まぬものを矢継ぎ早に発表する予定だ。
それを除けば、延々と謁見の間で他国の王や領主どもの挨拶が続くということだ。
アメリア連邦の国王が29カ国、貴族である諸侯は80名ほどいる。
謁見といっても、それぞれの後半は話もせずに顔見世だけになるだろう。
1日目から4日目までの夜は毎日晩餐会がある。
無論、全員は入れないので序列に応じてと言うことになる。
1日目はアメリアの主要国の王とその妃が対象。
2日目は残りの国のうち、主だった国の王とその妃が対象。
3日目、4日目は貴族の爵位に応じて、参加できるものが決まる。
入れそうで入れなかった貴族は非常に悲しむらしい。
晩餐会は無駄に広いダイニングルームがやっと活躍できる。
いつもは俺一人だが、40名以上は入れるはずだ。
料理長はメニューの確認を兼ねて、俺に色んな料理を毎晩出してくれている。
どれも美味いので全く問題ないのだが、本人が納得できないようだ。
次から次へと新しいものを出す。
確かに、やつらにとっては一生に一度あるかどうかの晴れ舞台だ。
気合が入るのも仕方がないだろう。
晩餐会で問題になったのは、黒狼と白虎の食事だ。
やつらは警護のために、俺から離すわけには行かない。
食事はいつも俺と一緒だが、さすがに晩餐会ではまずい。
親友達が肉を味わう音はそれなりに迫力がある。
二人には、別の場所で食べてもらってから部屋に入ってもらうことにした。
各国国王との晩餐会では、他国の国王がいる手前、2国間での突っ込んだ話は難しい。
おそらく、当たり障りの無い話に終始するだろう。
他国の王がせっかく来ているのだから、もっと話をしたほうが良い。
頭のヤツはシュノウカイダンだと、言い続けている。
「ハンスよ。アメリアの主要5カ国の王と個別に話をする時間を作ってくれぬか?」
「謁見以外でと言うことでございますか? 時間的にかなり難しいと思いますが・・・」
「謁見の時間を削れ、どうせ社交辞令で終わりじゃ。主要国以外は各国10分以内で構わぬ」
「かしこまりました、あらかじめ各国の公使と打ち合わせをさせていただきます」
「うむ。頼んだぞ」
せっかくアリス達と学んだ知識もある。
何かで役立つかも知れん。
■リーブル宮殿 図書館
今日はお茶と茶菓子を持ち込んでの勉強会だ。
アリスとマリーナも俺が文字だけが苦手なことを理解したようだ。
文字を教えるときだけは3歳児相手に説明してくれる。
しかし、何故こんなに文字だけが苦手なんだろう?
恐らく頭の中のヤツが苦手だったのだろう。
「陛下、本日はアメリア連邦の成り立ちについて、覚えていただきます。」
いつのまにか、文字学習は片手間で聞き取り中心になっている。
だが、それで良いだろう。
文字は即位式の後にゆっくりと・・・
アメリア連邦はもともと、リーブルとフランの二国同盟が土台になっている。
帝国と常にやり合っている二国が手を組むのは必然だった。
両国とも帝国と組めばもう一方の国を征服できるが、征服後に自国が残るとも思えない。
帝国はそう言う国だ。
リーブルとフランは軍事同盟を元に、帝国と領土を接しない国を説得と恫喝により、連邦に組み入れていった。
リーブルかフランが破れれば、帝国と領土を接しない国もヒトゴトではない。
軍事力の弱い国ばかりだ、一瞬で帝国に蹂躙されるぞと説得した。
説得が通じなければ、リーブルが滅ぼすと脅しをかける。
各国も最終的には同意して、今の連邦が成立している。
連邦参加の各国は独立しており、形式的には対等の立場となっている。
リーブルに各国の公館があり、連邦で取り決めが必要なことは公使が出席する会議で協議して、各国へ持ち帰る運用としている。
連邦とは言っても、実質的にはフランとの2国同盟を他国が経済的に支援を受けているだけとも言えるだろう。
2国以外は結びつきが緩やかだ。
だが、帝国の侵攻を食い止め、いつの日か倒すためには、アメリアの結束をもっと強くして、それぞれの国が役割を果たす必要がある。
そのためにも、主要国との会談は重要になってくるだろう。
即位式は面倒だが、俺が生き延びるためだ。
この機会を有効に活かそう。
「アリスよ。いろいろな国の資料を見て、どの国が一番良い国だと思うか?」
「良い国でございますか? やはりリーブルが一番なのではないでしょうか?」
「どうしてそう思うのじゃ?」
「やはり、一番大きいですし、サウザンドのように食料には困っておりません。」
「マリーナはどうじゃ?」
「私もリーブルが一番良い国だと思います。」
なるほど、世辞も入っているだろうが、貴族達はこの国の行く末に不安を抱いてはおらんのだろうな。
そうだと良い。
俺もそう思いたい。




