主人公ケース①「ハルカ」:サンドラにて
次の項以降投稿したらあらすじとかも変えていきます
【過去】時刻は午前0時を過ぎた頃―――
室内の明かりもつけず薄暗い部屋の中、唯一の光源である液晶画面から光が伸びている。
液晶画面に映し出されるのは「名前」「種族」「性別」「フェイスタイプ」などの言葉の羅列と、その言葉に基づいて変化したゲームキャラクターの姿である。
種族は「ヒューマン」、性別は「男」、その他細かく設定され選択された言葉のとおりのキャラクターが液晶画面で悠然と佇んでいる。
その姿はどことなく画面の前、操作を行っている人物に似た姿をしていた。
画面上のすべての項目を選択し終え、最後に完了ボタンを押すと画面上にメッセージが表れる。
「以上の内容でキャラクターを作成し、ゲームを開始します。」
「よろしいですか?」
➤はい いいえ
矢印が選択したのは―――
【現在】時刻???―――
いくつもの風景が頭の中を通り過ぎていく。風景は瞬きするごとに切り替わり、思考は大樹の枝のように展開しまるでまとまりがない。
これはいつも眠りにつく前に陥る状態だ。それならば不安がることもない。
この風景の切り替わりを俯瞰し、思考を追うことを放棄すればいつの間にか朝になる。
昨日の自分を昨日に置いてけぼりにし、また今日の自分を置いていくために明日が来る。
夢なのだから―――
夢なのだから――
夢なのだから―
コンコン、コンコンコン
思考の端で音が煌めく。その煌めきに少しだけ夢からの覚醒を許しそうになるが、まだ思考の大半は夢に注がれている。まだ覚めたくない。
ドンガンドンガン!!
「ウェアァ!?」
不意な轟音にまどろみは弾け、あまりに唐突な覚醒からか俺は甲高い声で悲鳴をあげた。
見慣れない部屋、見慣れない家具、意味のわからない状況。そんな一つとして俺の心を平常にしてくれない状況の中、見知った声が部屋のドアを開けて入ってきた。
「なんだよハルカ、いるんならさっさと返事しろって…の……」
部屋に入ってきたよく知る顔を見て更に俺の心は平静を取り戻していく。
その姿は俺のよく知るボーイッシュな少女、ユウキだった。
服装は普段着ている服とは少し違うようにも思えるが、その見慣れた生意気そうな顔は不思議と俺の心を安心させた。
「なんだよじゃねえよユウキ、起こすんならもうちょっと静かにしてくれよ…」
「はぁ!?最初のノックで起きなかったのはハルカじゃん!……てかさ」
「はい?」
「あんたホントにハルカなの?」
怪訝そうな顔をしたユウキがドアから半身を出し俺の顔を覗き込んでくる。
「?」
そんな訝しむような視線と態度に俺の頭にも<?>が浮かんだ。
この少女はいつも突拍子のないことをして周りを騒動に巻き込んでばかりいるが、竹を割ったような性格であまり深くものを考えず、こんな顔を俺に向けてくることも珍しい。
こちらも多少不審に思いながらも、今の状況を見知った少女に問いただす。
「何いってんだかわかんないけどとりあえず、ココどこ?今何時?お前のその格好何?」
また甲高く上ずったような声で俺は矢継ぎ早に質問をまくし立てた。
が、彼女は質問に答える気も無いようで困惑混じりに口を開く。
「そのクッソムカつく態度はハルカに間違いなさそう……あんた、ちょっとそこの鏡で顔見てみなよ」
そう言って部屋の隅にある姿見を指差し示す。
そういった彼女の意図がいまいち掴めず、とはいえ彼女の珍しく真剣な表情に気圧されて姿見を探す。
姿見を認めて、ベッドから腰を上げる。
(あれ?床との距離がいつもの感覚より近い気がする。)
いつもと違う体の縮尺に違和感を覚えつつも、姿見の前に進み出る。
足元にばかり違和感を覚え、鏡を見るために顔をあげた瞬間―――視覚情報と認識とが著しく乖離した。
視覚情報というロケットが認識という地球の大地を離れ、月を過ぎ遠く火星を∪ターンして再加速!第三宇宙速度で地球に衝突した!
「…」
「……」
「………ッ!」
「なんじゃあああああああ!!!コリャアあぁあぁあ!!!!!」
女
女
女女女女女女女女女女女女女女
女 女
女 女
女 女
女 女
女 女
女女
女 女
女 女
甲高い女の声が部屋中に響き渡った。