煙管の烟
すぴぃ、と吐き出される副流煙を、強制的に吸わされる。「だいすき」河川の流れのやうに噓を吐いて毒の烟を吸う。「そんなこと言って……どうするつもりかい」父は少女の首筋を、血管を確かめるかのように撫であげ、引き寄せる。軟軟とのたれかかった少女は胸板に耳を押し当て眼鏡の隙間を見つめる。父は蔓を持ち上げ、その腕で細い手首を握りしめた。「近寄ってくるのは反則だよ」そっと白煙の気流を見出し「誘って来たのに」口を結び反論する。腹を蠢かせ、周辺の煙の濃度が上がる。「誘ってなんかいないよ」銀の灰皿にこつこつと当てる。「お父様」父の体を更にソファへ沈み込ませる。「だいすき」言葉に応じ、強く抱きしめ返す。
短くなった煙草を、フィルタぎりぎりまで喫された煙草を、灰の中に埋める。左手をそっと動かして額を遊ぶ。
「ただいま」父でも、少女でもない。「ああ、おかえり」
二層目の戸が開き、黒縁眼鏡の女性が入ってきた。「ああ、寝てしまったのね」少し視線を落とし、分厚いレンズ越しに睨む。「またそんな近くで煙草吸って……体に悪いって言ったのに、まだ若い娘の身体に影響したらどうするの」「いやいや、ごめんって」「まあいい。早く準備したほうがいいんじゃないの」「ああ」そう言い、父は布の山から下着を引きずり出し扉の奥へ消える。「ところで、」そこらにあった杖を取り回しかこんと。「何も、なかったわよね」慣れた動作で少女の首元に寄せる。「はい、何も。何事も変わったこともありませんでした」「ならいいけど。お休みなさい、もう遅いのだから」杖を壁に立てかけ、彼女は階段の上に消えていった。
習作でした。




