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社畜OLと幽霊

作者: 江菓

私は、俗に言うブラック企業ではたらく20代の女社員だ。残業はあたりまえ、残業代が出ないのも当たり前。上司の1人は男性社員に暴言や暴力を毎日のようにしている。また、違う上司は女性社員のお尻を触ったり、恋人の有無や「君、胸大きいね」「今日2人で飲みに行かない?」などを聞いたりする。パワハラ、セクハラもあたりまえ。いつも会社に行く度「本当にこの会社、ブラック企業の鏡なんじゃないか?」と思う。まだ入って1年目だがもう辞めたい。でも、3年はここで務めようと決めているから、死なない程度に頑張ってお金貯めて、どっかでお店でもしたい。そう思ってお金を効率よく貯めるため、安いおんぼろアパートに引っ越した。どうせ残業でなかなか家に帰れないのだ。住所があればそれでいい。ボロくたって、エアコンとかがなくたって、家より会社にいる時間の方が長いから気にしなくてもいい。不動産屋さんには「本当にここでいいんですか?」と何度も聞かれた。他にも何かいろいろ言われたが聞かずに「大丈夫です。」でごり押した。その経緯をへて、現在引っ越してから部屋に入るのは久々である。久々の残業なしで「家に帰ったら速攻で風呂はいって死んだようにベッドで寝る」ということをする。ウキウキしながら、鍵を開けた。リビングに行くと、机の上に出来たての焼き鮭とみそ汁、白いご飯が綺麗に並べられ、今すぐ座れば食べれる状態だった。「なにこれ・・・めっちゃ美味しそうやん・・・ん?なんか落ちてる。」

お箸の近くに紙切れが添えられているのに気づき見ると、綺麗な文字で「いつも、お仕事お疲れ様。引っ越してきてそうそう夜遅くに帰ってきては死んだように寝て、朝早くに起きて、着替えたりしてすぐ出ていっちゃうから心配したよ?今朝「今日は早く帰れる・・・」って呪文のように言ってたから頑張ってご飯作ってみたよ。口に合うかわからないけど食べてみてくれると嬉しいな・・・。幽霊より」と書かれていた。

「えっ・・・めっちゃいい幽霊やん・・・。ありがたくいただきます!!」

すぐに机に向かい、ご飯にがっつく。コンビニ弁当やコンビニのおにぎりばかり食べていた体に久しぶりに人が作ってくれたご飯が入る。熱々のご飯とみそ汁は冬の寒さで冷え切った体と職場の冷え切った空気で凍った心をあたためてくれた。焼き鮭は塩が程よくきいていて美味しいという感想しか出てこない。

「ん〜!おいひい!ありがと!」

幽霊が聞いているかは知らないがご飯の感想と作ってくれた感謝を言った。美味しくて、すぐに食べ終わった。ご飯粒ひとつ残さず完食した。

「ごちそうさまでした!あー美味しかったー!久々に手料理食べたなー。本当にありがとうね。」

食器を流しに置き、お風呂からでてから洗おうと考えた、お風呂にいった。

脱衣所にいき、服を脱ぎながら「今日もシャワーか・・・別にいいんだけど。今度お湯貯めようかな〜」と考えていた。お風呂のドアを開けると、もくもくとあたたかい湯気が体を撫でながら外に出ていった。

「えっ!?あっ!!!」

湯船を見ると、おゆが張っていた。手を少しつけるとちょうどいい温度でとろけそうになる。

「あ〜さっさとシャワーを浴びて浸かろ!!」

いつも以上にはやいスピードで髪と体を洗い湯船につかる。思わず「あ”〜!!」と声が出てしまうくらい気持ちいい。冷えきった足の指や手の指がジワジワあたたまり、ジンジンする。「やっぱお風呂っていいな」と再確認する。

「これも幽霊さん?ありがとうね!本当にありがとう!」

そう言うと、湯気で曇った鏡にさっきの紙切れに書いていた文字で「喜んで貰えて嬉しい!湯加減は大丈夫?」

「熱過ぎず、冷た過ぎずでちょうどいいよ!最高!」

「良かった!頑張ったかいがあったや!」

「本当にありがとうね!」

お風呂であたたまり、幽霊さんの優しさで心をあたため、お風呂からでて寝巻きに着替える。髪を軽く乾かし、寝室に向かった。

寝室に行くと実家から送られていた小型のヒーターがついてポカポカしていた。なぜか程よく濡れたタオルがハンガーにかかった状態で枕近くに干してあった。

「うわぁ〜!ありがと〜う!はぁ〜暖かい!あれ?なんで濡れタオル?」

そういうと上から紙切れが落ちてきた。手に取りみると、あの文字で「喜んで貰えてよかったー!濡れタオルは加湿器の代わりみたいな感じだよ!喉壊しちゃ仕事に集中出来ないからね!」と書かれていた。

「や、優しすぎるやろ!!もう好き!家のこと任せたい!」

いい子すぎる・・・と思いながらベッドに倒れるように眠った。あっ、スマホの充電してないや・・・食器も洗ってない・・・ま、いっか・・・

次の日、目を覚ますとスマホは100%になっていて、着替えて荷物を持ち寝室を出ると机の上に朝食のトーストとヨーグルト、サラダがあり、お昼ご飯のお弁当まであった。

「うぅ・・・嬉しすぎて泣きそう・・・」

お弁当の上には、「おはよう!お仕事頑張ってね!」と書いた紙があった。

「ありがとう・・・。」

そう言って、朝食を食べて食器を流しに持っていく。昨日の夕食の食器は綺麗に洗われていた。お弁当をカバンに入れ、家をでた。家に帰る楽しみが増えた。

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