第2部分 プロローグ②
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2020年4月16日:Ver.6に改稿途中です。読みやすくするためにご協力ください。
2020年4月18日:Ver.6に改稿完了しました!ありがとうございます!
布団から体を起こし、伸びをしながら独り言を呟く。ただ、どんな夢だったかいくら悩もうとも思い出せなかった。とても大切なことを話された気がするが思い出せなずもどかしい様子。
「思い出せない。それと今日はいつもよりもお腹が空いているな」
「今日も友達来るんでしょ!」
「はぁい!」
「朝食を食べて仕事場に行かないと」
ぼやけていた視界が母の貫禄ある罵声で一気に覚醒する。
ー・ー・ー
「全然足りない!」
「文句言わないの、こうしてる間にも敵地で闘っている方がいるのよ」
「....」
私の子供の頃は、お腹いっぱいになるまで食べられた記憶が朧気にある。今となっては、家では食べ物のことばかり考えている。お菓子類なんて7年は久しく食べていない。
「さてと、もう行かないとな」
「いってらっしゃい!」
「ああ、春香も頑張るんだぞ」
家でゆっくりしていると仕事の集合に間に合わなくなる。なぜ勉強ではなく働かなくてはならないのだろうかといつも思うが状況が状況だ。仕方ない、その一言で片づけられる。父上を見送り、また出発する準備を再開する。
ー・ー・ー
「はるちゃん。今日も一緒に行こうよ」
「あっ、ゆい!いいよ」
春香に自分のことを気がついてもらえるように大きな声で呼ぶ。自分を呼ぶ声が、後ろから聞こえたので振り返る。そして呼んだのがゆいだとわかると笑顔で返事を返す。
ゆいの提案に賛成というように笑顔で返事を返す。
「いいよ〜うちも一人で寂しかったんだ」
そうして、何気ない会話が広がっていく。
「一人でいると辛いよね〜」
「だよね〜」
頷きながら、ゆいの言葉を肯定する。ゆいは何か思い出したようで突然カバンを探り、小さな小瓶を取り出す。
「両手前に出して」
「いいけど…」
「これあげる」
「いいの?貴重なモノなんじゃ…」
「いいよ~」
手渡されたのはなんと貴重な砂糖が使ってあるみかんピールが小瓶に入っていた。春香の表情を見るに嬉しさよりも貴重なものであるがゆえに困惑の方が勝っているようだった。
「みかんの実の部分じゃなくてごめんね」
「全然いいよ!こっちの方が長持ちするし!」
「よかった~」
「大切に食べさせてもらうね」
「うん、大切に食べてね」
自分の作ったものをほめられ、素直に喜ぶゆい。ゆいからもらった小瓶を誰にも見られないようにこっそりカバンにしまうのだった。
―・―・―
空襲警報に合うこともなく、無事に目的地である学校の校舎が見えてきた。
「ゆいぃ~今日も大変な1日が始まっちゃう」
「そうだね~やだねぇ」
「なんで私たちまで巻き込まれないといけないんだろう」
「戦争を始めた人たちだけでやっていればいいのに」
私たちはとても不幸だ、とばかりに不満げな口調でゆいを見ながら話しながら歩いていく。相槌を打ちながら同意するゆい。さっきの笑顔はどこかへ行ってしまっていた。
「....頑張るしかないよね」
「そうするしか選択肢は他にはないよね」
「じゃあ、今日も頑張ろうね」
「そうね、お互い頑張りましょう」
腹をくくっているようではあるが2人は諦めや疲れが見え透けるような表情で、敷地の中へと入っていく。
ー・ー・ー
学校に着くと、つかの間の友人らとの会話で盛り上がった。時間になるとその友人らとの楽しそうな声も次第に消えていく。
「今日は戦闘機を作るときに使うこいつ....え〜っと....あれ?この部品はなんだったっけ?」
「鋲、鋲ですよ」
「ああ、そうだったな....鋲を悪いものと良いものに選別してもらう。わかったか!」
《はいっ!》
「じゃあ開始!」
補佐に耳打ちされ思い出す。気を取り直し、皆に伝わるように大きな声で怒鳴る。その罵声に生徒も大きな声で返事をする。彼の合図と同時に、良い鋲と悪い鋲を選別する金属の擦れ合う音が聞こえ出す。
「もう目が疲れてきた。一緒に見える」
「組み立てよりは重労働ではないからいいんじゃない?」
「だけどさ、一定のことをずっと繰り返していると頭がおかしくなりそうじゃない?」
「今は、まだ大丈夫だな。まだ正常な判断をすることができる」
春香は、自分の判断がまだ鈍っていないことを確かめるかのように独り言を呟く。その言葉に反応した隣に座っていた友達が手を緩め、心の内を話し始める。
「おいっ!そこっ!今適当にやっただろう。やり直しだ!」
「はっ、はいっ!!」
「....ダメだな。こっち来い!」
威勢の良い返事をし、理解したことを必死に現場監督官に伝える努力も虚しく、指導のため引きずられていく。
「もう、やめてよね....」
「助けてくれてありがと」
「いいよ。その代わり選別した鋲をちょっともらう」
「わかった~」
その様子を見ている春香の目線を強引に下に向ける。横目で見ると指導するための懲罰室に連れていく前に見ている人がいないか辺りを見渡したのだ。手を止めて見ていることがバレれば自分も指導対象になりかねない所を間一髪救われたのだった。
ー・ー・ー
「ん?」
怒るとやたらと長い説教をする人の時間だったが意外にも短く、帰ってくる人にはいつも涙があったが今日はその涙がなかった。私が叱られた時はやたらとお説教が長かったし、叩かれるわで羨ましいと思うのだった。
午前中の担当の人はとても厳しいのだが、午後から担当してくる人はとても優しいのでみんなからは喜ばれている。私もまだ怒られたことはない。
でも怒ると非常に怖いため、一部の人からは恐れられているようだが、それくらいの方が威厳も保つことができるから私はそれでいいと思う。
2時間くらいやったとこくらいだろう。だんだん目が疲れてきた。選別し終えたと思っても次から次へと新たな鋲が机の上に広げられる。この繰り返しは、流石に頭がおかしくなるかと思った。
周りの人も同じ境遇なのだ。だから、自分だけ楽するわけにはいかず、また選別を始める。
あと少しで昼食の時間だ....頑張ろう。
昼食の時間、それは唯一の楽しい時間である。
友達と喋ったりするのは本当に楽しい。自分の話を聞いてくれて同感してくれる人がいただけで救われる感じがするのだ。
だからこそ、会話は本当に偉大で素晴らしいと思う。
できたら私の子供の頃のような平穏な生活が良かったが運命というものもあるだろうから。
明日を悲観して生きることは本当に辛い。でも、明日も生きようと努力する人には本当に感銘を受ける。
でも、ある視点からだけでなく様々な視点から見ることによって平穏な世界では決して気がつくことがないものがきっとある。
「運命」たったその二文字だけで決めつけるのはおかしいだろうが運命というものは実に不思議なものであると私は思う。あぁ、そう考えているうちに楽しい楽しい昼休みが終わってしまった。休み時間は、もっとあってもいいくらいだ。
「頑張りますか!」
[また鋲の選別か....一定の部位だけが疲れるからこれはこれで辛い]
頬を叩き、自分に気合いを入れ自分の席へと戻るのだった。
ありがとうございます。m(_ _)m