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異世界は生きている  作者: 宮原 匠
第1章 驚異的な適応能力
43/409

第37部分 より深みへ

2965字 (メモ)


旧:2,965字 ⇒ 4,036字 (1,071字 UP!)


旧サブタイトル:ダンジョンに潜入!


 迷宮の中は明るく、目の前には森が広がっていた。ただ地上と決定的に違うところがある。


「ここは迷宮?まるで地上みたいだ」

「上見てみな」

「天井?」

「ああ、ここは迷宮だ。地上の森と見間違えるほど精巧に作られている」

「比較的狭いし、探索されつくしているから一気に進んでいこうか」

「一足先に入った同業が罠も軒並み解除しているみたいだけど油断しないようにね」

 1層に関しては歩き慣れている彼ら彼女には地図はもはや不要なもので、言葉通り一切の迷い無しに突き進む。


「あった!」

「よし、2層に進むぞ」

「まだ入ったばっかりだよね?」

「この調子で3層まで一気に行こうか」

 しばらく歩くと広い空間になり、メルタの指さす先にはハルが学校で教えてもらったことのある見覚えのある装置。そう、次の改装に進むための転送装置だ。


「まずいっキラー・ビーだ!ハルは下がっていろ!」

「メルタ!フリット!いけるか?」

「任せといて!」

「任せておけ」

「動きが早いな、ハル!隅でじっとしてろよ」

「わっ、わかった」

 生み出されたばかりでないのか、動きが素早く苦戦している様子をすぐさま察したダッチも前線に出る。


「仲間を呼んでいるぞ!こいつらを始末し終わったらすぐに2層へ行くぞ!」

「この時間帯は再度発生するのか?」

「知るかよ。とにかく行くぞ!」

《了解!》

挑発展開アトラクト・フィールド!メルタっ、頼んだ!」

「ふっ!」

 フリットとメルタに向けていた敵意を、ダッチが展開した魔法によりまるで引き寄せられるかのように敵意をむき出しにして向かう瞬間をメルタの繰り出した斬撃が魔物を両断する。


「スルネイン!なるべく早く頼む」

「もう遠くから羽音が聞こえるな....」

「じゃあなおさら急ごう」

「あったぞ、ハルも行くぞ」

「はっ、はい!」

 頭部をかち割って拳程度の結晶を取り出し、すぐさま2階層目に進む転移門でワープする。結晶を取り除かれたキラー・ビーは塵になり四散する。


ー・ー・ー

 無事転送装置で2層目にやって来たダッチらのパーティ。戦闘後なこともあり、手拭いで額や体にかいた汗をぬぐう。


「いきなり面倒なやつに遭遇してしまった....」

「見ろよ、思った通り大きいよ」

「ああ、先発隊の取り残しかな」

「そうじゃない?」

「久々だな、こんな大きい魔虫石」

「ハル、実物を見るのは初めてか?」

「綺麗な結晶」

 掌の中で転がしてみる。表面はザラメをまぶしたかのようなあの魔物から採取できた物とは思えない美しい見た目をしていた。


「昆虫系は頭部だから覚えておくといい」

「わかりました!」

「怪我している奴いるか?」

「汚れている人~」

「見て分かるでしょ!」

掃除クリーニング、これでいいか?」

「最高よ!」

 言うまでもなくキラー・ビーの体液で汚れているのにわざわざ聞いてくるスルネインをにこやかに睨む。服や腕に着いた汚れをきれいにする魔法を掛けてもらいうれしそうだ。


「これ拾った。多分落としていった奴だけど」

「いいじゃん!欠片でも売れるしな」

「これは貰っていいよな?」

「いいよ。さすがに取り上げないよ」

「一応ってやつよ」

 フリットの掌の上には爪くらいの大きさの魔石の破片。あまりにも小さいと売れないが爪くらいの大きさであれば買い手もつくので拾ってきたようだ。


「さて、気を取り直して2層の探索を進めようか」

「1層よりも注意を払って進もうな」

「さっそく罠を見つけた。一見普通の石畳に見えるけど踏み抜かないようにね」

《はーい!》

 指さす先には普通の石に見えるが、優秀なスルネインが言うのだからその通りなのだろう。いきなり罠があったことで緊張が走る。


「嫌がらせか?ここから先はもう発動させてしまいそうな罠は解除されているみたいだ」

「そうなの?でも油断は禁物だよね」

「どんどん進もう!目標は2層じゃないからな!」

 1層でキラー・ビーに遭遇するアクシデントに見舞われたが、ダッチらのパーティは着実に下の層へ歩を進めていく。


ー・ー・ー

 2層の中盤に差し掛かったころ。ダッチがパーティに休憩をしないかと提案し、しばらく休憩することになった。


「水はダッチが持っているのか?」

「そうだよ。ちょっと待ってて」

「俺が見張りをしておくから、みんなは先に水分補給していいぞ」

「ありがとうスルネイン」

「助かるわ〜」

「俺も飲みたいから、早く飲んじゃってくれよな」


「生き返るな」

「喉が乾いている時に飲み水は別格だよ」

「確かにそうだな」

「早く飲みたい」

「スルネイン、そんなに警戒しなくていいでしょ。まだ2層目に降りただけなんだよ」

「いや、その心の緩みが死につながりかねないからちゃんと見ておく」


「スルネインは、こういうところだけはしっかりしているのよね〜」

「いいことじゃないですか」

「スルネイン、見張り交代するよ」

「おっ、フリット助かるよ」

 スルネインも水分補給をして少しの休憩を挟んだ。3層に向けて進み始めるもすぐに先頭を行くスルネインが静かに来た道を下がるよう合図を送る。


「どうした?」

「ゴブリンだ。しかもそれなりにいた」

「それなりにって何頭だよ」

「目視、15体かな。いやもっと奥にいるかも」

「多いな、不安要素もあるから接敵せずにいくか?」

「回り道をしてもいいが3層に行くのは明日になるぞ?」

 何通りか行き方はあるもどれも今から引き返して進むよりは強行突破を図ったほうがよい判断ではないかと首を横に振る。


「行ける?」

「ダッチに任せる」

「突撃と同時に探知魔法で個体数を把握する」

《了解!》

「行くぞ!」

 装備を再度点検し、パーティ全員の確認を取る。ダッチの合図と同時に走り出す。


「21体だ!」

「多いな!」

「ハルは戦えるのか?」

「ギラン先生と互角だからいけるさ!」

「ちょっ、実戦初なんですけど!あいつ~」

 すぐさまフリットが探知魔法を使い、個体数を確認。全員に大声で共有する。どのみち探知魔法は魔石を持つ魔物に共鳴するため使った瞬間からゴブリンも慌ただしくなる。


「迅速にかたずけろ!」

「わかってる!体制を整える暇を与えるな!」

 低い階級でも倒すことが出来る魔物の扱いを受けてはいるが数は脅威。スルネインが感じている不安要素もあることから一心不乱にゴブリンを葬ってゆく。


「これがゴブリン。写真よりも意外とかわいいのは?」

「ハルっ!厳しくなったら言えよ」

「ありがとう!剣道の要領で行けるだろうか....ん?」

 今までの経験をすべて思い出しながら全身全霊の一撃をゴブリンに叩き込む。一瞬硬い何かに当たった気がしたが、気にせず振りぬく。


「両断かよ。筋いいな」

「ギラン先生と互角は納得だよ」

「少し動きがぎこちないけど修正の余地は十分あるね」

 スルネインの誉め言葉を片耳で聞きながら、もう一体。また一体と切り裂いていく。


ー・ー・ー

 乱闘にも近い戦闘もやっと一区切り付き、ゴブリンの亡骸を数えやすいように一か所に集める。


「....おかしい。20体しか死体が無い」

「本当か!探知魔法サーチ・マジック

「ぐっ!」

「スルネイン!」

「スルネイン!離脱しろ」

限界突破リミッター・ブレイク跳躍斬撃ジャンプ・スラッシュ!」

 革の鎧を突き破る鈍い音が聞こえた方向を見るとスルネインが地面に倒れ込んでいる。ダッチは目にもとまらぬ速さでスルネインに害をなした魔物の命を刈り取った。


「もう一度探知で確認しろ!」

「わかった....こいつで最後だ!」

「了解、急いでスルネインを治療する」

「こんな事なら帰還するスクロールを買っておくべきだったか....」

 再度念のため探知魔法で周囲に共鳴する魔石がないか確認する。攻撃を受けたスルネインの容体は刻一刻と悪くなっていくのが目に見えて分かった。


「スルネイン!死なないでっ!」

「どけ、ロース!フリット、俺が鎧を脱がすとっ同時に患部に布を突っ込め」

「わかった!」

「行くぞ!」

「あぁ....」

「まずい、気絶してしまった!」

「これを使って!」

「なんでこんな高価なものを....恩に着る!」

 ダッチは鞄を漁るも手持ちはどれも安いポーション。こんなのを使っても気休めにもならないことを知ってはいるが使うべきか迷っているときにハルからポーションを差し出される。


「スルネイン!スルネイン!」

「凄い効果だ....死んだか?」

「縁起でもないこと言わないでよ!」

 涙でぐしゃぐしゃになったロースは余裕そうなフリットを力いっぱい殴る。当然フリットは顔をゆがませ悶え苦しんでいた。


「うぅ....うるさい」

「文句を言う余裕があるようだ」

「ふふっ、スルネインらしいね」

「本当によかった無事で」

 ハルの差し出したポーションの高価は凄まじく、みるみる回復しもはや奇跡と言っても過言ではないほどだった。


「ハル、なんだあの高価なポーションは!」

「もらった」

「「「もらったっ!?」」」

「いや、ハルは俺たちに気を使わせないようにそう言っただけだろ?」

「なるほど、そうだったのか」

「後でしっかり代金を払わせてもらうよ」

「えっ、ほんとに....」

「なんていい奴なんだ!俺は久々に感動したよ」

 ことが落ち着けば質問攻めにあうハル。素直にパーティ仲間にもらったと言うも、遠慮してそう言っていると盛大に勘違いされハルの株はストップ高になるほど急上昇したのだった。


「さて、魔石だけ回収したら一度戻ろうか」

「あれだけ大きな傷だったから一応見てもらうべきだよな」

「....バラムレイン工房のポーションだから完治してそうだけどね」

「一応だよ」

 自分の命を救ってくれた地面に転がる高ランク冒険者御用達のポーションの空き瓶を拾い上げ、スルネインは眺めていた。


「みんな済まない....俺が負傷したせいで」

「気にするな。フリットこれをいつものように埋めておいてくれ」

「わかった」

「一見ただの石に見えるけど、これが転送石だよ」

「使用は一度きりだけど結構高いよね。見るかい?」

「これが転送石。実物を見るのは初めて」

「ハルにとっては初めて尽くしだな」 

一見変哲もない石ころのように見えるが目を凝らしてみてみると細かく細工が施してある。この細工によって効果を発揮するのだろうと思うのだった。そして、来た道を戻り始めた。




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