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異世界は生きている  作者: 宮原 匠
第1章 驚異的な適応能力
41/409

第35部分 練習と

旧:2,683字 ⇒ 新:2,893字 (文字数210字拡張!!)


サブタイトル変更しました。変更前:密偵の最期

ー・ー・ー


 昼食を食べ終え、限られた者しか入ることが出来ない訓練場へ一堂に会していた。


「陛下、これが完成品の銃でございます」

「模造品は見てきたが実物は重いな。素材は?」

「主に鉄とミスリルです。重さの要因としてはミスリルによる影響でしょう」

「軽量化したといったがこれが軽量化後?」

 普段から鍛えているつもりだと自負しているつもりだったがそれでもなお重いと思ってしまうほどの重量に再度技術者に確認する。


「近年発見された鉄にマンガン鉱石を少量混ぜることによる剛性化を図っており、重量あるミスリルの使用を最低限に抑えました」

「日々訓練していれば扱えるようになります」

「....そうなのか?いさか機動力に疑問を覚える、使う人の身にもなってやらねばいけないからな」

「その気配り、さすがです陛下」

「もういいから、恥ずかしい」

「陛下が始めたことですよ?」

「わかってるわ!」

 専門用語を並べられ、王はいまいちよくわかっていない様子だった。だが技術者がああいうのだから専門分野ではない以上、口出しせず引っ込んでいるのが筋だと分かっているようだ。


「これをどうぞ、耳を保護する装備です」

「装填完了しました。あちらの的を撃ってみてください」

「ありがとう。おっ、音が聞こえない!」

 部下が何か自分に対し喋り駆けているようだが、自分が発している言葉以外何も聞こえないことに興奮気味になっていた。


「....外しましたね」

「もう一回!いや、あと10回やらせてくれ!」

「....わかりました」

 構えて引き金を引く。反動で後ろによろめいたせいか天井を貫通して一筋の光が差し込む。方の痺れと同時に今まで扱ってきた武器にはない高揚感を覚える。


「ん?あっ、ちょっと!」

「奪い取れ!早く!」

 2発目、先ほどと同様に引き金を引くがあの反動が無く、疑問に思うのもつかの間。力いっぱい構えていた銃を奪われ近くに合った穴に入れられた。


「何が起きた?」

「着火不全です。もうそろそろだと思います」

「離れていてください」

「あの音だな」

 構えていた銃をもぎ取られた王は理解不能状態に陥るが配下の慌てようからことの深刻さを理解する。少し経つと鈍い音が木霊する。


「あれが戦場で起これば大問題だぞ?」

「今回暴発した火薬ロットはすべて破棄します」

「頼むぞ?自滅は最低限にするためにもな」

《ははっ!》

「回復魔法は?」

「いらん!気を取り直してやるぞ!」

「日を改めたほうが....」

「いやだ!まだやりたい」

 普段部下の言うことを聞き入れるがこの日は、銃に魅せられたのか珍しいわがままに顔を見合わせ陛下の意思を尊重することになった。


―・―・―

 それからは何事もなく射撃訓練は終わりを迎える。


「我が国の一般的な鎧もたった一発で貫通か。ただ命中精度が低い?」

「私やった時、一回で命中したよ?」

「俺は2回目!」

「....これが、主流になってきたら軍備の見直しをしたほうが良いかもしれんな」

「無視された」

「近い未来そうなってくるかもしれませんね」

「ん?なんか言ったかい?」

 ほかにも手を挙げている人も9回目でやっと命中した自分と同類はおらず部下の自慢は恥ずかしさのあまり聞く気すらなかった。


「....おや?」

「ちょっと~話逸らさないの!」

「君、名前は?」

「名乗るほどの者ではありませんのでお気にされず」

「これは何だ?」

 護衛の者から偶然にも怪しいと報告を受けていた顔があった。一度疑念を持ってしまえば心配性故に確かめたくなる性分。


「内ポケットから取り出された手紙が落ち葉のように地面に落ちる」

「なんのことでしょうか?」

「手を出せ、君のだろう?」

《なっ!》

「追え!逃がすな!」

 文官にはありえないほどの身体能力。明らかに跳躍力は鍛え抜かれた密偵のそれ。


「まいったな、鎌をかけただけなんだが」

「いや、あいつ少し王を見る目が変でしたから」

「どうして知っていたので?」

「色々と、ね。深追いは勘弁かな」

「戻りましょうか」

 頭を掻き、呆れると同時に幹部クラスに間者が暗躍していたことに深刻さを感じていた。


ー・ー・ー


 昼間かつ多勢に無勢、じりじりと距離を詰められ逃亡者は囚われの身となる。


「ほら、こっちに早く入れ」

「ちょっと怖くなっちゃって逃げただけだ!怪しい者じゃない」

「罪が晴れるまでの辛抱だな」

「あまり暴れられると困る。こっちも手荒な手段はとりたくないのに」

「がっ!」

 首根っこに鈍痛を感じると同時に意識が暗転する。力なく垂れ下がった体を屈強な男が牢屋に投げ入れる。


「ほら、早く起きろよ。いつまで寝ているつもりだ?」

「叩くな!くそ!痛いじゃないか」

「拘束させてもらったよ。だから君はそこから動くことができないんだよ」

 頬をぺちぺち叩かれて痛みで意識が覚醒する。膝や腕、上げだしたらキリがないくらい体のいろんな箇所が傷む。そんな自らの状況把握もつかの間。


「....お前は、誰だ?」

「ニードと呼んでいいぞ。今日からおまえの拷問に付き合ってくれる人だよ。よろしくね〜」

「ニード?ニード・ザンセフス....」

「僕の名前知ってるの?うれしいなぁ」

 目の前に裂けるような満面の笑みで見て来る。目の前の女と奥には薄暗くてよく見えないがもう一人いる気がした。だが彼女の名前を聞いた途端、明らかに呼吸が早くなる。


「さっそく始めましょうか!」

「見逃してはくれないよな?」

「そんなことすると思う?」

「....」

 笑みを浮かべていた顔が一瞬で無になる。あまりの外圧に縛り付けられている男は何も発せられないようだった。


「ちょっと、何も話せなくしちゃダメでしょ」

「おっと、危ない危ない」

「いや、もうやってる時点でアウト」

「厳しー!ねぇ、ちょっと緊張しただけだもんね、ね?」

「....」

 話し方からして奥に座っているのは話し声からして女性のようだ。そんなことを考えでもしないと気が狂いそうになる。


「君さ、所帯持っているね。間者の癖に所帯なんか持っちゃって弱みになることくらい習わなかったの?」

「外道がぁぁぁっ!どこでそれを手に入れた」

「うひょー!」

「家族は無関係だ!」

「でもね?心の片隅ではもう理解してるでしょ?」

「あぁぁ....」

「どれだけ情報を流したの?言ってくれたら指示を変えることも造作ではないよ」

 写真で顔を仰ぎつつ挑発するような口調で囚われた男に見せる。これには驚き、動揺、叫ばざるを得なかったようだ。


―・―・―


「どうするのですか?」

「指示は変えないよ、連帯責任だからね」

「もう一度発現の真偽を確認した後、遊ぼうかな」

「遊び....」

 その遊びたるこそ、惨虐のニードという異名を持つ所以。とてもじゃないが言葉に書き落とすのも躊躇われるほど惨く、そして無慈悲。


「さて、遊び相手を探しに行こうか」

「間者探しと言ってください」

「一緒に遊ぶ?」

「遠慮します。あなたのような快楽主義者ではないので」

「一回一緒にやったら気持ちよくなっちゃうかもよ?」

「なおさらごめんですね。では私は聞き取り内容を文書にしてきます」

「ぶ~釣れない子」

 間者探しにおいて好成績を出しているものの、少しねじのとんだ思考回路に彼女は苦言をしかめっ面で言い、執務室へ戻って行った。


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