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異世界は生きている  作者: 宮原 匠
第1章 驚異的な適応能力
38/409

第32部分 最良の選択

2020年3月29日:Ver5に変更途中です


旧サブタイトル:結局、自分に返ってくる


旧:3,174字 ⇒ 新:1,846字(1,332字減少)

 ハルがダンジョンに向かっている頃。裏路地の一角は不穏な空気が流れていた。その不穏な空気に1人吸い寄せられる。


「警備隊さん、あっちの裏路地に死体がありました」

「本当か、増援を呼ぶから少し待て」

「ありがとう」

 こわばっていた報告してくれた市民の顔が安堵からか綻ぶ。報告を受けた当の本人は最近多い死体の報告に少しうんざりしたように思念伝達テレパシーを使って仲間を呼ぶ。


「おーい!」

「昼間から増援要請とは珍しいな」

「ドルターさん、ありがとうございます。どうやら死体を見つけたらしくてね」

「裏路地か、無法地帯も多いから増援要請はいい判断だ」

 すれ違えるかどうかギリギリのところはそこまで無法地帯になる傾向は低いが広い場所は別。彼が指さした先はそれなりに薄暗く、奥に進めば間違いなく無法地帯だろう。


「水路橋の件で忙しいからなるべく早く解決しようか」

「「「了解!」」」

「案内を頼めるか?」

「あまり乗り気ではないですが....お任せください」

「ミューズさん?」

「俺の名前を何故知っているんだ」

「あなたの店のご飯今日も美味しかったですよ」

「お客さんとして来てくれたことあるのか、嬉しいね」

「旨いのか?」

「ドルターさん、彼の店の看板メニューは絶品だよ」

 水路橋の交通整備でただでさえ忙しいのでいつも以上に急ぎたいのか早口で喋っていた。忙しかったせいで昼食を取ることが出来ていなかった1人がふと思い出したように尋ねる。


「ふーん、今度行ってみようかな」

「お待ちしています」

「しかしなんでこんな薄暗い路地に行っていたんですか?」

「近道をして帰ろうとしていたんだよ」

「なんだか嫌なところですね。掃除も行き届いていないし」

「そうだな」

「あの角を曲がったところにあるんだ。私は、もういい。もう一度は見たくない」

「わかった、あまり離れないようにな」

 直感的にいつもの治安が悪いだけの路地裏とは雰囲気が違う。まとまって行動するが、現場付近になると思い出したのかミューズの足が止まる。


「あれ、か」

「美しいな」

「手練れだな、血しぶきが飛び散っていない」

「手際の良さにどことなく危険な香りがするよ」

「いつも通りの手筈で片付けようか」

 同じような現場を何件も目撃しているからこそわかる本件の異常さ。真相へ深追いすることを精神が警鐘を鳴らしている気さえする。


「終わった?じゃあ後は任せてもいいか?」

「ええ、こちらで処理を進めさせていただきます」

「一応だが住んでいる場所を控えてもいいか?」

「ええ、構いませんよ」

「ご協力感謝します」

 しばらく経ち、少し離れた場所で待つ第一発見者のミューズと合流する。


ー・ー・ー


 遺体を近くの詰めどころに運び込み、一応だが死因と登録されていれば名前が判明するはずだ。

「亡くなった人は、エルマン・ショーンですね....」

「貴族?」

「エルマン家に一人だけ確か破門になった方がいたようなのでこの人のことでしょう」

「ってことは、お尋ね者のベリアムなんじゃないのか?」

「父親がたまに来ていたもんな」

「彼は帰りを待っていたようだが叶わなかったか」

 定期的に息子が捕まっていないかと尋ねてきていたので割と警備隊の中ではエルマン家の知名度が高かった。


「客を食い物にした罰がくらったんだよ」

「一応このままだといけないから防腐効果を施そうか」

「不運な人ですよね。結構良い家柄なのに、落ちるとこまで落ちてしまうとは....」

「教育、子育ての仕方が悪かったのだろうよ」

 哀れみよりも蔑みの方が感情的に勝っていた。それだけショーン=ワーダンがやって来たことの罪が重くのしかかる。


「殺した理由ってなんでしょうかね?」

「荷物の中にお金が盗まれていなかったから、何かしらの恨みを持った人だろうな」

「その恨みは、白粉関係にありそうですね」

「その可能性が限りなく高いだろうな」

「とりあえず、エルマン家にショーンが亡くなったことを伝えに行かないとな」

「私たちは?」

「水路橋のとこに向かってくれ」

「「「了解!」」」

 陰湿な空気の部屋を新入りは元気に飛び出していった。


 静かになった部屋にドルターともう一人。言いにくそうに口を開く。

「ドルター、白粉が関わっているとすると推薦者関連かな」

「傷口を見てみろよ。これほどの手練れが裏方にいる組織だぞ?」

「深追いは危険か」

「ああ、下手に動けば家族に危険が及ぶ」

「見て見ぬふり、か」

「ええ、見て見ぬふりですよ」

 妻子あるわが身。正義感から動いた先輩の背中は見本にしたくもあったが皆短命だった。それを見てきた以上その選択が最善だったと言い聞かせる。


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