第27部分 闇の奥底に
4/27:一部を変更しました。
誤字のオンパレードで昔、スマホのキーボードで小説を作っていた時を思い出し懐かしい気分で改稿を進めました。(2024/5/25)
旧:3394字 ⇒ 新:3668字(274字 UP!)
サルベルシア女王国の王都の一角。各地のギルド支部長らが仲良く円卓を囲んでいる。
「では今から、冒険者ギルドの今後の方針等についての会議を行いたいと思う」
「いつも通り、進行は私が担当しますが異議のある方はいらっしゃいます?」
《....》
「では異議なしということで、私が担当します」
「お手元の資料は今後期待が持てる新規登録者名簿です。質問があれば挙手を」
グラーレンのギルド支部長は今回の会議については所用による不在の中で会議は進められた。何かしらの用事等で欠席する支部長も多かったので特に参加者も珍しさを少しも感じていないようだ。
「どうぞ」
「この名簿は何かしら依頼を受けた人の物か?」
「いいえ、登録してそれから依頼を受けていない人も含まれます」
「毎度言うが2回以上依頼を受けている名簿も頼むよ」
「善処してはいますがなかなか難しいんだよ」
「身分証の役割も果たしているから仕方なかろう」
貴族階級の人たちは身分証明書をもらうためだけに登録する人も多い。期待できると思っても嫡男で全く更新以外は全く顔を出さない人たちがいることにいら立ちを隠せないでいた。
「身分証明書の管理で女王から莫大な支援を受けている以上文句は言えんよ」
「去年のならあるだろ。それで我慢してくれよ」
「やっぱ登録したてが見たいんだよ」
「で、今回の良い能力持ちはやはり女王陛下のご子息様ですか。やはり王族は1位と2位の差がすごいですね」
「今回の第一王位継承者は優秀であられますな」
「くれぐれも口外無いようにな。国防にも関わる」
《…》
登録したて、なかなか会議までに名簿を作るのは至難の業でありほぼ不可能に近い望み。ほぼダメもとでへらへら言葉を口にしていた。
「どうぞ」
「もしこの情報を口外したら?」
「全力でお前を消す。あと一族を闇に葬り去ってくれよう」
「子どもも生まれたんだしそんな危険な発想はよせよ」
「なっ、なんでそのことを知っている!」
「そのくらいの情報位リーク済みだ」
手を挙げてずいぶん前から気になっていたことをこの際聞いてみたギルド支部長がいた。その答えは肝が冷える内容だったことに皆黙って耳を傾け、余計なことを誰一人として口にしない。
「次期女王も期待でき、我が国も安泰ですな」
「そういえばあの生粋の真面目は今日はどうして居ない?」
「私も気になっていたところだ」
「私もだ」
「水路が倒壊して夏までにはどうしても、グラーレンの民のために復旧したいそうだ」
「グラインらしい欠席理由だな」
「その話は本当らしいですね。今は予備の水路で水をまかなっているそうですよ」
「大変ね。私の街も、そろそろ建て替えたほうが良いのかな?」
「私のところもそうだな」
「確かに、私のところも所々老朽化が見受けられるからな」
管轄外の街の情報を知っていたことに一定数の支部長らは顔をしかめるがそれもスルーされる。あくまで表面上の上っ面だけの顔合わせ兼報告会。皆そこまで深入りはしていない。
―・―・―
その後も雑談をしたり報告等を進め、豪勢な昼食休憩を挟んだのちまた会議が始まった。
「さて、午後は皆さんお待ちかねの内容と行きましょう」
「やっとか。白粉はどうなっている?」
「ああ、白粉ですか、あともう少しで出荷可能ですよ」
「早くしてくれよ。うちの集団が早く仕入れるよう口を酸っぱくして言ってきてね」
「うんざりしているのはこっちもだ。何とか依存度を減らせないもんかね?」
見るからに高そうな服装。儲かっているのだろう、にこやかにこの場を仕切る一見無害そうに見える男性は裏で白粉を作り莫大な富を為している。
「できる限り早くできるように試みます」
「頼んだぞ。なぜかお前のところでしか白粉は栽培できないんだよ。もし栽培できたら、莫大な利益を得ることができるのに」
「それは、どこも同じですよ」
「仕方ないか」
研究に研究を重ねついに迷宮外で効率的に生産する方法を確立し、この熱心さが貧しい貧民街に暮らしていた彼をギルド長という座に上り詰めた。
「おかげさまで、こちらはかなり儲かっていますよ」
「お前が羨ましいよ。でも、お前のところは中毒患者が多すぎるからそろそろ取り締まったほうがいいんじゃないのか?」
「金に変えられるものはありませんからね」
「末恐ろしい。街は崩壊しないのか?」
「まぁ、まさかギルド支部長が流通させているなど誰も思いはしないでしょうからね」
「バレたら処分どころじゃないだろうな」
市民の1割でも中毒患者がいれば多い部類に当たるのに2割に迫る勢いで依存症患者がいる試算すら出ている。この事態を支部長らは非常に重く受け止めているようだ。
「中毒患者になる前の人に飲ませてやればたちまち俺の言う通りになるから使い勝手が良くてね」
「お前はもちろん吸ってないよな?」
「もちろんだとも。あのような依存症患者には、とてもじゃないけどなりたくないからね」
「ひどい話だよ。人の皮をかぶった悪魔のような発言だよ」
「ふふふ....褒め言葉だってことにしておくよ」
「そうしてくれ」
部屋の下からの明かりに照らされ、普段でも彼の笑みは不気味なのに引き立てられていた。
「私の街で試運転している依存症患者の更生治療事業、かなりいやっ!絶好調だよ」
「初めて聞いたぞ!」
「限度ってもの知らないのか!」
「まさかそのために少しずつ患者を増やしていたのか?」
「ちょっとした実験ですよ。想像以上の成果を出してますよ」
ギルドの依頼達成報酬を賄うために必要な額だけを毎月回収できる程度に患者数を調整する方針にもかかわらずそれを守っていないことにこの場がざわめく。
「そうそう、白粉ですが、夏前までには出荷しますのでこれを」
「わかった。これが支払額だ」
「確かに」
「多数決を取りたい、逸脱しすぎている者は挙手を」
「いい新規事業じゃないか!なんでだよ」
結果は言わずとも満場一致だった。既存患者を治す事業内容であればいいが、治療する前提で依存症患者を作るのは皆異常だと。
「白粉には感謝している。が、これ以上勝手な真似をとるのであれば重い判断をせざるを得ない」
「わかった。この事業はこれ以上拡大させない」
「うむ、そうしてくれ。では皆さん、解散にしますけどよろしいですか?」
「ああ。有意義な時間であった」
「私もだ」
「こっちもだ」
「では、これにて解散とさせてもらいます」
新しい新規事業を思いついたにもかかわらず冷たい評価をもらい、悔しそうにしつつ若干失望した眼差しを揺らめく蠟燭の明かりに向けた。
ー・ー・ー
授業も終わり、荷物をまとめ伸びをしながら教室を後にする。
「やっと終わった〜!」
「ハルは今からなにか行くところはあるの?」
「今から魔法省に行こうと思ってね。明日のためにポーションをこれから買いに行くんだ」
「じゃあ途中まで乗せて行ってあげようか?」
「いいのか、エルマン?ありがとな」
「別にいいよ。友達だろ?」
ダッチとのダンジョン体験の準備を万端にするためにも、もしもの時に欠かせないと学んだ回復薬を買いに行く予定だった。
「俺ら、こっちだから。じゃあみんな気をつけてな」
「シーリン、ヒュールまた10日後だな」
「そうだな」
シーリンとヒュールに手を振って見送り、ハルとエルマンは送迎馬車乗り場まで向かい始める。
「初めて来たよここ。こんなところあるんだね」
「貴族と有力商人クラスが利用するくらいだもんね」
「普通に生活していたらまず縁は無いね。エルマンみたいに貴族階級の友人がいれば別だけど」
「なぁ、この休日で空いている日とかない?」
「あ~もう予定全部入ってるんだよね」
「そうだよなぁ。もう少し早くに言っておけば良かったな」
ハルは初めて来た場所だったので物珍しそうに辺りをきょろきょろしている。そんなハルを横にエルマンはおずおずと尋ねる。
「どうしたの?」
「この10日間のうちで暇な日があったら家に招こうかなって思っていたんだよ」
「そうなんだ....なんか、わるいな。また誘ってよ!」
「おう!また誘うよ」
ハルはエルマンと別れた後、なぜ家に招いてくれるのかという理由を聞いておけばと思うのだった。
ー・ー・ー
エルマンを迎えに来た馬車にハルも乗るとまず内装の華やかさに息を吞む。
「本日も学校お疲れ様です。そちらはどちら様でしょうか?」
「途中まで乗せて行きたい」
「かしこまりました、ちなみにどちらまで?」
「魔法省までだそうだ」
「わかりました、それでは足元にお気をつけてお乗りください」
「緊張する…」
the使用人の気迫に圧倒され、先ほどまでは何とも思っていない場所が急に緊張するようになったのかハルの手が少し震えていた。
「ほんとはもっと物腰柔らかなんだけど客人板から接待モードになってたな」
「そうだよ。久しぶりに見た」
「酷いですねぇ、出来る仕様人を演じていたのに」
「化け革剝れたぞ」
「もうすぐですよ」
「エルマン、馬車に乗せてくれてありがとね。おかげで楽に向かうことが出来たよ」
「いいっていいって。じゃあまた10日後にね」
馬車降り場でエルマンの馬車から降り、エルマンとその使用人に別れと解釈ををして馬車を後にした。




