第21部分 夕飯だ!①
テスト勉強やりたくないよーー!
4/27:一部の変更と文章を付け足しました。
冒険者、その名の通り未知なる場所を冒険や探索をしたりする職業として確固たる地位を築いている。この世界の全ての人が冒険者になるってわけじゃないけど、かなりの確率でなる人が多いなと思った。
「1人でちゃんと登録できたみたいだね」
「登録の時どこに行ってたの?かなり心細かったよ」
自分よりも2倍くらいありそうな大人たちがうろうろしている場所にいるのだから必然的にいい意味でも悪い意味でもよく目立つ。
学校内では感じたことの無いような視線をいくつも感じてしまい目に見えてハルは疲れ切っている。
「悪い悪い、ちょっと顔なじみがある奴がいてね」
「一言声かけてくれたらよかったのにさ」
「次は声かけるから、そんなに心細かったのか?」
個人的に交流のある人だったのと自分にどうやら気が付いていなかったのもあったので挨拶がてら世間話や最近の行動について聞いてみた。
「なっ、一応いてもらった方がなんかあった時に便利じゃん」
「便利、ね。まぁ、もしハルが絡まれても多分大丈夫でしょ」
「いや、ヤバいでしょ」
ダッチの言う根拠のない大丈夫だという自信はどこからやってくるのかと彼の思考回路を疑いたくなる発言に思わず反応する。
「だってまだ俺たち子どもだし、見定めも兼ねて絡んでくると思てたんだけどね」
駆け出しならまだしも冒険者階級が上がるにつれて組織いわゆるクランに所属しているかいないかで大きくその後の成長に関わってくる。自分の経験があるからこそハルにはそんな苦労はさせたくないと思って名前を売れないかと思ったがそうそうシナリオ通りに人は動いてくれない。
「うそでしょ?」
「ハル強いし宣伝も出来るかなって思ってたんだけどなぁ…ソロだとやっぱり厳しいよ?」
「いきなり依頼をこなすわけじゃないし、今回は身分証明書が欲しかったからだって」
「ハルほどの実力だったら十分やってけると思うよ?」
「無理無理っ!」
首をぶんぶん横に振りながらダッチの意見を否定するハルだった。たとえ絡んできたとしても相手は経験という絶対に勝てないアドバンテージを持ち合わせているのにこっちは皆無もいい所だろう。
「やってもないのに無理って決めつけるのは良くないぞ?」
「まぁそうなんだけどこればっかりはね」
「あの有名なギランさんと初めてやって同等くらいやり合っていたのにねぇ」
自分がギランと初めて手合わせした時はボコボコ言ってもいいくらい見事に往なされた苦い記憶がふいに蘇る。
「どう見てもたまたまでしょ、こっちを弱く見て油断してたんだと思う!」
「ギランさん、元3級冒険者だぞ?」
「正直に言うとあんまり凄さが分かんない」
「認めたくないけど、俺と同格くらいにセンスあると思う」
冒険者として依頼やダンジョンという世界に入ったことこなしたことがなかったので冒険者3級とか言われても首をかしげるばかり。そのこともあって、ダッチがそのすごさを熱弁してくれているもののイマイチ凄さが理解できていないハル。
「今度ギランさんとやったところで一緒に手合わせする?」
「う~ん、どうしよ」
「あれなに迷ってるのさ?さっきやってもないのに無理って決めつけるのは良くないって言ってたのは誰だっけな~」
「ほら!行くぞ!」
「あっ、ちょっと!」
ハルの言葉に少し考え込んだ後、ダメ押しばかりのハルからの挑発に不意にニヤけて走り出した。長剣の握り方もほとんど少し前まで知らなかったハルと戦って善戦なんかでもしたら今までやって来た自分の努力が否定される気がして挑発にも冷静に対応できた。
今は逃げることしかできない自分の悔しさを紛らわせるために馬車乗り場へと走り出し、それをハルが追いかけていくのだった。
―・―・―
駆け足で少し息を切らしながら2人は馬車に乗り降りするギルドから最も近い駅にやって来ていた。
「君たちぃ、どこまで乗って行く?」
「生活保護ギルドの前まで頼む」
「わかったぁ。じゃあ、一人銅貨4枚いただく」
「これでいいか?」
「ちょうどだね、助かるよぉ」
「いえいえ、ねぇハル!どうかしたの?」
小さな財布から言われた額ぴったりを渡し、小さなゴワゴワしたいかにも安そうな紙でできた切符を受け取り席に着く。すぐ後ろにいたはずのハルが少し経ってから乗ってきた。
「ねぇダッチ、行きよりも高くない?」
「移動中に話すよ、隣おいでよ」
「わかった」
馬車にはハルやダッチのほか5人くらいが乗り合わせていた。
―・―・―
ほどなくして馬車はゆっくりと音を立てながら動き出す。
「値段の件だけどね、朝方と夕方にかけての乗馬車金って違うんだよ」
「そっ、そうなの?」
一定だと思ってた馬車の料金が乗る時間によって変動することに驚きを隠せないハル。
「冒険者って言っても稼ぐ力はピンキリだけど、平均してみると稼いでる人が多いからね」
「稼いでる人から多くもらってそうでない人からはってことか」
「そうそう!」
「人が移動しやすいのはいいことだね」
「最初はかなり冒険者からとかが反対したみたいだけどね」
「まぁ、そりゃそうでしょうね」
反対する理由もよくわかる、収入が低い人とかは自分が馬車を活用する時間だけ金額が高いなんてたまったもんじゃないだろうことは普通に考えられる。
「住民側の意見を採用したらしいんだ。あれは、英断だったと思うよ」
「そろそろ着きそうだね!」
目的地の駅まで到着したら自分とダッチ以外に2人程が下りて、駅で馬車を待っていた人たちが入れ替わるように乗り込んでいき、自分とダッチを乗せて行ってくれた馬車は小さくなっていった。
「前行ったことのある店の隣の店も美味しいから是非食べて欲しいんだよ」
「ご馳走になるね」
「誘ったのは自分だし気にしなくていい。あれだ!あの少し高い建物が今から行く店だよ」
大金を持っているとはいえ、収入減がない今は使わないに越したことはないだろう。それにダッチが奢ってくれるというのなら乗っかる以外選択肢はハルにはない。
ダッチが指さす方向には周りの建物より頭一つ高い建物が見えてくる。どうやらあの建物で今夜の夕食を食べるようだ。
「コーラル亭?」
[確か、コーラルの意味って珊瑚だったっけ?まぁいいか、それよりも夕飯!]
「ハルが前に魚を食べたいって言ってたからこの店を選んでみたよ」
「いいね~楽しみだよ」
「じゃなきゃコーラル亭っていう海を連想させる名前をつけないだろ?」
「本当に魚を出してくれる料理屋さんがあるなんてね」
学校の授業でかなり内陸部に位置しているはずなのにどうやって魚を海から調達しているのかは謎ではあったがとにかく魚が食べられることを考えれば輸送手段なんて今はどうでもよかった。
「いらっしゃい、2名?ついて来てくれ、席を案内するよ」
―・―・―
ハルとダッチが案内されたのは階段を上った先にあった3階の見晴らしのいいい窓際の席だった。
「また注文決まったら教えてくれ、本日は香草焼きってのがおすすめですよ!」
「どうする?俺はこれにしようと思う」
「じゃあ、私は本日のおすすめで」
「わかりました、作ってくるのでしばらく待っていてください」
そう言い残して席に案内してくれて、今日のオススメを教えてくれた店員は凄まじい速さで階段を駆け下りて行った。
しばらく夜風が心地よく入ってくる窓の外を眺めていたが、ふと思いついてハルに話しかける。
「なぁハル、あと3日後に休みが始まるだろ?」
「ポーション買いに行ってみない?」
「ポーション?あ~なんか授業でやったような気がする」
この前授業で傷とか怪我を直してくれる液体って言っていたような気がする。確か変な変わった名前がついていたので忘れずに覚えていた。
「冒険者必須アイテムだから見に行ってみるのはどうか?」
「行ってみようかな?」
「行こうよ!」
ダッチから強く誘われてちょっとした怪我をした際に使えるものがあったら便利だと思い面倒ではあったが返事をする。
「じゃあ行こっかな」
「もう一回いうけど必須アイテムだぞ?」
あからさまにハルが嫌そうに返事をしたので念押しばかりにもう一度口にしたダッチだった。




