第11部分 武器の受け取り
2019年4月9日~2020年5月23日
:文章の改良、誤字の訂正などを行いました!
ハルが去って行った後~
「ハルは、いったいどこからやって来たんだろ?」
いつも通りに接客したつもりだったけど、ハルはどこか印象に残る子だった。
「いや、俺に聞かれてもわかんないって....」
さっきまで俺トラムの代わりに接客してたしわかるわけないだろ!
しかも、一番近くにいたトラムが分かんないなら俺が分かるわけないのにさ....
「そして....一体何者なのだろうな?」
「いや、だから俺何も知らないって!」
なんか放心状態で話してたので、さすがに返事はしてやらないとかわいそうだと思い返事はしてやってはいるけど....
「ハルが即席で作った武器は初めて見る武器だな....」
彼が作ってくれた武器を改めて持ってみた。店の照明に何とも言えない魅力的なフォルムに光が反射する....
「まぁ、確かに....」
主に自分は細工とか工芸品系統の仕事を担当している。
まぁ、武器に触る機会が完全にないって言ったらウソなんだけど武器にも細工を施してほしいっていうやつに細工をしてあげてはいるがこんな武器は見たことがない。
「驚くべきことに、鉄塊を一瞬で刀っていう武器にした....」
俺が、やろうとしても1日以上はかかりそうな作業を一瞬で終わらせてしまう早技を見せてくれた。
今もなお先程の出来事が信じられない....
「おいおい、疲れすぎて幻覚でも見たんじゃないのか?」
「本当なんだよ、ふふ....」
鍛冶師の世界は9割は踏破したとは思っていたが....まだまだ鍛冶師の深淵を除くことすらかなわんか....
「そっ、そうか?」
こりゃだめだな、かなりショック受けることがあったみたいだしそっとしておくべきか。
トラムがこんなんになるなんて久しぶりに見たな。
「....」
あれは、魔法?それとも恩恵なのか?もし恩恵だとしたら羨ましい限りだな。
でも、手間暇かけて作った剣と一瞬で作った剣とを比べると手間暇かけて作った剣の方が愛着があっていいんだけどね。
「俺は仕事に戻ってるぞ?」
ありがたいことに、辺境という不利な立地にもかかわらず多くのお客さんに恵まれているので休む暇のないくらい忙しかった。
「わかった....」
ただ、大量生産することによって冒険者により安価な武器を提供できるのは魅力的だな。
まぁ....恩恵の一種なのかなぁと思っとくことにしておこう。俺の知らないスキルもきっといくつもあるだろうしな。
「にしても....」
自分の知識の中に無い武器を教えてもらったことに感謝しなきゃね。
だとしても、アダマンティスという金属は1キロで金貨10枚もするから安くしすぎたな....
彼のような若い子が当主....だとは考えにくいからな~どこかの貴族のぼんぼんなのかな?
ー・ー・ー
注文を受けて2日目
「難しいな~」
金属の融点が違いすぎるせいで、鉄芯となる部分をくるんだ時、芯となる鉄が融解してしまう....
「トラムっ!熱中するのもいいけど一番忙しい時間帯くらい手伝ってくれよ!」
早朝から昼頃にかけて、ダンジョンに向かう冒険者たちが小物を調達するのにここに寄り道して行くせいか朝は午前中は非常に混雑する。何でも、ほかの店よりも2割ほどお得に買えるらしい....
「今日も給料に色付けとくって言っといて!」
どっちかというと作業を中断はしたくなかったので、雇ってる人に今日も頑張ってもらうしかないだろう。給料に色付けとくって言ったらめっちゃ働くし....こういう時ばかりはマジで助かる。
「はぁ....わかった、体だけは壊すなよ?」
できる限りは彼の世界に邪魔はしたくはない。だけど午前中くらいは気分転換も兼ねて表で働いてほしいんだけどな~
....もしかして気分転換になってないのか?
「ありがと~」
どうせ表に連れ出しても気分転換がどうのこうの言って結局こき使うじゃないか!俺は鍜治場のほうがよっぽどいいんだよな。
ー・ー・ー
7日後~
「つっ、ついにできたぁーー!」
〈改めて見ると美しいなぁ~鉄じゃなくて前に偶然手に入ったオリハルコンで芯を作ってみたのが正解だった〉
刀ができたのはちょうどお昼ごろ、昼休憩をしていたザードがこっちに来るような音が聞こえた。
「やっと完成したか!」
「なかなかの出来だろ?」
「ああ、こりゃ凄い....魔法金属も塗ってあげたのか?」
銀を抜いたアダマンティス特有の金属光沢ではなく、例えるならまるでビスマスの人口結晶のような美しい虹色に日の光が当たって美しく反射していた。
「強度がやっぱり心配だったから....」
普通の長剣とは違い、刀身が薄いためアダマンティスで作ったもののどうしても強度が心配だったので魔法金属を塗りたくっておいた。
アダマンティスと魔法金属の相性は最高だ。よほど無茶なことはしない限りは折れたりなんかしないだろう。
「レイピアとは違う弱点を持っていそうだしなぁ....」
レイピアは、折れる前提で作っているので簡単に替え刃の交換ができるような構造だし、稼ぎの良くない冒険者でもスペアは持っているくらいだ。
「ザードの言うようにデメリットのない武器なんてないだろ....」
ザードが言うように、ぶっちゃけ武器屋の観点から言うと、ダンジョンでの雑魚狩りにはレイピアは確かにいいかもしれないが手ごわい相手になると有効な攻撃を与えることができるのかという疑問が残る。
「デメリットもない完璧な武器があったらみんなそればっか持つようになりそうだな」
そんな武器があったら確かにいいかもしれないが、鍛冶屋がそればっかを作るようになって技術の衰退が懸念されそうだし....
「いいなこの武器....」
〈ハルのために造った刀。完成した刀を見ていると自分用にもほしくなってきてしまった....〉
「さて!」
〈この方法でやる方が時間はかかるけれど、武器の耐久性は格段に上がりそうだ。一体どこの国の技術なのか?〉
他の剣にも応用が効くいい方法だけど、教えてもらったってことは俺にこの技術をくれるっていうことなのか?
「....機会があれば今度聞いてみるかぁ」
「それよりも、そんな細い持ち手はないだろ?」
完成とはトラムが言ってはいたが、おそらく刀身が完成したのだろうか?
「だよな~ハルが作った見本通りにやったんだけどこの穴をあけるのが苦労しそうだよ....」
〈ん....?穴?あれれれれっ?〉
「おい....それ銀抜きやる前に開けとけよ」
指摘したくはなかったが、トラムはめちゃくちゃ初歩的な間違いをしているような気が....いや、確信した。
《....》
トラムはあまりにも初歩的な間違いに絶句。そして、ザードはかかった費用に声にも出さず頭を抱えていた。
「確かに....ゔぁぁぁぁぁっ!」
いや、もう叫ぶしか選択肢はなかった。
このときいたお客さんはただ事ではないと思ったが、トラムさんが何かやらかした時に叫ぶことが冒険者の間でも有名だったことを思い出して普通に買い物を済ませていったらしい。
「ドンマイ....」
ただ落胆しているトラムの背中をさすってやるだけしか自分にはできなかった。
「今から....穴を開けられないよな~」
無理なことは承知しているが、それでも失敗した悔しさをごまかすために喋ることしかできなかった。
「銀抜きしたアダマンティスがどれほどの硬度か一番知ってるのはお前だろ?」
銀抜き、それはアダマンティスと混ざり合っていた銀を取り除く作業。
銀抜きをちゃんとするかしないかで武器の耐久性が決まる大切な工程のことだ。
「ちくしょう!せっかく完成したと思ったのにぃ!」
悔しさのあまり、失敗作を床に叩きつけたがさすがというべきか細かな傷さえついていなかった。
逆に鋼鉄製の床に傷がついたくらいだった。
「まぁ、せっかく魔法金属まで塗ったんだし飾っとけばいいんじゃない?」
「アダマンティスは高価だから言われなくてもそうするつもりだよ....」
数年前に大規模なアダマンティス鉱脈が発見され価格が少し安価になったが本当に少しだった。
できることなら暴落させてほしいところだがまぁそんなことはこれからも起きないだろう。
《はぁ~....》
ー・ー・ー
武器を注文してから21日後〜
春には武器が完成したことの知らせる手紙が来た。
「トラムさんから、ハルにこれを....とのことです」
カバンの中からハルという人物宛の手紙を渡した。これでトラムから頼まれたことはやった。
「おっ、ついに刀の完成かっ!」
〈自分専用の武器が手にはいる!嬉しいな~〉
「では、これで失礼しますね」
あのトラムさんが、わざわざ手紙を出すまでの相手なのだろうか?
まだ小さい子どもに高給な紙を使ってまでも....伝言で済ませれない相手だったのか?わからん....
「ご苦労様です」
〈でも、『まだ出来ていないない部分がある』と書いてあるけどなぜだろうか?〉
ー・ー・ー
次の日~
「結構いいじゃん!」
〈それと、なんか虹色に見えるのはなんでだろ?〉
「それはよかった、苦労したかいがあった」
たった1回のミスで、結構ひどい目にあったのでそれも含めて苦労が労われた感じがする。
「トラム....」
自分は、トラムがどのようなことをミスったかを知っていたので思わず同情してしまった。
「えっ、ちょっと....何があったんですか?」
ザードが、トラムの肩に手を置いて涙ぐんでいたのでただならぬことがあったことはすぐに分かった。
「実はね、めちゃくちゃ単純なミスをしてしまったんだよ」
失敗作はもちろん有効活用はするけれどやっぱり悔しかった。
「あれだけ没頭してたんだ、疲れが出たんだろうよ....」
長いこと鍜治場にこもってやっていたので当然疲れはいつか出るだろうと思って心配していた。
そうだとしても、まさか取り返しのつかないところでミスをやってしまうだなんて....
「?」
まったくと言っていいほど会話の内容が理解できない....何かをミスしたということまではわかったけれどね。
「トラム、現物を見たほうが早いんじゃないか?」
言葉で説明するよりかは、現物を見せたほうが早いと提案してやった。
なんかまた話が始まりそうだったし....
「確かに....ちょっと待っててくれ」
〈確かにそのほうがいいかもしれないな....〉
「わかりました....」
会話を交わすことで気が楽になるのは自分もよくわかっていたので相槌は売っているものの、自分専用の武器に思考の9割がた持っていかれていた。
「あ~それとハル君....木で持つところと鞘を作ればいいんだね?」
「もしかして追加で料金がかかったりしますか?」
持ち手は無料でやってくれるだろうと思っていたが、鞘に関しては何も相談していなかったので聞いておきたかった。
「いや、それはないよ」
〈刀身がアダマンティス製だから木はなるべく硬い方がいいよなぁ~どの種類の木材にしようか....〉
「んっ?....そうなんですか?」
トラムとの会話では、刀身のみの値段だったはずだったので、追加料金がかかるものだと思っていたので驚いた。
「木材は種類にもよるけど安価なものが多いから気にするな」
持ち手を用意できる一番固い木材と....鞘も建材に使われるような木材で作ろうかと考えていた。
「そこらへんは無知なんでよろしくお願いしますね」
「おう、任せとけ!それと装飾用の細い紐の用意だったな?」
だいたい鞘は革か、武器の材質よりも柔らかい金属なのだ。
〈例外もあるけどね....〉
だから、初めても試みだったので正直楽しみでもあった。
「その紐もお願いします」
以前、ほかの店でも探しては見たのだが、これだ!と納得できる品質ではなかった。
「用意はしとくが....それに関しては申し訳ないが別料金となるんだけどいいか?」
装飾用とあるだけに耐久性は低いと説明はしたがそれでいいと言われたのでまぁ楽に調達できるだろう。
「目安が知りたいのでどれくらいかかるんですか?」
「ピンキリなんだけどどうする?」
たかが紐だとしても値段に幅ははもちろん存在する。であればどれくらいのを求めているのかを聞いておきたかった。
「う~ん....でしたら一番高価な紐でお願いします」
これからもずっと使う予定の武器なんだし、その点を見越せば高くても上物の方がいいだろう。
「わかった、用意できる範囲で一番高価な冒険者用の紐を用意しておくよ」
「助かります」
「じゃあ、俺はこれで失礼するよ....あ~完成はあと4日後くらいかな?」
このように作ろうか?といった構図はすでにハルとの会話のうちに思いついたので多分それで行けるはずだ。やすり掛けも含めだいたい4日くらいが妥当だろうかと思った。
「あっ、やっぱり鞘なんですけど2本作ってくれませんか?」
「ん~了解、予備はあったほうが確かにいいかもしれないしな....任せとけ!」
〈1本作ればもう慣れるはずだしまぁ、4日のままでも大丈夫だよな?〉
ー・ー・ー
「あれ?ザードは?」
「ついさっき自分の仕事があるからって言って戻って行きましたよ」
「そうか、まぁそれよりもこれだよ」
「僕の刀と似た加工がしてあります?」
「ああそうだ、加工はしたのだが....」
「なるほど....ここですね?」
「ふふっ、そうなんだよ....」
「さすがにこれは僕でもちょっと無理っていうもんですね」
「だよなぁ....我ながらアホなミスしてしまったと思うなぁ」
「間違いくらい誰でもすると思いますよ?」
「そうなんだけどさ、コレがね....」
「材料費ですかぁ」
「そういうことだ、痛い出費だよ」
「....」
「ハル、この刀の製法の技術を教えてくれたってことは貰ってしまっていいのか?」
「別にいいんじゃないかと」
〈持っていてもしょうがないし~〉
「本当かっ!」
〈革命的な技術なのにいいのかな?んーでも魅力的すぎるな、もしかして、この製法が一般的なところに住んでいるのかな?〉
「あぁ....」
〈こんなことで感謝されるなんて....でも剣に二種類の全く金属?を使ったりしたら脆くはならないのかな?〉
「ありがとうっ!」
自分が知らない技術を手に入れたのだ。ほんの少し、ほんの少し行き詰まりを感じていた自分にとっては暗闇の中で一筋の光を見つけた気分だった。
「助かります、それでなんですけど....紙ってないですか?」
元居た世界では、神はそこまで高価じゃなかったのでそのような感覚で尋ねた。
「あるけど~とてもじゃないけど、俺たち平民たちには買うのをはばかられる値段だよ....」
〈まぁ、それなりに儲けさせてもらってるからないってわけじゃないけどね〉
作る時に大変な手間と労力がかかるため、庶民からしたら結構お高めな値段で取引されている。
「そうなんですか?」
「ああ、だから今回はこの木片で勘弁してくれ」
簡単な記述には安い木片を多くの人が愛用している。実際トラムもめちゃくちゃ愛用していた。
「紙って高いの?」
「ああ、紙1枚で銅貨5枚もするんだぞ?それに反して筆記具は安い」
(日本円で500円くらい)
「だから生活保護ギルドの教科書とかは木版を使っていたのかぁ~」
〈この世界の紙は高価だな....今思えば、地球は恵まれていたんだなぁ~〉
「ハルは、知らなかったのかよ....」
〈紙が高価だということは一般常識といってもいいくらいなはずだと思うのになぁ~〉
そのことを踏まえてより一層貴族のような気がしてきた。
「知りませんでしたね~」
「マジか....」
真面目にやばいくらいの富豪なのか?紙をひょいひょい使えるくらいの....
ハル、恐るべし....
ー・ー・ー
「ザード~お腹空いたし、昼食を食べに行こうぜ!」
ハルに来てもらいお披露目することもできたので、午前中に予定していたことはこれですべて完了だ。
「ああ、俺もお腹がすいてたところだったんだよ~」
トラムが仕事に区切りをつけたのが12時くらい、ちょうどいいお昼時だった。
「じゃあ、さっそく行くか!」
「その前に!ひとつ言っておきたいことがある!」
「おっ、おう....どうしたんだ?」
急にザードからの真剣な声がかけられ身構えた。
「お前が熱中している間、必死に働いていたのは知っているよな?」
初めて見た武器、初めて作る武器だったので久しぶりにあれだけ集中した気がした。
「ああ、そりゃぁもちろんさ」
その時は、ザードにお世話になったことはよく知っていたし、知らなかったら失礼だろう。
「ハルの依頼されたものを作り終えたら1週間くらい休みが欲しい」
〈これでも、足りないくらいだけどな....〉
「わかった、好きにやらせてもらったからな」
ザードにも頑張ってもらっているし、従業員を使えばなんとかできるだろう。
「え?いいのか?」
え~とか、嫌だとか言われることを覚悟していたので予想に反して要求がすぐに通ったことには驚きを隠せなかった。
「何だよ、ダメとでもいう心の小さい奴だと思っていたのか?だとしたら悲しいぞ?」
「うん、小さいと思ってた」
一週間はダメだと言われると思っていた、いやガチで。
「はぁ?いや、そこは....なんていうか!」
そんなわけないだろ?って言って欲しかった。本当に小さい心の持ち主だと思われていたなんて....
「ありがとな」
「おっ、おう....」
「じゃあ、店閉めて行くか!」
従業員にも昼休憩を伝えておいたしこれで大丈夫だろう。
つづく~
もう11話目!読んでいただきありがとうございます。




