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魔王は世界を救うのか  作者: 戦部孔雀
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手続き完了

冒険者ギルドでは分かりやすく強さなどの序列を見れるように【冒険者ランク】という制度を設けている。

Fを最下位にしてE、D、Cと上がって行き最上位がSになる。ギルド内ではCランク以上の冒険者が一流という暗黙の了解があるらしい。


「まずFランクからのスタートとなります。Dランクまではテストなしでランクが上がっていきますので沢山依頼をこなして下さい。」


推薦状などがあればギルド職員が手合わせをし、相手に見合ったランクから始めることもある。

またランクが上がる場合DからCになる場合は特殊で実力を図るためのテストが実施される。


「Cランクになると何か変わるんですか?」

「あらゆる面で優遇されます。こちらは貴方がCランクになられた場合改めて説明させて頂きます。」


冒険者ギルドではランクが全てだ。一つ違うだけで同じ冒険者との関係も職員の対応もだいぶ違う。


「ランクはどういう条件で上がっていくものなのですか?」

「そうですね…Fランクの場合は討伐依頼が五つ、採取依頼が十でEランクへ上がります。

それぞれのランクによって達成する依頼の数が異なりますがだいたいそんな感じです。あぁ、それと依頼を受ける際のルールの説明を。」


一度に受けられる依頼の制限は最大三つまで。討伐1と採取2、採取3、討伐2、護送を受ける場合は他に依頼を受けてはいけない。

この組み合わせを守らなければならない。勿論堅実に一つずつ依頼を受けて言っても構わない。

一気に三つ依頼受注したからと言って合計の契約金自体は変わらないからだ。


「ギルドとしましても討伐依頼を同時に二つ受けるのはお勧めしません。討伐依頼と採取依頼を一つずつ合わせるのがよろしかと。」


依頼を受ける際、契約金というものが発生する。冒険者にもあるように依頼にもランクが振られている。

このランクを振り分けているのは年に一度本部から送られてくる地域の危険度と魔物等の危険度を表した資料だ。

当然依頼を受けるのであれば受注者(冒険者)と同ランク、もしくは下のランクの方が成功率が上がる。

しかしベテランならいざ知らず新人には自分の実力がどこまで通用するものなのか判断するのは難しい。

魔物や素材の名前を聞いただけでどれがどれ程の労を要するものなのか瞬時に判断することが出来るのは冒険者の中でも一握りだ。

だからギルドは依頼に対してランクをつける。そしてそれに見合った契約金を提示する。そうすれば依頼の失敗率は減らせる。


「ギルドも信用商売ですから色々と工夫しているんです。説明は以上ですが何か質問はありますか?」

「従魔の扱いってどうなるんですか?」

「テイマーの自己責任ですね。ギルドでは何も保証いたしません。」


いっそ清々しいほどキッパリと切り捨ててくれる。これにはユナンも苦笑を漏らさずにはいられない。


「冒険者同士の衝突に関してはどうですか?」

「ギルドが冒険者同士の諍いに介入することはありません。よほどの問題行動がない限りは、ですが。」


含みのある発言に眉をひそめるが彼は張り付いたような笑顔を浮かべるばかりだ。

それ以上ユナンの口から出てこないと判断するとハオランは一枚の書類とペンを差し出す。


「最後に署名をお願い致します。」


書類をザッと見てみれば今まで質問された事、説明された事が細かく記入されていた。

特に問題はないと確認し書類の一番下、本人の署名欄というところに名前を記入する。


「《ユナン》様。ありがとうございます。では少々お待ち下さい。」


署名を確認したハオランは再度書類の書き漏れが無いかを確認すると後ろにいた職員に声をかけて書類を手渡す。


「今からギルドカードを発行します。発行手数料には銀貨三枚が必要です。」


ギルドカードは大変便利なもので戸籍を持たない出自の冒険者にとっては唯一の身分証明書になる。

これはユナンも同様で国境を越える際身元を証明するものがない者は追加料金を取られるがこのカードがあれば通常の料金で国境を越えられる。


「では銀貨三枚。」

「はい、確かに頂きました。もし紛失した場合は再発行するのに銀貨三枚が必要となりますので取り扱いには十分お気をつけ下さい。」


ハオランがそう言い終わる丁度いいタイミングで別の職員が鉄製のキャッシュトレイを片手に二人に歩み寄る。

ハオランがそれを受け取ると職員をその場に待機させトレイをユナンの目の前に置く。そこに乗せられていたのは真っ白なギルドカードだった。

先程ユナンが書類に記入したのをそのまま貼り付けたような筆跡で名前が入っており、職種がすぐ下に記載されている。

ギルドカードの右半分はハンコで押したような模様で【F】と印字されていた。聞くところによるとこのFという記号は異世界の文字らしい。

そしてカードをひっくり返してみると左上に発行日である今日の日付とハオランともう一人誰のものか分からない名前が記載されていた。


「こちらが貴方のギルドカードとなります。そして私がユナン様の担当職員になります。」

「担当職員?」

「ギルドではどの冒険者がどのような依頼をこなし、ランクを上げていったか把握するためにそれぞれ担当者が二名が決まっています。

とは、言いましても各国の首都にあるギルド限定です。首都は人が多く集まりますので特定の職員に人が集中しないための措置です。」


ハオランは後ろに控えさせていた職員に声かけるとユナンの正面に立たせる。現れたのはこげ茶の髪で灰色の目をしたエルフと思わしき青年。


「彼は私の補佐の《ギュンター》。もし私がギルドにいないときは彼に声をかけてください。彼が対応します。」

「ギュンターです。お願い致します。」


彼はハオランのように愛想笑いを浮かべる事なく無表情のままどこに合わせているのかも分からない視線で挨拶をする。

その目がどこか恐ろしく冷たいように感じ、されどそれを顔に出すことはなくそれに挨拶を返すと彼はもう仕事は終わったと言わんばかりに立ち去ってしまった。

そんな行動をハオランは薄ら笑いしながら見届け、無愛想な奴なんですと一言零しこれで手続きは終わりだとユナンに告げた。

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