雲の上の庵
「うん、実はもう一個練習しなきゃいけないことがあるんだ」
ニャン君は言いづらそうにそう言ったの。
でも、ニャン君のせいじゃない、私だって行きたいもん。
「先生、お願いします」
ちょっとふざけた感じで答えたよ。
「やっぱり見たほうが早いかな?」
そのままドボンと水に飛び込んで、あれ、あれ、あれ?
真っ直ぐ、潜って行っちゃったの。
ニャン君がそのまま見えなくなってちょっと不安に感じてたんだけど
仕方ないので待ってたら、潜った場所からそのまま上がってきた。
水面までどんどん近づいてきてるのがわかるんだけど、
え、え、すごい早くない?
みるみるニャン君の姿が大きくなって来て、今度はそのまま
ジャッバーン!
ってすごい水しぶきを上げながら真っ直ぐピューンって
飛んでっちゃったよ、まるでミサイルみたいだったの。
「水の浮力を利用して、初速を目一杯つけて飛んだんだ。
息ができるのと一緒でここの海は水圧とか気にしないで
いくらでも潜れるから、海底から一気に上がってくると
さっきみたいに超加速で飛ぶことができるんだ。」
戻ってきたニャン先生はそう説明してくれた。
なんとなくはわかるけど、私、文系なの、、、
「えっと、つまり、なるべく深く潜って、
全力で空の行けるとこまで上がればいいんだよね。
いきなり海底までいかなきゃだめ?」
「全然、最初は慣れるためにマナさんが潜れる深さから
上がってみてくれれば、大丈夫。焦ることないから」
うん、ニャン先生は優しいの。
ジャバーン!
うん、すごい。まだ全然明るい程度の深さから試した
だけなのに加速して飛んでいけるのがわかったよ。
これを、海底からやって、しかも二人で手を繋いで
やったら、私、その速さに耐えられるかな、、、ちょっと怖いよ。
でも何度もやってるうちにコツもつかめたのかな?
超スピードに体も慣れて、最後に海底からのミサイルジャンプ
(勝手に名づけちゃった)を試したら、あれれ?
一人で雲の上まで着いちゃったの。びっくりだよ。
下でニャン君が待ってるのはわかってたんだけど、
「前から気になってた雲の上の家だもん、ちょっとだけ見て
戻るくらいいいよね?」(ニャン君、ごめんね)
自分勝手を心の中で手を合わせながら押し殺して、ちょっとだけよー
とか言いながら雲の上を見渡すの。
「あったよ〜」
すぐ目の前だった。家と思ってたのは形がそう見えたからなのかな?
とっても可愛く小ぢんまりした小屋みたいな建物がみつかったの。
小屋(ニャン君は「庵」って言ってたな)の中もちょっとだけ〜
と近づくと、ふとその庵の扉が開くから、びっくりして心臓飛び出るかと
思っちゃったの。
出てきたのは、学校の若い先生(自分にしかわからないか)くらいの女の人で
その女の人もびっくりして私のことを見てたの。
「○◎☓△●⊥∇?」
何語とかの前に聞き取れないよ、、、
ニャン君のときと同じようなやりとりを繰り返してようやく
「あぁ、あなた外から来た人なのね?
一人でここまで来たの?」
「えと、ここにはニャン君と一緒に来て、あ、ニャン君っていうのは
こっちの世界の子みたいですけど、時計塔の近くの学校みたいな
とこで知り合って、下に置いてきちゃったんですけど、、、」
とても、説明と言える説明じゃないけど、なんか分かってくれたみたい。すごい。
「下に居るのね、ちょっとここで待っててもらっていいかしら?」
後で聞いた話だけど、この女の人はニャン君の学校の先生で
一人残されたニャン君の救出に来たみたい。
あっと言う間にニャン君を連れて戻ってきたの。
「立ち話もなんだし、狭くてもひとまず中で座って話しましょう?」
先生はそういうと扉を開けて中へ入れてくれた。
小さなテーブル(ちゃぶ台っていうのかな?)が置いてあるだけで
本当に狭い部屋だったの。
あとは入ってきたのと反対にもう一つの扉が見えるよ。
床はきれいみたいで先生に倣って、ニャン君と私でちゃぶ台を
囲うように座ると、もう一杯。
あと一人入るか入らないかくらいなのかな?
ニャン君も自分が待ってるレスキューの人が先生だとは
思ってなかったみたいで、なんかちょっとそわそわしてる。
(なんか怒られることしたのかな?)
とか思ってたら、先生が話し始める。
先生の話の流れに促されるまま、私、ニャン君、
と順番に今までの事を話したの。
最後にニャン君の話を私にわかりやすく先生が話してくれた内容は
大体次のような感じだったと思うんだ。。。
第4話になります。お付き合いいただいている読者の方々は本当にありがとうございます。
引き続きよろしくお願い申し上げます。