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3話 ~トール、クエスト行くってよ~




「あ、あの……お姉ちゃん」


「…そうね、まぁ今回は冗談という事にしておきましょう」


どうやらオレは、今回は助かったらしい。

あくまで、「今回は」だけど…。


「えっと、何かようですかルル様。呼び込みですか?それとも、掃除ですか?」


「あら?私は喋る許可を与えた覚えはないのだけど?このゴミ虫は私の許可がなくても喋るのね」


ドSメイドこと、ルル様は、オレの首筋をナイフで撫で付けながらそう言う。


冷たい声で、冷たい眼光(背中を向けているので見えないけど)、冷たいナイフで撫でる!

信じたくなかった、逆らいたい気持ちでいっぱいだった、だけど…ちょっと心地よかった。

きっと働きすぎで身体が火照っていたのだろう!

 

「幸福というものは長続きしないものね。それに対して、不幸は無常にも【コンソメ大ムカデの如し続く】。そうは思わないかしらゴミ虫?」


「そう思います。凄く思いますです!」


心の中で敬礼をする。

コンソメ大ムカデ?というのは、このゲームでのモンスターの一種だろうな。実に美味しそうな名前だ。

因みに、ララちゃんは何の話をしているのかよくわかっていないようで、頭に「?」を浮かべている……ような表情をしている。

というか、不幸続きと言うならオレだって同じような状態なんだけど、まぁ、もう何も言うまい。

だって、許可無しに喋ったら切られるもん。

どうせなら、そのまま切ってもらって、オレを冒険に行かせて欲しいのだけれど…。


「そして、ゴミ虫が私のお店に沸いた挙句、今日は私が注文しておいた品が届くはずなのになかなか届かない。

どうも配達中に、ゴブリン種が通り道でお祭りでもしているらしいの。そこで…」

 

「オレにそれを討伐して来い。という事ですね」

 

「何を言っているのゴミ虫。私はそんな事は一言も言っていないでしょう?何故、このゴミ虫は私の言葉を遮るのかしら。切り落とされたいのかしら?」


主人公っぽく、意気揚々とドヤ顔をして、しかも勇者っぽいBGMの冒頭すら流れていたのに一蹴された。

確定演出なんて、この世界にはないのだろうか。


「あ、ゴミ虫ってトールさんの事なんですね!」


ララちゃんにまで笑顔で言われる。

俺のハーレムが遠のく確定演出ならあった。

不幸はまだまだ続くようだ…。


「貴方には、この申請書をギルドに提出してきてもらいます…」


渡された紙には『配達員の救助、及びゴブリンの討伐』と、そう書かれていた。


本来、クエストを受注して、クエストをクリアして、金策したりレベル上げたりする冒険者であるはずのオレが、なんでクエストの依頼をしに行かなくてはならないのだろう…。

そして、申請書を提出して店に戻ったら、また仕事…社畜タイムが待っている。

いっそ、ログアウトしちゃえよって思うでしょ?

でもね、このゲームのNPCってAIで構成されてるらしいの。

だから、次にログインしたら多分…想像すら拒否したくなるような有様になるだろう。




「モブゥ、探索と討伐の申請でよろしいモブね。」


「はい、多分それでいいと思います」


現在、オレはギルドに来ている。

ギルドのクエストカウンターの受付嬢さんと思われる女性に、申請書と預かった前金を支払った。

女性というか……見た目はピンクの毛むくじゃらの豚みたいな感じの、つまり獣人種というタイプだろう。

ギュウギュウとお腹の辺りで止められているボタンが悲鳴を上げている。

語尾の「モブ」は、どちらかというと「ブヒィ」の方が合っているのではないだろうか?


「何か言ったモブ?」


「いや、何でもないです…」


因みに、メイド長に所持金が無いと言ったら靴を舐めさせられました。


「モブゥ、少し時間が掛かると思うモブが、よろしいモブ?」


「多分…大丈夫だと思います(知らんけど…)。どれくらいかかるんですか?」


「ざっと、半年くらいモブっ」


「へぇ…ずいぶんと長い…」


ピンクの受付モブさんは微笑んだ。

お菓子があったらわけてあげたかった。

発注されているクエストの量が多いんだろうな。

こっちもこっちで忙しいというわけか、大変だな。


「クエストを受注してくれる冒険者さんが最近少なくなっているモブ。探索者(サポーター)さんも、そんなに多くないので大変モブ」


あぁ、過疎ってるわけか…。

まぁ、ちょっとわからんでもない。


「そうモブ!冒険者なら、お兄さんが自分で受注して討伐に行っても大丈夫なんじゃないモブか?」


これぞ名案とばかりに彼女は胸を張る。

胸よりも腹のほうが出っ張ってる気がするんだけど…。


「ん~、そうしたいのは山々なんですけど、店に戻らないとナイフ山にされかねないんですよね…」


全くもって遺憾である。


「それって多分、カリギュラ効果っていうやつだと思うモブ!押すな押すな!押せ!モブっ!」


多分それ、そのまま押し殺されます!

いや、チートスキルの恩恵で死なないんだけどね。


「大丈夫大丈夫!クエストさえ達成されれば、多分怒られないモブッ!ちゃちゃっとやって、ササっと帰ってくれば、報酬金もお兄さんの懐行きモブッ!」


親指を突き立てて、ニヤリと語る。

さっすがモブさん頭良い!!


「今ならモブ、の片手剣をレンタルさせてあげますモブッ!」


さっすがモブさん太っ腹っ!!


「そうと決まれば早速!」


「あぁ、待ってくださいモブ。規則ですので一筆書いて欲しいモブ」


クエスト前に書類を数枚書かされた。

どう転んでもリアルだった。

 

その代わり、はれてオレ、トールは!

【アルバイト見習い】から【冒険者】に成ったのだった!


以前のアルバイト見習いという文字から、ただの冒険者という文字になったとはいえ、今なら、その文字も金色のフォントで刻まれているように見えるぜ!

そして、心なしか揺らめいている。

目から汗が出てきてよく見えない。

ようやく、楽しいゲームの時間がやってきたというわけだ。

 



街を出て辺りを見回す。

とはいえ…


「うわぁ…」


これは凄いな…。思わず声が出た。

なんでこんな綺麗な、素晴らしい世界が過疎ってしまっているんだ。と疑ってしまいたくなる。

語彙力はないので言い表せないけど、とにかく凄い景色だ。


街のエリアから外へ出ると、広大な山、広大な草原、広大な空が視界を覆った。

とはいえ、ゆっくり楽しんではいられない。

手早くクエストをクリアして戻らないと、ルル様のナイフ地獄が待っている。

 

「ふむ…」


右手を掲げてクエストの詳細を確認する。

申請書に書かれていた情報とは別で、モブさんから貰ったクエストの情報も、少しだけど書かれていた。なんて優しいんだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『ドキッ!配達員の救助及び、物資の回収』



ゴブリン 0/5

 

物資 0/1


配達員 0/2



※ゴブリンは、連携攻撃を仕掛けてくるので注意モブ。

範囲系のスキルや、魔法があれば、集めて一掃するのもいいモブけど、初心者は、一匹ずつ確実に倒した方が安心モブ!

それと、配達員さんの安否は問わないらしいモブ!


時折、他所のPT(パーティー)が、魔法を放ったりして横槍を入れてくる場合もあるので注意モブ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



クエスト情報には、そう書かれていた。

……夏のプールかよ。どんなクエスト名だよ。

まぁ、オレは《無敵》スキルのおかげで、ダメージ概念が無いらしいので、死ぬことはないんだろうけど…。

とはいえ、問題はこのキャラの火力。つまり、攻撃力だ。

今のところ、スキルは《無敵》オンリーなので、筋力と敏捷のみが頼りになってしまうだろうな。

とにもかくにも探索だ!

サクサクっと探していこう!

 

途中、川で釣りをしている人や、バードウォッチング、畑仕事をしている人にゴブリンの居所を聞いたりもしてみた。


というか街の外なのに大丈夫なんですか?


「ノンアクティブのモンスターが殆どだけど。たまに、釣りをしてたりするの見かけるかなぁ」


ノンアクティブというのは、プレイヤーを見つけても襲い掛かってこないモンスターの事だ。

ハチとかと一緒で、こちらから危害を加えない限りは攻撃を仕掛けてこない。実に平和である。

でもフィッシングのおじさんよ、貴方は多分気をつけた方がいいと思います。


助言をし、足早にゴブリン探しに戻ると、おじさんが何かに襲われている悲鳴が聞こえた気がした。

だが、女の子にしか興味がないから、助けなかった。ああ、忙しいし…。

 

探索を始めて一時間が経とうとしている。

店を出て、ギルドに申請していた時間を足したら1時間半を超えただろうか。

ルル様の、怒りのボイスチャットが飛んでこない事を祈りながら俺は森へと足を進めた。


森は一見、迷いそうだけど、草原や川も探したのだが…アイツら出てこないんだもの。


するとどうだろう。

芯の細そうな男性が二人、石段にSM縛りをされた状態で積み上げられていた。

そして、その石段の周辺には、5匹の緑色の生き物。

つまり、ゴブリンが群がっていた。

ゴブリンは一生懸命、石段に、配達員と思われる男性二人の足元に、木で出来た人形とか変な魚とかを色々と供えている。

そして、崇め奉っている…のだろうか?

変な唄とか、変な踊りまでしている。何この状況…。

 

「あ、そこの人!そう、お兄さん!貴方、冒険者でしょ!助けてください!!」

「え~……。嫌だ」


細長い配達員さんと目が合い、誰がSM縛りをされている人を助けたいって思うんだ!

忙しいし、なにより面倒くさそうなんだもん。

だが時既に遅し、ゴブリン達は「何だお前は!」と言わんばかりに、汚い叫び声を上げてオレの方に向かってきた。

別にいいんだけど…5匹とも一斉にです。

この辺に居るのは、ノンアクティブが殆どで、平和的だと思っていたのだが…このゴブリン達はどうも例外だったらしい。


オレは、モブさんから借りた片手剣(名づけてモブレード)を、ぎゅっと握り締め、仁王立ちでゴブリンに立ち向かう。

 

ゴブリンズの武器は、見たところ5匹とも短剣のようだ。

1匹は横から回転するように、2匹は空中から殴りつけるようにしてオレの身体を狙う。


「ていっ!」


剣を横になぎ払ったり、防御したりして攻撃を防ぐ。

ダメージが無いとはいえ、やはりこういう事はやっておかないとだ。

空中に打ち上げた対象を追い討ちするように斬りつける!


「グギャ!!」


また汚い声を上げてゴブリンは四散する。


「まず一匹ィ!さぁ、どんどん掛かってきやがれ!!」


うぉ、今すっごい主人公っぽい!

ここからオレのマイドリームが始まるんだ!!

 

トゥルルルル…♪

 

と、ボイスチャットの通知が届く。

 

その通知音はさながら、未来のオレの断末魔のようにも聴こえた。いや、もう叫んでるよ。

終わるよ…。始まってもいないマイドリームが。タワワハーレムが。


「………はい、トールです」


『どうしたのかしらゴミ虫。ギルドで干からびてしまったの?仕事はまだ終わっていないのですよ?

このままではナイフの研ぎ過ぎで、腱鞘炎になってしまいそうです』


「………それは、危険ですね」


オレがな。


『そうでしょ?はやく帰ってきてくださいね。待っていますよ』


と悪魔というか死神のささやき声が耳元から消えた。


そして、ダメージ概念の無いはずの、このPCボディは、何故だか《氷結》のデバフでも掛かったかのように動けなくなった。

そのまま、ぼったちするオレに向けて、ゴブリンズは、どこ吹く風といわんばかりに短剣で切りつけてくる。

 

ここまでが、このゲーム始めた轍で、物語は最初へと繋がる。

 

ガキョッ!っと音を立て、右のゴブリンの短剣で肩をなぎ払われる。

 

システム:〈《無敵》により、ダメージを遮断しました〉

 

まぁ、オレは例のチートスキルによりダメージを無視している。


ズシャ!っと音を立て、頭上のゴブリンに短剣で頭部を殴られる。 


システム:〈《無敵》により、ダメージを遮断しました〉

 

というところで、背後からガササッという音が聞こえた気がした。


そして…


「てやぁああああああ!」


氷漬けになって、意気消沈しているオレの頭上から2撃3撃、流れ星のような光の筋が駆けて抜けた。

遅れてやってきた衝撃波で、フワリと空中遊泳をしていたゴブリン達がスローモーションで吹き飛ぶ。

それを見たオレは、驚いて尻餅をついてしまった。


「まったく…。何なのアナタ?チマチマチマチマと!」


そう言って、その少女は、まるで発光しているかのような金髪を片手でグシャグシャと掻き乱しながらこちらに歩いてくる。

そしてオレは、その綺麗な緑色の瞳に魅了され、圧倒され、言い放っていた。

 

「ハーレムしませんか?」




こんばんわだかおはようだか、楓希な火薬です。

ハレゲーを読んでいただきありがとうございます。


ようやくネトゲの醍醐味のひとつ、戦闘までたどり着くことが出来ましたね。

ゴミ虫と呼ばれたり床掃除をするトール君が遂にネトゲの醍醐味に・・・!

ネトゲの醍醐味といえば、私個人としましては、オブジェクトの上に乗る事です。大きければ大きいほどよいですね。岩とか自動販売機とか車の上とかNPCの上とか!

すみません、このうえなく話がそれてしまいましたが、とにもかくにも無事に3話が投稿できました。

ちゃんと始めてのおつかいを攻略できるか、次話をお楽しみに・・・!!


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