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12話 ~芸術は爆発?否、物語の発端こそ爆発。~








バイトが臨時休業となっている間、俺はチャンスとばかりにクエストや討伐に・・・

なんて事はしなかった。

鬼の居ぬ間に何ちゃらとはよく言うけれど、しかし俺には出来なかった。

このチャンスをうまく使ってガシガシとレベルを上げまくって、そしてモンスターもバンバン討伐しまくって沢山金も稼いで、

ブンゴウドラゴンの情報もしっかりと蓄えればいいものを、どういうわけか俺には出来なかった。

いやいや、これは断じてルル様が意識を取り戻したときに想像絶するような酷いお仕置きにビビッてしまったからとか、そういうわけではない。

そう、これは俺がただ仕事に関してとってもとっても真面目であるからである。つまり、そういうことなのだ。

お金を貰っているというのに、そんな勝手な行動をするわけにはいかないだろう?

だってこれはお仕事なんだもの!


では、俺ことトールは今、いったい何をしているのかと言うとだ。

最近、バイト先に入った新人の子を連れて、食材の調達をしに山に入っている。というそういうわけだ。

「トールさん、この木の実は食べれるんですか?」

「うん。それはシロブタヤマイチゴといって、煮物にして食べるやつだ。ただ暴れたり叫んだりするっていう特徴があるから、しっかりとしまっておけよ。」

後輩ちゃんであるユズホちゃんは俺の説明に対し元気よく返事をすると、シロブタヤマイチゴを持っていた麻袋にしまう。

シロブタヤマイチゴは捕まってたまるかと言わんばかりに彼女の掴む麻袋の中でジタバタと暴れたりキィーキィーと甲高い声で叫んだりしていた。

というか、このゲームに出てくる食材とかって叫んだり暴れたりするやつ多くね?

叫ぶ程、栄養があって美味しい。みたいな風潮が流行っているんだろうか?

いや、俺もその辺に関しては流石にそろそろ慣れつつあるんだけどさ。


「って、待ちなさいよ!ブンゴウドラゴンの件はどうなったのよ!」

「え、いや、だからそれはそれとして、同時進行で探してるつもりなんですけど?」

ひょっとしてメアちゃんは俺がただサボッてるようにでも見えているんだろうか?

「見えてるから言ってるんでしょうが。」

「心外だな。これでも冒険者だぞ?」

店に戻ってくるなり、メア達にシロブタヤマイチゴでシチューを作って差し上げながら、俺は真正面から文句を受ける。



<ヤマイチゴのクリームシチュー>に付属効果が発生。

回復速度・魔力回復速度上昇。

並びに、アイテムドロップ率+150パーセント付与。ヘイト値上昇率100パーセント付与。


「冒険者っていうより、料理人としてのスキルの方が確立されていってる気がするんだが?大丈夫なのかトール?」

「・・・・いつか、ちゃんと冒険者としてのスキルも備わってくるさ!」

メグだって、冒険者ってより寧ろミュージシャン染みてるじゃねぇか!

なんて事は思っても言わない。

「コラ、ネコ。手で食べないの!ちゃんとスプーンで食べなさい!」

メアちゃんはメアちゃんでやっぱりお母さんみたいだ。






アルバイターとしてユズホちゃんや沢山の新人が入ってくれたお陰で、俺はある程度、自由にしてもらった。

人員削減とかそういうわけではないんだけど、新人の子達にもしっかり仕事の環境に馴染んで貰って、しっかり仕事をしてもらいたいと、そういうわけらしい。


「とりあえず、色々なところに行ってみよう。レベル上げがてらな。」

兎に角、各地を旅に出ているという噂のブンゴウドラゴンを探し出すには、こちらも各地を練り歩くしかない。

最初の街と王都しかまだ行った事のない俺としては、今こそようやく本当の意味で大冒険の始まりってもんだ。

ほら、耳を澄ませば大冒険が始まりそうなBGMの冒頭が聴こえてるじゃないか。

そして、脳を伝って響く甲高い爆発音!


「あ!危ないです!!」

俺はその叫び声の前に顔面を爆撃されていた。

もっというと、ララちゃんから放たれた爆撃は俺の頭部と一緒に遠くに見える山岳さえも吹き飛ばしていた。なんて迷惑の事を!

「どうしたんだい?ララちゃん?」

「あ、トールさん。あぁ、よかった。」

いったいどう良かったのか、疑問で疑問で仕方が無いことこの上ない。

ララちゃんのランチャーによる爆撃は俺の<無敵>スキルの前に無効化された。

「実は、お姉ちゃんから私も社会見学ということでトールさん達に付いて行く様に言われていたんです。」

だから、私も一緒に連れて行ってもらえませんか?っとそうタワワを揺らしながら彼女は俺に頼んできた。

よく見ると、いつもの普通のメイド服とは違い、メイド服の上に更に軽装の鎧を装備していた。

ちょっとエロい感じの鎧だ。けしからん。

「そ、そういう事なら仕方が無いな!ララちゃん。俺達の冒険はちょっと過酷だぞ!気をつけて付いてくるのだぞ!!?いや、まぁ、勿論俺がちゃんと護ってあげるけどね!!」

「トールなんかちょっと変。」

「どうせ下心丸出しなんでしょ。」

「まぁ、トールがやる気出してるんだったらいいじゃねぇか。」

女性陣からは批難の嵐だった。

ララちゃんはなんだかよくわかっていないという顔をしていた。

いや、気にしなくていいんだよ?


そんなこんなで、旅の仲間にドSメイド、ルル様の妹。ドジっ娘メイドのララちゃんが我がPTに加わったのだった。





「なぁ、ララちゃんも探索者(サポーター)ってんなら、やっぱり俺達みたくチートみたいなスキルがやっぱりあるんかなぁ。」

最初から見てる限り、信じられない怪力を備えてるところを見ると、やっぱり何かしらないと納得できない。

俺がそうララちゃんに問いかけてみてもキョトンとした顔をしている。

まぁ、ここはいつも通り・・・。


「ステータス、オープン!」

ララちゃんの頭の上に右手を翳して、俺はそう唱えた。







ララ ドジっ娘メイド





Lv.85


HP 19800


MP 5500


状態 普通


筋力 8800


敏捷 5400


知力 3200


魔力 3000







「自然回復Ⅲ」


「チャージⅣ」


「我慢Ⅷ」


「即席調理Ⅱ」


「狙撃」


エトセトラエトセトラ・・・



ララちゃんもララちゃんですっごく強いという事はわかった。

スキルも反則のように強い。

社会勉強なんて必要ないのでは?と思ってしまう。天然ではあるんだけどさ。

で、いつも通りスキル欄を下の方にスクロールしていく。

すると、やっぱりあった。ありましたよ。金色に輝く例のスキルが。


【無限装備】と刻まれたスキルはギラギラと発光しており、その説明文には

「全ての所有物を無制限に持ち歩く事ができ、装備する事が可能。」

・・・・タナカさんよぉ・・・いくらなんでも女の子にそんなスキルを与えるのは可哀想じゃないか?

これでは、ムキムキ女子なんて言われて皆からバカにされてイジメにあっちゃうじゃないか。

そして、イジメをした奴は漏れなくルル様にギタギタにされちゃうんだろうなぁ。

酒瓶の箱を軽々と持ち運んだり、投げ飛ばしたりしてたのは、このスキルが原因だろうな。





そんな厄介なドジっ娘メイドを引き連れ、俺、トール達一行が新たな旅路へと赴き始めたその日、

俺達はまだ迫り来る更なる厄介ごとが近づいてきているという事に、気付いてはいなかった。


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